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2018/10/17

KRPPRESS特集:西陣の新しい風④ 「西陣織の技術で炭素繊維を織る。様々な分野で次世代に役立つ製品を実用化」(有)フクオカ機業

炭素繊維をジャカード織機で織り上げる。機能性と品格を兼ね備えた新しい紋織物が広げる、西陣織の可能性について話を聞いた。

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(有)フクオカ機業 代表取締役 福岡 裕典氏

炭素繊維で織りなす西陣織高い意匠性はフクオカ機業ならでは

軽くて強く、耐久性があり、導電性や寸法安定性、生体親和性が高いなど優れた機能を持つ炭素繊維は、複合材料としてさまざまな分野で活用されています。この炭素繊維と西陣織の技術を組み合わせて新しいテキスタイルをつくり、提案しているのが、弊社です。

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伝統的な西陣織の職人技が若い世代に継承されている


 代表取締役に就任した1998年頃は和装需要の低下が著しく、帯の製造とは別にもう一本、柱となる事業が必要でした。弊社だけの問題ではなく、550年続く西陣というブランドを残していくために、新しい取り組みが必要だと考えたのです。そうして模索するなかで大きな可能性を感じたのが、炭素繊維。西陣織の技術で炭素繊維を織るのです。炭素繊維は非常に丈夫で、どんなに引っ張っても切れません。しかしその一方で、折れや擦れに弱い。経糸と緯糸が交差する織物では、織る際に繊維同士が擦れて毛羽立ってしまい、なかなか製品にならないのです。西陣でも多くのメーカーが炭素繊維の導入を試みながらことごとく失敗したのは、それが原因でした。弊社ではこの毛羽立ちを抑えるため、10年かけて織機を改良。摩擦に弱い炭素繊維の織物を、安定して生産できるようになりました。
 従来つくられていた炭素繊維の織物は、経糸と緯糸が単純に交差した平織と綾織しかありませんでした。そんななか、弊社がつくるのは、西陣織の本分である、美しく繊細な文様を織り出したジャカード柄のテキスタイル。今までにない素材で新しいものをつくろうと試行錯誤を重ねた末、事業化できるようになるまでに15年かかりました。しかし15年かけて完成させた技術は、他社にはけっして真似のできない、フクオカ機業だけの独自技術。炭素繊維を使って意匠性の高い織物を織ることができるのは、世界でも弊社だけです。

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12台ある織機のうち4台で炭素繊維の織物が織られる。105㎝幅の織機はネクタイを織っていたものを改良した。

西陣織の技術をいかして世界でさらなるチャレンジを

 国内や欧米の自動車メーカーと、自動車の内装材のためのテキスタイル開発が進んでいます。炭素繊維に異素材繊維を織り込むのですが、組み合わせる素材や、見る角度によって、色合いが変わる。そんな魔法のようなテキスタイルが、デザイナーのイマジネーションを刺激するのでしょう。また、コンピュータ制御された織りプロセスにより、お客様が求める意匠デザインを織物として忠実に再現。さらに、本来炭素繊維は黒一色ですが、好きな色に着色できるガラス繊維や金銀糸を緯糸に使用することで、色彩豊かなテキスタイルを織り上げることも可能になりました。
昨年、伝統的な花の文様を織り出したテキスタイルを樹脂で固めて椅子に仕立て、ミラノサローネ国際家具見本市に出展。実験的なチャレンジでしたが、海外メーカーからの高評価という結果に結びつきました。今までにない素材による、新しいものづくりですが、その裏側には西陣の伝統、職人の技術という、独自の優れた文化があります。「西陣」は世界に通用するブランドなのです。

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ジャカード織機が織りなすデザイン性の高さが魅力


 弊社は、1902年に当地で創業してから116年になりますが、じつは帯メーカーとしては後発組です。海外向けの洋服生地の製造からスタートし、第二次大戦中にはパラシュートの生地もつくっていました。ネクタイやマフラーを製造するなど、もともと、いろいろな素材を扱うのは得意という下地があったのです。そして、それはどれも、西陣の技術に支えられたもの。西陣織は、何よりも「技術」です。技術をいかして、その時代に合ったものをつくっていくべきで、和装にこだわらなくてもいいのではないか。そんなふうにも思います。

【KRPPRESS特集:「西陣の新しい風」をもっと読む】

西陣の新しい風 序文 「伝統はイノベーションの連続から生まれる」
西陣の新しい風② 「世界に誇れる西陣の伝統の技を、さまざまなカタチで未来へ」
西陣の新しい風③ 「西陣から世界唯一のウェアラブルIoT トータルソリューション企業へ」ミツフジ(株)
西陣の新しい風⑤ 「伝統産業をクリエイティブ産業へ、世界に向けた革新的なテキスタイルを開発」(株)細尾
西陣の新しい風⑥ 「西陣織金襴を現代の生活にフィットしたカタチとして活用したい」(株)もりさん
西陣の新しい風⑦ 「京都職人工房」