2018/10/31

KRPPRESS特集:西陣の新しい風⑥ 「西陣織金襴を現代の生活にフィットしたカタチとして活用したい。」(株)もりさん

 織元としての技術の継承、ポリエステル糸で織るという独自技術、さらに京都職人工房での研鑽・・・。(株)もりさんの変革の歩みとは。

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(株)もりさん 商品企画 Chief Planner 山田 由英氏

金襴の可能性を広げるために必要なのは「活かす」という視点

 弊社は大正10年(1921)の創業以来、一貫して西陣織金襴の製造・卸を行う織元です。金襴はもともと、袈裟や仏具など仏教用やひな人形の衣装などに使用される生地。文様が浮き出るように織られたその風合い、多彩な文様と色使いが特徴で、芸術性の高い織物でもあります。弊社では、この金襴を、経糸緯糸ともに100%ポリエステルで織り上げる技術を開発。西陣織のブランドとしては、100%ポリエステルの金襴は他社にはない技術です。

 軽く、丈夫で、色落ちしないポリエステルの金襴生地。その優れた特性をいかさない手はありません。そう考え、キャラクター商品のOEM製造など、金襴生地を使った二次商品の展開を始めました。しかし、弊社はずっとメーカーとして、織物を織って納めるというスタイルでやってきたので、そこから先のやり方が分からない。金襴という可能性を秘めた素材を織るだけで、活用するという視点を持っていなかったのです。もちろん販路も持っていませんでした。

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西陣織金襴生地の製織から京人形の制作まで一貫して手掛けている

京都職人工房での学びを通して会社も私も成長

 中途採用で入社して4年になりますが、2年目頃、壁に突き当たったように感じました。社内で商品企画に当たるのが私だけ、という環境もあったかもしれません。いわば孤軍奮闘、金襴やひな人形以外のことで相談できる先輩がいないなかで、これまでやったことがないとことをする、という状況でした。そんなときに出会ったのが「京都職人工房」。ここで1年間、いろいろなことを学ばせていただきました。写真の撮り方やライティングの方法、パッケージングの大切さなど、知らないことばかりということを痛感しましたが、それはそのまま、私自身ともりさんの成長につながったと思います。

 もりさんには、創業以来手掛けてきた5000種類以上の文様があります。しかし新たな商品を作る上でユーザーがほしいと思う柄が、そこにはなかった。お客様のニーズに合わせた柄をデザインする必要性。それまでは既存の柄を利用したり、私がデザインしたりしていたものをデザイナーに外注するというのも、職人工房で学んだことです。"とりあえず"今ある柄で、"とりあえず"作れるものを作る。そんな"とりあえず"を一切やめました。その結果、売り上げが安定し、社内での理解も進んできていると実感しています。

 金襴の特性をよく知り、活用する上で必要なこと、するべきことを相談できる先輩方が京都職人工房にはいらっしゃいます。1年間のプログラムを終えた後もまだこの環境で学びたいと思い、今年も職人工房に参加しています。

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古典柄を現代風にアレンジしたテキスタイル

出機さんの工賃アップを見据えて生地の量産化につながる企画を

 従来展開していた和小物などのライフスタイル雑貨に加え、新たにアパレルへの進出も考えています。新作テキスタイルを精力的に発表するほか、京都職人工房でのプレゼンテーションがきっかけとなって、大阪のアパレルメーカーとの商品づくりも進行中です。また京都リサーチパーク(株)からお声掛けいただき、イスラム教徒の礼拝用マットを西陣織金襴で作っています。

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イスラム教徒の礼拝時に使用するタペストリーの制作に挑戦

 他の織物のように裏側に糸が渡らない金襴は、加工に向いた生地です。しかし、小物や雑貨ばかりでは生地を使う量が少なく、その値段は安いまま。アパレルならシーズンごとに生地が必要になり、生地の量産化につながります。分業制システムで成り立つ西陣織ですから、各業者さんとの共存共栄は織元としての責務と考え、より積極的に西陣織金襴を活用し、職人さんの工賃アップにもつながるような企画を考えていきたいですね。

 長年、金襴を織り続けてきたもりさん。ずっと同じことをしてきて、新たな一歩を踏み出すのはなかなか難しいものですが、取り組んでみると意外とできたりします。同じ織機を使って、異なるものが作れたりする。金襴という生地と技術を大切にしながら、ずっと繰り返してきた技術の蓄積をいかして、新しい分野にも歩を進める。そうして「もりさん」という社名を周知するためのブランディングが、次の課題です。

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京都職人工房のサイトはこちら

【KRPPRESS特集:「西陣の新しい風」をもっと読む】

西陣の新しい風 序文 「伝統はイノベーションの連続から生まれる」
西陣の新しい風② 「世界に誇れる西陣の伝統の技を、さまざまなカタチで未来へ」
西陣の新しい風③ 「西陣から世界唯一のウェアラブルIoT トータルソリューション企業へ」ミツフジ(株)
西陣の新しい風④ 「西陣織の技術で炭素繊維を織る。様々な分野で次世代に役立つ製品を実用化」(有)フクオカ機業
西陣の新しい風⑤ 「伝統産業をクリエイティブ産業へ、世界に向けた革新的なテキスタイルを開発」(株)細尾
西陣の新しい風⑦ 「京都職人工房」