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2018/10/10

KRPPRESS特集:西陣の新しい風③ 「西陣から世界唯一のウェアラブルIoT トータルソリューション企業へ」ミツフジ(株)

 今年春、経済誌Forbes JAPANによる「スモール・ジャイアンツ・アワード」において大賞を受賞した、ミツフジ(株)。世界が注目するウェアラブルIoT企業に通底する西陣のDNAとは。

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ミツフジ(株) 代表取締役社長 三寺 歩氏

そのルーツは西陣織 繊維を基軸にさまざまな変化を重ねて

 非常に高い導電性能を持つ銀メッキ繊維AGposs®。弊社の核となる製品です。この銀メッキ繊維を織り込んだウェアラブル端末を開発し、医療や介護、スポーツなど世界のさまざまな分野で高評価をいただいています。スモール・ジャイアンツ大賞も、AGposs®を使用したスマートウェア、取得したデータを無線送信するトランスミッター、データを解析するアプリ・クラウドまでをすべて自社で開発するワンストップソリューションとして開発したhamon®が、高く評価されたものです。

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銀メッキ導電性繊維「AGposs®」

 ミツフジの前身は、1956年に祖父が創業した西陣織の帯製造工場です。その後、西陣機業からラッセルレースやテープなどの製造へ転換しますが、ご存知のとおり繊維産業は斜陽化の道をたどります。父が始めた銀メッキ繊維事業で息を吹き返したかに見えたのですが、競合製品の登場などにより事業規模を年々縮小するしかありませんでした。もともと家業を継ぐつもりはなかったのですが、自分を育て大学まで行かせてくれた工場をこのまま廃業させることはできないと悩んだ末、2014年に実家に戻ったのです。
 まず、赤字の取引を全て停止し、銀メッキ繊維に絞りました。銀メッキ繊維の取引先に含まれていた世界的企業の研究所を訪ねた際、「こんなに導電性のいい糸はない」と絶賛されたからです。彼らからウェアラブル端末の研究に銀メッキ繊維が役立つことを教わり、その開発に賭けることにしたのです。
 ただ、銀メッキ繊維がいくらよい素材でも、素材だけ、用途開発だけでは、未来は広がらない。そこで最終製品を作ることをめざしました。当時、IoTやウェアラブルというキーワードがもてはやされてはいましたが、なかなかニーズにマッチした製品がなく、マーケットが広がらない状況でした。その理由として、デバイス、アプリ、クラウドなど、それぞれの開発や製造が各社に分散されているからと考えました。そこで、繊維からウェアラブル端末という最終製品、さらにクラウドまで「完全自社開発」をすることを決意。そうすることで、各パーツの開発に小回りが利き、スピード感ある製品開発が可能です。ウェアラブルをすべて自社開発しているのは、世界で唯一であり、弊社の強みでもあります。

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トランスミッター

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アプリ&クラウド

可能性を拓き、さらに新しい道へ生きるための変化が大きな変革のうねりに

 現在は、銀メッキ導電繊維AGposs®を使ったウェアで、生体データを取得することで、着用者の体調を管理するソリューションをご提案しています。主に、建築現場や工場、造船所など、過酷な現場で働く方々の体調見守りや、介護施設のお年寄りの見守りなどにご利用いただいています。それに加え、現在は、アスリートのコンディショニング管理に利用できるウェアの開発も進めています。運動時だけでなく、普段の睡眠時データとパフォーマンスの関係性や、食事と生体データの関係性など、様々なことが解明できれば、効率的なトレーニングに直結すると考えています。また、ともすれば危険と隣り合わせのトレーニングを少しでも安全にできるのではと思います。最近では、子どもたちの運動時の体調見守りとして利用したいというお問い合わせも頂いていますので、市場ニーズはかなり広いのではないでしょうか。

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hamon®ウェア

伝統産業から未来を切り開くために必要なこと

 今の時代、業種間の垣根というのは限りなくなくなっていると思います。また、企業間の技術共有も進んでいるのではないでしょうか。伝統技術は守るべき文化として大切ですが、それを発展させるためには、様々な垣根を取り払い、目的のために何が必要なのかを考えることが大事だと思います。私自身、繊維業からIoTという一見畑違いの分野に乗り出す際、先のことは全く分からなかったのが正直なところです。ただ、自分自身を顧みると、これまでの経歴がパーツのように組み合わさって、道が繋がっていると感じました。そのパーツが分かれば、もし自身が持っていなくても、他から持ってくればいい。私たちも道の途中ですが、そうやって一歩一歩進んでいくうちに未来は切り開かれていくような気がしています。

【KRPPRESS特集:「西陣の新しい風」をもっと読む】

西陣の新しい風 序文 「伝統はイノベーションの連続から生まれる」
西陣の新しい風② 「世界に誇れる西陣の伝統の技を、さまざまなカタチで未来へ」
西陣の新しい風④ 「西陣織の技術で炭素繊維を織る。様々な分野で次世代に役立つ製品を実用化」(有)フクオカ機業
西陣の新しい風⑤ 「伝統産業をクリエイティブ産業へ、世界に向けた革新的なテキスタイルを開発」(株)細尾
西陣の新しい風⑥ 「西陣織金襴を現代の生活にフィットしたカタチとして活用したい」(株)もりさん
西陣の新しい風⑦ 「京都職人工房」