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2018/07/13

KRPPRESS特集:iPS細胞が拓く未来④ 「輸血医療 第2のイノベーション」 対談:(株)メガカリオン×KRP(株)

血液型の発見から100年以上の時を経て始まろうとしている輸血医療の「第2のイノベーション」
iPS細胞を利用する事業の意義と課題、そして展望は──

対談:(株)メガカリオン 代表取締役社長 三輪玄二郎氏、京都リサーチパーク(株) 代表取締役社長 小川信也

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アメリカでの経験がメガカリオン立ち上げの動機に

小川 
メガカリオンさんは、iPS細胞由来の安全な血小板製剤を作製する技術を確立し、医療現場が100年以上待ち望んだ献血に頼らない血小板の安定供給の実現を目指す技術ベンチャーですが、三輪社長が医療のベンチャーに関わられたきっかけはなんだったのでしょう。

三輪 
ハーバード大学のビジネススクールに留学していたのですが、そのときの恩師に誘われて、人の皮膚を培養して火傷の治療に使う技術を実用化しようというプロジェクトに、創業メンバーとして入ったのが最初です。もともと医療分野の人間ではありませんし、それは本当に偶然でした。

小川 
そこではどのようなことをされていたのですか。

三輪 
ベンチャー立ち上げのサポートですね。ハーバードのメディカルスクールで発明された技術を事業化するために、ビジネスプランや資金調達はどうするのか。私も手伝ったその部分はビジネススクールのメンバーが、契約関係、特許関係はロースクールが担いました。そして再生医療に絡んでくる倫理問題は神学部の教授が担当するという、まさしくオールアカデミアで大学発のシーズを事業化していくという道筋を経験しました。これを日本でもやってみたいと思ったのが、メガカリオンを立ち上げた非常に大きな動機の1つです。

0619_3krppress_154_P0506 2.bmpクリーンルーム内で不死化巨核球細胞を樹立している様子

インパクトとポテンシャルその大きさに価値と意義を見出す

小川 
iPS細胞由来の血小板作製は、東京大学の中内啓光教授と京都大学の江藤浩之教授の研究成果により開発された技術ですね。

三輪 
私と中内先生が麻布高校の同級生で、同窓会で再会した折に、非常にユニークな再生医療のシーズがあって事業化したいけれど、自分たち研究者では皆目見当がつかない。君も一肌脱ぎなさいと、彼に説得されました。

小川 
そのお話を聞かれたとき、これはイケそうだとか、むずかしいんじゃないかとか、これまでのご経験から感じられたことがあったのではないかと思います。参加を決断された、その判断基準というのはどういったところにあったのですか。

三輪 
もちろん私は科学者ではないので、技術のところは分かりません。しかし、これが実現すれば100年間変わらなかった輸血のシステムを変えられる、というインパクト、そしてポテンシャルの大きさは感じました。これは、やってみる価値があると。

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iPS細胞由来の血小板製剤

iPS細胞関連のいわば総本山京都に立地する意味

小川 
メガカリオンを創業されて、ご苦労もあったのではないかと思います。

三輪 
事業化にはヒト・モノ・カネの3つの要素が必要です。モノ、つまり技術は山中先生や中内先生というトップサイエンティストの方々がされていて、保証できる。資金については、投資家を説得するという苦労はすでにアメリカで経験済み。私にとっていちばん苦労したのは「ヒト」です。人を集めて組織を作る、回すというところの難しさを感じました。

小川 
今約30名いらっしゃるスタッフは、では、どのように集められたのでしょう。

三輪 
スポーツのチームでも同じですが、すごいプレーヤーがいるチームには、彼と一緒にプレーしたい、優れた技術を学びたいと、よい選手が集まってくる。トップサイエンティストがいらっしゃるところには、優秀な人材が集まってくるものです。私たちが京都に立地している理由もそこにあって、山中先生がいらっしゃる京都というところは、iPS細胞を使った事業、臨床応用の総本山というべきものなんですね。だからこそ、人が集積する。

小川 
京都という旗印の下に、優れた人材が集まってくるわけですね。

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巨核球細胞の大量培養を行っている様子

コンソーシアムスタイルを日本型モデルに

三輪 
iPS細胞から作る血小板、輸血用の血小板というものは、利用される範囲というのが非常に大きい。医療のインフラですから。特定の病気を治すのではなく、きちんと供給されないと医療の世界が回らない。しかも全世界で使われるもの。初めから、これはベンチャーだけではできない、他にパートナーが必要であると考えておりました。

小川 
それが、日本発のiPS細胞を用いた革新的な再生医療技術を、日本企業とのコンソーシアムで事業化するというオールジャパンのコンソーシアムにつながっているんですね。

三輪
サイエンスを実用化する際に、大量に、安定的に、さらにコストも抑えながら作らなければならない。サイエンスとビジネスをつなぐトランスレーションの部分というのはそんなに簡単な話ではなく、実用化する上での最大のハードルだと思っております。コンソーシアムという形で進めているのは、まさにそこの橋を架けるため。それが目的です。ベンチャーだけではそのノウハウがありませんので。

小川 
なるほど。メガカリオンさんから事業内容やビジョンをお見せして、それに対して技術を持った企業からこんなアイデアやノウハウがあります、と。まさしくオープンイノベーションそのものですね。

三輪 
もし、このメガカリオンのモデルがというのはスタートアップには非常に役に立つでしょうね。

小川 
今行っていることをますますレベルアップしていかないといけませんね。本日はどうもありがとうございました。

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PROFILE

三輪 玄二郎 氏

東京大学経済学部卒業後、三菱油化(現 三菱ケミカル)に勤務。
ハーバード・ビジネス・スクールMBA 修了後、Bain & Companyに勤務、BioSurface Technology(現 Sanofiの一部門)共同創業者、iCELL共同創業者代表取締役(現任)を経て、メガカリオンを創業し代表取締役社長に就任。
Forbes Japanの「日本の起業家ランキング2018」で1 位に選出。

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