CLOSE
SITE MAP
イノベーションが
生まれる「まち」。
NEWS ROOM

ニュースルーム

2019/05/14

KRPPRESS特集:加速するがん治療⑥ 「皮膚科学に特化した製薬企業としてがん治療にともなう皮膚障害にチャレンジ」マルホ(株)

比較的生命への影響が小さい皮膚疾病だからこそ、安全性には特にこだわる。
困っている患者さんのためにできることを、最優先で考える。
がんにともなう症状やがん治療による副作用に苦しむ患者さんへの支援、医療者のネットワークづくり、また新薬の研究開発への期待など、皮膚科学領域におけるさらなる貢献を目指すマルホ(株)の想いをお話しいただいた。

maru01 s.jpgのサムネイル画像
マルホ株式会社 取締役 専務執行役員 研究開発(兼 研究担当)/サイエンス統括 鬼頭 康彦氏

がん治療に付随するアンメット・メディカル・ニーズへの貢献

 当社が皮膚科学領域に特化して経営資源を集中させたのは、2002年のことです。次第に皮膚疾患や関連製品に対する情報が集まりはじめ、最近では他の疾患や治療に伴う皮膚障害についても多くの情報が寄せられるようになりました。その中で近年多いのが、抗がん剤によるRash(ラッシュ)と呼ばれる副作用です。

 従来の抗がん剤では下痢や嘔吐、脱毛の副作用などが問題でしたが、新しいタイプの抗がん剤では、顔にニキビのような湿疹や皮膚乾燥、かゆみが生じたり、爪にも炎症が現れたりする場合があります。外見の問題もあって外出しづらくなる方もいます。また、手足症候群と呼ばれる副作用では、重症になると歩けなくなったり、コップを持てなくなるなど、生活の質(QOL)に大きく影響しています。治療を継続したい一方で、このような副作用で患者さんは悩み苦しむ。そんなジレンマに対して、皮膚科学領域に特化した企業として医薬品の研究開発だけでなく、情報発信にも積極的に取り組んでいます。

 2017年よりガルデルマ社から「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」に効能効果をもつ製品を承継しました。がん細胞は増殖し大きくなると、がんが皮膚表面に現れ、潰瘍を形成することがあります。とくに乳がんに多く、激しい痛みや出血、滲出液を生じます。そして最も大きな問題は特有の強い臭気を伴うことです。臭気は医療者やご家族との日常のコミュニケーション、QOLに大きく影響し、ともに過ごす大切な時間が奪われることにもつながり、患者さんにとって大変つらいものです。

 当社は、このようながん治療の支持療法に対する意識が向上するように、医療者に対してはがん性皮膚潰瘍臭の発生メカニズム、治療法、患者さんには薬剤の正しい使い方など、広く啓発活動にも努めています。

積み上げてきたノウハウを生かす創薬、啓発活動など新しい取り組み

 2018年、「がん治療による難治性口内炎の疼痛緩和薬」の共同開発を、国立がん研究センターとスタートしました。頭頚部がんでの放射線治療では、唾液腺の分泌が悪くなり、食事も摂りづらくなることがあります。全身状態の悪化にもつながる大きな問題です。既存の疼痛緩和薬では、口腔のすべての感覚神経を遮断してしまうため、痛みだけでなく味覚や食感まで抑制されてしまいます。そこで、味覚などに影響しない新しいタイプの疼痛緩和薬の、共同開発を進めています。

 新薬の研究開発以外にも能動的に取り組んでいることがあります。それは、抗がん剤による皮膚障害に関係する医療者間の橋渡し役をすることです。このような薬物治療にともなう皮膚障害に対する認識は、医師や看護師、薬剤師などの間で異なり、また必ずしも情報が共有されているわけではありません。このような問題を解消するために、がん治療にかかわる医療者の診療科や職種を超えた連携向上のためのコンセンサス会議の後援やガイドライン構築活動の支援を行っています。

maru02_2.jpgのサムネイル画像
医療者向けweb「がん性皮膚潰瘍ケアチャンネル」

 毎年のように新しい抗がん剤が上市され、治療も大きく進歩しています。現在困っている副作用が数年後にはなくなるかもしれませんし、逆に全く思いもかけない副作用が起こるかもしれません。当社は患者さんに寄り添う姿勢を忘れず、困っていることに照準を合わせて、皮膚科学領域で培ってきた経験とノウハウを生かして、新薬の研究開発、治療を支える情報発信、啓発活動をしていきたいと思っています。

【KRPPRESS特集:「加速するがん治療」をもっと読む】

加速するがん治療① スペシャルインタビュー 小野薬品工業(株)
加速するがん治療② 「がん免疫遺伝子治療の社会実装化を進める」タカラバイオ(株)
加速するがん治療③ 「抗体薬物複合体を注射し近赤外線でがん細胞を選択的に破壊する」(株)島津製作所
加速するがん治療④ 「血液がん領域における治療薬の研究開発に力を注ぐ」日本新薬(株)
加速するがん治療⑤ 「放射性薬品による「診断」と「治療」のベストマッチを目指す」テリックスファーマジャパン(株)

その他のKRPPRESS特集はこちら