2019/05/07

KRPPRESS特集:加速するがん治療⑤「放射性医薬品による「診断」と「治療」のベストマッチを目指す」テリックスファーマジャパン(株)

 豪州メルボルンに本社を置くテリックスファーマシューティカルズはバイオファーマとして放射性医薬品※1(PET※2画像診断薬・がん治療薬)の臨床開発を日米欧豪でグローバルに展開している。その日本法人であるテリックスファーマジャパン(株)が規制の厳しい日本で放射性医薬品の研究開発を行う、その意味とは。

診断と治療を同時に行うことができる今注目の効率的ながん治療

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テリックスファーマジャパン株式会社 最高経営責任者 西村 伸太郎氏

 2018年1月に設立した弊社が進めているのは、がんを標的にした薬剤にラジオアイソトープ(放射性同位元素)を付けることで、画像診断薬にも治療薬にもなる新たな薬剤、新たながん治療法の開発です。豪州本社は泌尿器・脳腫瘍領域での画像診断薬・がん治療薬の世界同時開発に取り組んでいます。 同じがん標的分子に使用目的に合わせたラジオアイソトープをそれぞれ結合させることで画像診断薬とがん治療薬を創製し、セラノスティクスと呼ばれる、「診断」と「治療」を組み合わせる次世代医療の実現を目指しています。

 その最初の取り組みとして、まず国内ではPET画像診断薬の開発を開始しました。同じがん標的分子を用いることでより正確な診断と有効性が期待できる治療法の判断に貢献でき、患者様にとっても医療経済の見地からもメリットのある形になることを願っております。セラノスティクスとは、つまり「診断」と「治療」のベストマッチ。私たちが目指すべき、がんの診断と治療における次世代のビジネスモデルなのです。

日本のがん患者のために診断と治療のベストマッチで貢献

 現在、弊社が実用化を目指しているのが、主に腎臓がんに対するPET画像診断薬(89Zr-TLX250)。これは、分子標的PET画像診断薬の核種にジルコニウム89※3を用いたもので、がん細胞に選択的に集積するため、原発巣や転移巣を検出することが期待されます。ジルコニウム89は半減期※4が3日と長いため、製造工場から日本全国、また東アジア各国へも供給することが可能です。まもなく始まる臨床試験に備えて、製造や臨床試験などで協力する提携企業とともに体制も整えました。

図1 テリックス様.png

 

 また、TLX250の臨床試験をスムーズに進めるための取り組みのひとつとして、「Zir-Net研究会」を設立。
 ジルコニウム89を用いたPET診断薬の臨床での利用および環境整備のための情報提供や、R(I ラジオアイソトープ)内用療法への応用に向けた情報交換および議論の場を提供することが目的です。2019年2月16日に開催したキックオフシンポジウムには、泌尿器科や放射線・核医学科をはじめとする医療関係者や日本ラジオアイソトープ協会、製薬企業などを招き、多くの方にご来場いただき、期待の高さが伺えるものとなりました。

 日本は唯一の原爆被爆国で、放射線に対してネガティブな印象を抱きがちですが、医療現場には、放射線は必要不可欠なもの。molecularly-targetedradiation(MTR 分子標的放射線)への高い専門性と、世界に向けて放射線分子標的薬を届ける技術という強みをもち、がん患者にとって不可欠な診断法で、がん治療の最適化に貢献する。患者様のベネフィットを追求することが、弊社の使命であると考えています。

※1 放射性医薬品:ラジオアイソトープを含有する治療薬、診断薬。
※2 PET:Positron Emission Tomography(陽電子放出断層撮影)。病巣に集積するPET画像診断薬を投与し、体内の薬剤分布を画像化する診断方法でがん診断や認知症診断等に用いられる。
※3 ジルコニウム89:半減期が78.41時間と比較的長い陽電子放出核種。
※4 半減期:放射能が減衰して半分になるまでに要する時間のこと。ジルコニウム89の場合、減衰して3日間でその量が半分になる。
※5 分子標的薬:体内の特定の分子(がん細胞など)を標的とした薬剤。

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