2019/04/23

KRPPRESS特集:加速するがん治療④ 「血液がん領域における治療薬の研究開発に力を注ぐ」日本新薬(株)

 白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫...血液がんにはいくつもの種類があり、さらに細かく分類される。それぞれの疾患に合わせた治療法が必要であり、薬剤の創出が求められている。血液がん領域に特化した薬剤開発への取り組みの苦労と意義を伺った。

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日本新薬株式会社 執行役員 研究開発本部 研開企画統括部長 森 和哉氏

ビダーザ、ガザイバが血液がんの領域で確かな実績を

 弊社が血液疾患への取り組みを始めたきっかけは、1971年に承認を取得した白血病治療薬キロサイドに遡ることができます。40年以上を経た今でも急性骨髄性白血病(AML)治療の第一の選択薬として欠かせないものとなっています。この研究開発・販売にずっと取り組んできた経緯もあり、白血病という疾患に対して高い関心を持ち続けてきました。2000年代に入り、急性前骨髄球性白血病(APL)治療に対して高い有用性のある薬剤、トリセノックスとアムノレイクを扱うことになり、これを機に、自社の研究開発においても血液がんをターゲットに注力していこうという気運が高まりました。

 その1つが2011年3月に承認を受けたビダーザ。日本で最初の、骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬です。MDSは造血細胞に異常が生じて血球が機能異常を起こし、貧血や出血、感染症が起こりやすくなる病気です。MDSが進行するとAMLへ移行する場合もあり、比較的予後の悪い疾患とされています。ビダーザの大きな特長は、パートナー企業が実施した海外第Ⅲ相試験において、主要評価である生存期間を有意に延長したことです。現在のところ、弊社のリーディングドラッグとなっています。

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 また、2018年8月から中外製薬(株)と共同で、悪性リンパ腫の1つである濾胞性リンパ腫(FL)治療薬、ガザイバを販売しています。ガザイバは、がん化したB細胞表面に発現したCD20というタンパク質に対する抗体薬。既存のFL治療薬に比べ、再発・増悪するまでの期間を有意に延長しました。

 白血病をはじめ血液のがんは非常に細かく分類され、そのひとつひとつの患者数が少ない上、重篤な疾患であるのが実情。MDSは国内で12,000人程度、FLは5~6,000人と患者数は少ないですが、必ず医療ニーズはあるわけですから、事業性とのバランスをはかりながら、それに応えるために開発に取り組んでいるところです。

新たな治療薬を届けるために多角的に取り組んでいる

 そのほかにも、血液がん関連に対する複数の治療薬を開発中です。その1つが、肝類洞閉塞症候群/肝中心静脈閉塞症(SOS/VOD)の治療薬。SOS/VODは、血液がんを治療する際、抗がん剤投与、放射線療法、造血幹細胞移植等により発症します。すべての患者さんが発症するものではありませんが、多臓器不全等、重症化につながる場合もあります。SOS/VODの治療薬は、現在承認申請中です。この治療薬は、予防薬としても治験段階にあり、パートナー企業が実施中の国際共同第Ⅲ相試験に参加しています。

 開発準備を進めている品目として、未熟な血液細胞である骨髄芽球に遺伝子変異が起こり、異常に増殖するAMLの中でも再発・難治性のものに対する薬剤があります。通常のAMLの治療では強力な化学療法が行われますが、一定の寛解を得たあとに再発すると薬剤反応性が悪くなり、治りづらくなります。そこで求められるのが、再発・難治性AMLに対して安全性と有効性に優れた薬剤。高齢の患者さんにも投与可能な安全性の高さを目指して、研究開発しています。

 AMLには、他疾患の治療により生じたものやMDSから移行した、二次性のものがあります。こうした二次性AMLをターゲットにした治療薬の開発準備も進めています。この治療薬は、抗がん剤をもっとも効果的にがん細胞へ届けることができるリポソーム製剤で、骨髄に集積する性質を持っています。パートナー企業が実施した海外の臨床試験では既存治療を上回る生存期間が確認されており、米国ではすでに承認されました。国内においても有効な二次性AML治療薬になることを期待しています。

蓄積した知見とノウハウを生かし自社オリジナルの製品開発を目指す

 これらの開発品および販売品は、パートナー企業からライセンスインした薬剤ですが、平行して自社オリジナルとなる血液がんへの研究開発も進めてきました。現在は、慢性骨髄増殖性腫瘍(MPN)と呼ばれる疾患の1つである、骨髄線維症(MF)を対象とする薬剤を開発中です。MFは、造血細胞に異常が起こり骨髄中に線維組織が増えた結果、正常な造血が阻害される血液疾患。貧血が起こるほか、骨髄の代替として脾臓で血液が造られるようになるため脾臓が腫れるなど、全身状態が悪くなってQOLが低下し、数年で致命的な経過をたどる人もいます。治療には通常、造血細胞移植が行われますが、移植が行えない場合には、症状を改善する治療が求められます。現在開発中の薬剤は、造血にかかわる酵素のひとつJAK2の阻害剤。遺伝子変異を起こして過剰な働きをするJAK2を選択的に抑えることで、MFによるさまざまな症状の緩和が狙いです。MFも患者数の少ない疾患ですが、治療を待つ患者さんのために試験を進め、米国でフェーズⅡまで進んでいます。

 がん治療薬においては、今後も弊社がフィールドとして据えるのは血液がんの領域です。この領域で積み重ねてきた経験があり、キロサイドという薬剤をとおして医療機関との間で深めてきたつながりもあります。今までと同じようなターゲットの阻害剤だけでなく、たとえばiPS細胞を活用して疾患を再現し、そこに作用する薬をつくる。さらに遺伝子治療薬、CAR-Tなど血液がんに効果が認められる手法についても検討していく必要があると思います。血液がんの領域で、これまで蓄積した知見やノウハウをいかした新たな研究開発により注力して取り組んでいきたいと考えています。

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