2019/01/15

KRPPRESS特集:ものづくりは人づくり② 「社員のモチベーションを高めること、それが第一」HILL TOP(株)

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HILLTOP 株式会社 経営戦略部長
HILLTOP Technology Laboratory, Inc. CEO/President
山本 勇輝氏

HILLTOP System開発により人材の育成と活用が大きく転換

 弊社では、アルミに特化した試作部品を中心に試作開発や装置開発まで、多品種小ロットで手がけています。しかも1点、2点ずつの超小ロットです。

 もともと、ものづくりの現場の人材育成はピラミッド型で、最初はできあがった製品を洗ったり最後の仕上げをしたり。そういうところを経験しながら機械を触らせてもらい、使いこなせるようになればその機械の責任者になる。機械を動かすためのプログラムづくりを担うプログラマーになるのはそのあと、最終段階です。そこに至るには早くても5年かかります。弊社ももとはそういう形でしたが、それを一度ひっくり返してしまおうという発想になりました。

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オフィスに並ぶ様々な形状の製品

 超小ロット生産という性質上、製品を1点つくるのに対してひとつのプログラムが必要になります。製品とプログラムは必ず一対が必要となるため、機械の稼働に対してプログラムの数が追いつかない。そこで考えたのが、入社してすぐの、たとえば文系出身の社員であっても、2カ月で業界最高峰の5軸マシンを扱うプログラムを組めるところまで持っていくこと。それを目標とした組織変更です。工場全体の最適化、効率化のもと、いわゆる下積み時代や職人のノウハウを身につける段階を飛ばしたわけです。

 職人技を完全データ化し、ルーチンワークは機械にまかせ、人は人にしかできない知的労働を──。この考えのもとに構築された弊社独自の生産管理システム「H I L L T O PSystem」においては、若いメンバーが即戦力になります。そして即戦力に育てるための仕組みや工夫も、試行錯誤しながらつくり上げてきました。

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職人技をデータベース化し若手社員の成長スピードも早い

自分たちの仲間は自分たちで選ぶ採用活動に若手が積極参加

 本格的に新卒採用を始めたのは2009年です。大手に負けずに良い人材を採用するにはどうすればいいのか。私は大学卒業後の数年間、人材系企業に勤務しており、その経験から「大手と同じ土俵」に上がることを会社に提案しました。コストはかかりますが、採用のコストはけっしてムダではないと。ただし「大手と同じ土俵」に上がりながら、中小企業らしさ、HILLTOPらしさを打ち出す工夫は怠りませんでした。

 たとえば会社説明会。会場を借りるのではなく、本社まで来てもらって実際の現場を体験してもらう。学生が抱いているイメージと実際とのギャップを埋めるのが狙いです。それから応募するかどうかを選んでもらう。また、長い時間をかけます。説明会なら約4時間。面接は、1次の集団面接で1時間半、2次のグループディスカッションは4時間、個人面接でも1人につき1時間以上はかけます。自己PRを話してもらったら、それについて5人の面接官がいっせいに深掘りしていきます。返してくる内容はだいたい予測できます。そうして考えてきた内容が尽きてからが勝負。そこに、その人の本質や人となりが現れると思うからです。しっかりと人を見る。大人数が訪れる大手企業には、そんな余裕はないのではないでしょうか。

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コーポレートカラーのピンクを使用した、スタイリッシュな外観


 弊社の採用活動には優秀な人材を採用するだけでなく、既存の若手社員のスキルアップという、もうひとつの側面があります。説明会では、入社まもない若手社員を中心メンバーにしています。工場見学においても、各セクションのメンバーが学生に説明する形です。社員たちは、自分のセクションをどう説明するかを考えることになり、わからないことは上司やベテランメンバーに聞きます。自社についてあらためて学ぶ場になると同時に、「人」と真剣に向き合うことになるのです。「自分たちの仲間は、自分たちで選ぶ」ことで、採用された新卒社員に親近感が生まれ、入社後も親身になって指導するようになります。

 ここにも、見えないコストはかなりかかっています。しかし、既存社員の教育、意識付けという点では、かなり有効な手段になっているのではないかと思います。

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HILLTOP Systemにより、多品種・単品・24時間無人稼働を実現した工場

人間が成長できるフィールドでものづくりの前に、人づくり

 入社後の教育カリキュラムにおいては、職人技のノウハウは知識として学ぶことにとどめ、「なぜそうするのか」「なぜそうなるのか」を体系的、具体的、論理的に教えることに重点を置いています。たとえ20年以上CAD、CAMを使ってきても、同じ機械やソフトがなければどうにもならない。それは理屈がわかっていないからで、そんな人は、弊社の入社1年目のメンバーよりできることが少ないのではないでしょうか。

 副社長がいつも「5年後にHILLTOPがつぶれたとしても、どこに行っても採用したいと言われる人材を育成する」と語るように、スペシャリストではなくゼネラリストを育てるほうを重視したいと考えています。どこに行っても通用する人材。そのために、ひとつの物事ではなく、いろいろなことを経験して多角的に物事を見た上で、最終的に自分の光る部分を突出させていく。そんな育成方法として取り入れているのが、ジョブ・ローテーションです。会社の中で働く場、立ち位置やポジションを替えていくのです。

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明るく開放的なオフィス

 同じところにいて同じ仕事を続けていれば効率化はどんどん進みます。そして会社はどんどん儲かります。しかし効率化とモチベーションは対極に位置していて、効率化すればするほどものごとは単純化されていき、仕事としての面白みがなくなる。モチベーションが下がるわけです。人としての成長もない。それを防ぐのがジョブ・ローテーションの目的です。

 多くの業務を経験できるよう定期的な異動を頻繁に行うジョブ・ローテーションですが、当然のこととして異動した先で新しい仕事を覚えなければならないので、生産性や効率は下がります。しかし、たとえ下がったとしても、社員のモチベーションの低下を防ぎ、社内のノウハウや知見が蓄積され、同時に社員の引き出しは増えていくはずです。やがては生産性の向上へとつながるのです。

 ただし、試作品というところで利益を得やすい業務体質をもつ弊社だから、効率が一気に下がっても大きな赤字にはならない。そういう点では、HILLTOPならではの育成システムなのかもしれません。

人間が成長できるフィールドでものづくりの前に、人づくり

 新入社員や若手社員の教育だけでなく、マネージャーの育成というところにも力を入れています。ビジョンの描き方だとか、戦略の立て方はもちろん重要ですが、とくに製造部にいると、外部の情報を取り入れるということがなかなかできません。ですから今の状況がどうなっているのか、アンテナをしっかり張って、たとえば10年後、社会はどうなっているのか予測を立てるよう話しています。予測して、それに対して自分たちはどうなっているか、競合相手はどうなっているかを考える。どこで差別化を図り、そのためにどんな工場、どんな製造部にしていきたいかを議論し、指標に落とし込む。そのように10年後のゴールを決めて、そこに対しての1年後、というマイルストーンの置き方でないと意味がないのですから。

 目先の効率改善のようなことをやりがちですが、そうではなく、最終的に向かうべきゴールに対してこの時点ではこうなんだという絵をきちんと描かせる。そのために、いつまでに、誰が、何をするのかということをしっかり決めさせた上で組織として動かしていくということを、マネージャー陣には勉強してもらっています。

 弊社で働く社員にとって、会社は、自己実現のための場所だと思うのです。自分がどうなりたいか、どうしたいかという思いがあって、それが、ここなら実現できるんじゃないかと、そんな期待を持ってHILLTOPに来てくれている。つまり理念に共感して、会社の冒険やチャレンジを"楽しみながら"受け入れてくれる、そんなメンバーが揃っているのではないかと思っています。

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さまざまな人とコラボレーションし、アイデアや知識・技術を共有するクリエィテブ・スペース Foo's Lab

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