創業以来「自社釜炊き製法」によるものづくり

安全・安心を強みに90年企業にとって大切なのは「人」

　家庭用洗剤の開発、製造、販売が弊社の事業です。多くの石鹸メーカーが輸入した加工品から製造を行っているなか、自社釜炊き製法で加工工程の全てを一から行っています。安全で安心な商品づくりを第一とし、消費生活協同組合など品質重視の会社のOEM製品が事業の約半分。あとは業務用が30％、残りの20％が自社ブランドといった割合です。

　1924年の設立から現在まで、数少ない自社製造の石鹸メーカーとして存続してきました。強みはやはり製品の安全性ですが、弊社は長年のノウハウによって安全性と洗浄力の強さを共存させた商品力の高さを特徴としています。そういった製品の良さをもっとダイレクトに伝えたいと、2015年から自社ブランドの開発をスタートさせました。

　ネーミングやパッケージにも創意やデザイン性を盛り込み、インテリアショップやオーガニック系の店舗などで展開いただいてます。新たな業界での評判も上々です。

　企業にとって「人」が大切なことは言うまでもなく、前社長である父も社員教育の一環として「親孝行強化月間」という取り組みを考案し、親だけでなく地域や国に感謝する心が人間としていかに大事かを説いてきました。ユニークな取り組みは現在も続いています。そして私が会社を引き継いだ今、求める社員像は「自分で決断し、自分で意思決定し、自分で責任がとれる人」。「やらされている」のではなく「前向きに最後まで投げ出さずに取り組む」社員です。そういった社員を育てるためには、社員のモチベーションを維持できる社内環境・文化づくりが大切だと考えています。

木村石鹸工業(株) 代表取締役社長　木村 祥一郎氏

新商品の開発も社内の問題解決も全員参加型でモチベーションを活性

　「会社を悪くしようと思って入社する人はいない」という、いわば"性善説"に則って現場の社員を信じて任せるのが弊社のスタンスです。稟議書などに上司のハンコが必要な承認ルールもなくしました。商品開発についても開発依頼書で審査するといった従来方式を撤廃。「こういう商品をつくりたい」と思った人が、開発や製造の担当者に直接話をして、開発がいいと思ってキャパがあれば作っていいということにしています。弊社の場合、失敗しても自社製造で小ロット生産のためリスクが少なくて済みますから。実際この2年間で、OEMも含めて開発された商品は年間10アイテム程度だったのが、50アイテムにまで増えました。会社として今は何をつくってもいい時期なので、どんどんアイデアを出してほしいです。

　また、会社のさまざまな問題点を自分たちで見つけ出し、解決策を企画し会社に提案する「自分プロジェクト」は、若手中心にいろいろな部門から5～6人でチームを編成し、半年間かけて活動するという取り組みです。要望に対してたとえ経費が発生したとしても会社側はNOと言わないことを鉄則としています。第Ⅰ期のチームでは、現在開発中の製品について社内の情報共有が十分でないという問題点が上がり、コミュニケーションを活発にするために月1回の全員参加の社内飲み会を開催することになりました。会社からはビールサーバーを提供、交流を実のあるものにするために事前に集めてくれた質問をもとに私がインタビューを受けたり...といった自発的な行動が見られました。

　商品づくりはチャンスづくりでもあるので、それを楽しいと思える人が増えるほど社内の空気は活性化しますし、自分プロジェクトをⅡ期、Ⅲ期...と続けていくことで、会社の問題を自分たちで解決していくという空気ができていくのではないかと思っています。本年度は20年ぶりに新卒採用をしたのですが、来年度も継続して採用していきたいです。若い人材には会社を変える力があると思っていますから。

2015年デビューの自社ブランド製品。インテリアとしても機能するようデザインにも注力

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