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2019/01/28

KRPPRESS特集:ものづくりは人づくり④ 「ものづくり現場に"縁遠い" 人。逆転の発想で戦力づくり」 (株)積進

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株式会社積進(KRP4号館) 専務取締役 田中 安隆氏

入り口から育成システムまでパッケージとして考えている

 新卒採用は景気などの影響により、年によって状況が変わります。とくに弊社のような地方の中小企業にとっては死活問題です。

 弊社のおもな事業は産業用装置の設計・製造、精密部品の金属加工など。現在は、宇宙・航空機や医療機器など高度な技術を求められる分野にも進出しています。そうした日本のものづくりの最先端を追及する中で、従来のやり方で採用した若手社員の定着率があまりに低くなってきたため、2010年に採用そのものを抜本的に見直しました。

 ターゲットに定めたのは、これまで考えたことのなかった大卒の文系女性や、主婦、地元の高校を卒業する女子学生などの中小のものづくり現場にもっとも"縁遠い"層です。

 新卒採用に当たっては、とくに女性に限定したわけではありません。ただし、工業系や理系の勉強をしていないが、ものづくりに興味がある人やものづくりにかかわる仕事をしてみたい人を"想定人物像"として描き、工場勤務でものづくりにかかわってもらうことを明確に伝えています。さらに入社後に最低限これができれば、という基準を設定。それが、教育資料などのマニュアルづくりです。人に伝え、教えるためのマニュアルで、文系出身の人には低いハードルだと思います。実際、入社後はそれだけでは物足りなくなり、もっと踏み込んだ仕事をしたくなる。それも見越して、たとえばCAD、CAMなど一定の技術を習得してより深くかかわることができるよう、教育システムも確立しています。もっとも"縁遠い"人に対するアプローチとして重要なのは、入り口のところから育成システムまでをパッケージとし て捉え、そのための仕組みを考えておくことなのです。

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工場内全景、初心者でも短期間で技術者レベルになれる細かな教育システムを確立している

教えることをマニュアル化仕事と製品の、質の向上につながる

"縁遠い"層は、現場の機械オペレーターとしても活躍しています。ここでは主婦を中心に女性のパート社員を積極的に採用。入社後3カ月間はマンツーマンの技術研修で、基礎の基礎を丁寧に教え込みます。パート社員は補助的な仕事が中心になりますが、さらにステップアップしたい人には、約半年間の社内研修と実地テストを経て「準社員」に登用する制度も設置。彼女たちは最新の5軸マシニングを使用した切削加工など、工業系高校を卒業した男子と同等以上のスキルを身につけています。仮に弊社を辞めても、どこに行っても採用されるだけのスキルです。準社員になれば、長期的に安定して働くことができる。それが支持される理由ではないでしょうか。

 弊社の育成システムにおいては、教育資料が非常に充実しています。1年間勤め上げた文系の女性社員が後輩指導のためにつくるマニュアルで、足りないものがあれば新たに追加し、わかりにくいものはつくり替え、毎年アップデート されていきます。中小企業でここまで教育資料が充実しているところはないと自負しています。

 人に教えることは、自分自身の学びにもなります。「教えることも技術のひとつ」として、社内では当たり前のことになってきました。手順書もマニュアル化され、口頭で引き継ぎをしなくてもよくなりました。引き継ぎレスになってから、製品に不良が出なくなりました。誰が見てもわかるマニュアルによって、製品のクオリティを保てるようになったのです。"縁遠い"人を育てる仕組みを確立したことで、会社全体として仕事の効率化とクオリティの向上、さらに社全体のモチベーション向上にもつながっているのではないでしょうか。初心者を教え育てることはできた。次のステップは、そうして育った中堅をプロフェッショナルに育てていくこと。そしてとどまることなく会社を成長させていきたいと考えています。

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工場でイキイキ働く女性社員

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