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2023/03/08

HVC KYOTO 2022 ポストイベント③パネルディスカッション~大企業との連携~(レポート全文)

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HVC KYOTOのリードアドバイザーでもある小柳先生が座長となり、三澤氏、長袋氏、藤原氏による「大企業との連携」をテーマとしたディスカッションが行われました。当日の司会進行を務めて頂いた、橋本氏や、会場参加・オンライン視聴されている皆さまからの質疑応答も加わり、議論が盛り上がりました。大企業とスタートアップ、どちらの視点からも語れるパネリストの皆さまたちの貴重な意見が飛び交う時間となりました。※()内発言者の敬称略。発言は一部編集しております。

M&AIPOによるEXITどちらがいいの?

アーサムセラピューティクス社の国内初のバイオテックスタートアップのM&A事例より、M&AIPOはどちらが良いのか、という話題からパネルディスカッションが始まりました。パネリストの皆さまは一様に、「どちらが良い・悪い、ではない。」ことを前提にし、各々の意見が述べられました。
「私の場合は研究開発者であり、薬を創ることに喜びを感じる人間。なので、仮にIPOを実施し、IRに時間を取られることになってしまったら、苦痛になるんじゃないか、と思ったんです。M&Aの方が私にとって非常に自然な選択肢だった。」(長袋)「IPOをするメリットは企業を買収する側にまわれること。(経営者が)何をしたいかによって、IPOM&Aなどの目指す出口が、そもそも変わってくると思っています。」(藤原)とし、経営者が何を実現したくて、そのために好ましいEXITをどう考えるか、が重要であると述べられました。
また、「VCに相手にしてもらえない、という理由もあり、日本の起業家はマイルストンにはIPOを描きがち。一方アメリカの起業家はマイルストン上にIPOと書かないようアクセラレーションプログラムにて、トレーニングを受けていたりする。この違いに驚いた。」(小栁)など、日米において、IPOに対する考え方が異なることも共有されました。

■大企業もスタートアップも、もっと情報提供していかなくては...

海外と比較し、日本において、買う側、買われる側の情報提供があまりにも少ないという意見から、論点は情報(ニーズ)に移行しました。
「外資系製薬企業は"ニーズ"を年次で発表し、積極的にアピールしている印象がある。アメリカでは、特に医療機器の分野では、スタートアップが大企業のニーズを理解し、いくらでM&Aするか決めて、起業するケースが殆どだといいます。(日本では、)大企業とスタートアップの情報の受け答えに足りない部分はあると思います。」(三澤)とし、大企業のニーズに応じ、高く評価してもらえるタイミングを見計らってスタートアップ側が情報提供する重要性にも言及されました。

「タイミングよくニーズを得るためには、何がキーなのか?というと、それはコミュニケーションだと思います。HVC KYOTOでも良いですが、そこでのワンタイムではなく、そこで繋がったコミュニケーションを継続し、研究開発が進むごとにその情報を大企業と共有する、ということを継続的にすることが重要だと思っています。」(長袋)「コミュニケーションを絶やさないというのは、色々な気づき含めて、日々動く情報をタイムリーにお伝えできることに繋がるのだと思う。」(三澤)として、一過性ではない継続的なコミュニケーションの重要性のお話がありました。
また、「HVC KYOTOでもスポンサーである企業さまにニーズを発表して頂く機会はあるのですが、それは現在地点のニーズ。交流機会の場で、大企業と知り合い、その大企業から『このニーズが今後出てきそう』という情報を得て、創業するぐらいのことが必要だな、とHVC KYOTOを通して強く感じている。」(小栁)とし、大企業、スタートアップ、アカデミアとのコミュニケーションが上手くいっている最たる場所として、ボストンが例に上がりました。

司会進行の橋本氏が、ハカルス社は大企業やCVCとのコミュニケーションが優れていると紹介し、その工夫について質問したところ「製薬企業のCVCは、積極的に会って話をするべきだと思っています。最終的に出資に至らなくても、出資検討する段階で、製薬企業の現在と将来のニーズを知る機会となるからです。私の経験からしても、製薬企業のファイナンス部門の方とお話することはとても良いことだと思います。」(藤原)とし、CVCとコミュニケーションする利点を述べられました。

■大企業とスタートアップの人材交流を活発に!

参加者からの「大学発スタートアップを興した教授にとって、大企業のニーズ知ることは難しいのでは?」という質問対しては、「企業側の研究者が、大学発のシーズでスタートアップをつくる。教授は、サイエンティフィックファウンダーになる、という形で企業側にいた人間がどんどんスタートアップのセクターに出てきて活躍するのが良いと思う。大企業出身であれば、タイムリーにニーズを拾ってくることができます。」(長袋)と述べ、企業側の人材がスタートアップセクターへ参入する重要性が語られました。「開発中止となった研究シーズをもって起業する方や大学発スタートアップのCOO/CTOなどになる方がどんどん日本にも増えていけばよいと思っている。」と、橋本氏もコメントされました。
その他、長袋氏は、マーケットニーズに応じ、自身のアセットをピボットすることを厭わないこと、と自身の事例を交え述べられました。藤原氏は、創薬では難しいと前置きしつつ、自身の開発製品は、薬事を取得しない非医療機器として上市し、リアルワールドでのニーズ検証を意識的に実施している点についても述べられました。

■さいごに

スタートアップがメガファーマのような多国籍企業と付き合う障壁に関する質問に対し、意思決定の長さや担当窓口が変り一貫したお話ができないこと、などがあげられました。
パネリストからは、大企業からスタートアップセクターに転身した人たちとの接点機会を広げること、データパッケージなど言語を超えたところでの情報提供をしっかりすること等、コミュニケーションにまつわる発言が多くあったのが印象的です。
グローバルで活躍するヘルスケア分野のスタートアップにとって、国内外の大企業、大学、VCなど様々なセクターの人たちと交流し、ネットワークを築くこと、そして、コミュニケーションを続けることを如何に重要視されているのかといったことを、パネリストの皆さまの発言から伺い知ることができ、コミュニティを継続発展させていくというHVC KYOTOのミッションを再認識しています。みなさまのご参画をお待ちしています。(完)

ただいま、HVC KYOTO2023のピッチに挑戦したいスタートアップ・研究者と、
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