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2023/01/18

HVC KYOTO 2022 ポストイベント② パネルディスカッション(レポート全文) 

パネルディスカッション(抜粋にてご紹介) 

※(発言者)の敬称略

パネルディスカッション1.jpg

■ヒト細胞の安定提供

 骨髄由来細胞、脂肪由来細胞そしてエクソソームへと臨床研究を牽引しておられる寺井先生のお話をきっかけに、細胞ソースについて、意見交換がなされました。「大学の研究レベルでは提供されても、医療用製剤の原料用となると、細胞提供者のハードルは少なからずある。」「再生医療がもっと社会実装されていかなければ、安定供給モデルの構築は困難だ。」としつつも、「経産省の支援があって実装モデルというのができてきた。だんだんハードルが低くなっている」(畠)と、現状が紹介されました。

 また、参加者からは、「海外製の利用はどうか?」という質問に対しては、海外製の細胞治療製品の導入事例は一部あるものの、日本と欧米で生物由来原料基準の違いがあるとの説明がされました。また、「生物由来原料基準に関しては、国際的な調和をはかるワーキンググループが存在している。少なくとも2年後、希望的には来年度ぐらいには、その辺を合理化できれば良いと考えている。」(佐藤)と述べられました。また、海外製品に頼りがちな医療製品の現状を踏まえ、経済戦略的観点で考えると"国産"細胞が望ましいとの意見もありました。

■細胞加工製品の適応拡大

 再生医療・細胞の分野においては、開発した細胞加工製品が複数の疾患に有効性があると示していきたい企業側と、個々の細胞がどの疾患に有効性があるのか、を示したい臨床医側とで、適応拡大に際して視点の差異が大きいのではないか、と田畑先生が指摘されました。その中で、「専門医が横の繋がりをもち、企業側は診療科間の横連携や臨床研究に熱心な先生を見つけることが必要。一つの製品を中心に、ネットワークをいかにして作っていくのか。それが大切だと思う。」(宮川)とし、大阪大学外科学講座内での専門医同士の横連携について例示されました。

■細胞加工製品の有効性や安全性

 治験や移植に使う細胞数をどのように決めるのか?という参加者からの質問に対しても議論がありました。数値や有効性を確認する手段として、動物実験による治験方法についてパネリストが説明したところ、さらに動物実験廃止の世界的なトレンドについて質問がよせられました。「化粧品開発では欧州で全廃されていて、数年内に医薬品開発の動物実験もできなくなる、という風に言われている。」(佐藤)とし、製品のグローバル展開を検討するうえで、注視することとされました。代替手段となる可能性が高い次世代シーケンサー(NGS)についても触れ、早期からデータを積み上げる重要性を指摘されました。安全性の確認については、細胞加工製品では、安全係数をかけられないことに気を付けるべきとし、生体内試験(In Vivo)か、試験管内試験(In Vitro)かではなく製品のハザードをリスク分析し、定量化する重要性への言及もありました。有効性や安全性を評価するためのレギュラトリーサイエンスにおける知見が共有されました。

 また、培養肉の一般消費者への展開におけるサイエンスコミュニケーションについて会場から質問がありました。これには、培養肉に対する「透明性」と「身近さ」が必要であることと、川島氏は言及し、一般消費者にもわかるよう、細胞培養の仕組みを認知してもらう機会について述べられました。

■海外と比較した日本の強みと弱み

 「海外では大学の先生がほとんど自分のベンチャーをもっている。」(長船)とし、海外のアカデミアが"お金を稼ぐこと"に積極的であるとされました。また、ベンチャー投資に対しても、「海外はPoC(コンセプト検証)が進んでいようがいまいが、それが将来的にどれぐらいのキャッシュを稼ぎ出せるのか、というポテンシャルで投資される。その結果、アジャイルで並行して何本も可能性の検討ができる。日本の場合、1つずつ可能性を検討していくため、(時間がかかり)シェアがとれない。」(川島)など、スタートアップ2社から"お金"に関する弱みが指摘されました。また、「(スタートアップは)日本国内をターゲットに置いている。海外は自国のみをターゲットに考えていない。」(後藤)など世界を視野入れないことで、"積極的にルールメイクする"側に立てないことも弱みとされました。

 一方、強みは、「日本で勝てるところはいぶし銀的な、一工夫あるアプローチで攻めるところ。」(川島)「(循環器内科であれば)海外では、バルクを見るのに対し、日本は個々の患者さんを徹底的に診ている。こういう人がレスポンダーだということがわかる。」(宮川)「日本が(世界市場に)打って出るには尖った特徴あるもの以外は通用しないと思う。」(寺井)など日本の丁寧で粘り強い研究開発が良い点としてあがりました。

 他にも、AIを導入した画像分析、生物プリンターなど、多様な議論で今年も時間を忘れるほど盛んな議論が展開されました。(完)

近日開催予定!【HVC KYOTO 2022 ポストイベント③】
Alumniショウケース「大企業との連携:創業 -EXITにおける、相手の見つけ方と合意点の作り方-」

開催日時:2023年2月3日(金) 13:30~16:00(予定) 
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・企業との連携に課題感を持つスタートアップ
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