平成28年度 再生医療サポートビジネス懇話会 第4回はんなり雑記終了

平成28年度 再生医療サポートビジネス懇話会 第4回はんなり雑記


日 時:平成28年10月17日(月) 16:00~19:00
場 所:京都リサーチパーク 1号館4階 サイエンスホール
講 師:落谷 孝広 氏 (国立がん研究センター 研究所 分子細胞治療研究分野 主任分野長)
座 長:田畑 泰彦 氏 (京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 生体材料学分野 教授)
講 演:『エクソソームを測定する基盤技術開発の必要性』


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「いま、エクソソームについての研究が注目を集めています。」と言って皆さんはピンと来るでしょうか?ピンと来たアナタ、すごいです!何のことか分からない方はぜひこの「はんなり雑記」をご一読ください!

さて、「エクソソーム」というあまり耳慣れない言葉ですが、これはほとんどの細胞で分泌されているタンパク質の複合体で、大きさは50~150nm程度、内部には脂質、microRNAが含まれています。生体では唾液、血液、尿、羊水、悪性腹水等の体液中で観察され、培養細胞からも分泌されますが、近年、離れた細胞や組織に情報を伝達するための役割を担っていることが分かり生体内の機能において重要な存在であると考えられています。しかし、このような重要性が分かったのは2000年代に入ってからで、エクソソームの存在が判明した1980年代には単なる「細胞のゴミ」だと考えられており、特別注目される存在ではなかったというのが驚きです。

実はこのエクソソーム、がんにとっても大変重要な存在だということが分かってきました。具体的にはがんの転移です。従来がんの転移は、運動能力を獲得したがん細胞が移動することによって起こると考えられていました。しかし最近の研究で、①がん細胞からエクソソームが分泌され、②エクソソーム表面のシッピングタグ(ポストコード)に従い血管内皮細胞に取り込まれ、③がん細胞の近くに血管内皮細胞を引き込んできて、④それに乗って外へ出ていく(転移の最初のステップ)ということが分かって来ました。

また、エクソソームが運搬しているmicroRNAも生理機能や病態を知るうえでとても重要なのです。たとえば、乳腺の正常細胞はストレスを受け、microRNA(mir-27b)の働きを抑えることで、ストレスを回避する行動をとります。しかし、この一時的な回避がmir-27bがもともと押さえていたはずの遺伝子を活発化させ、がん細胞が生まれてくる原因となるのです。つまり、このmir-27bを調べることで、乳がんの有無が分かるということになります。

とても小さく、まして初めは「ゴミ」だと思われていたエクソソームが生体内の働きを知るうえでとても重要だという今回のお話は、人体の不思議さを物語っていると感じました。

このように、エクソソームを調べることは医療の発展においてとても重要なことなのですが、現在の技術ではエクソソームを知る・診る・図るのは困難なのが現状です。しかし、だからこそ、研究者や技術者が力を合わせ、新しい測定方法や機器を開発していくことが必要なのではないのでしょうか?京都リサーチパークで産学公連携を推進し、再生医療の産業化をサポートしている身として、少しでも力になりたいと感じました。


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作成者:大信田


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