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同志社ビジネススクールMBA公開講座「中小企業の経営~学ぶことの意義とは~」 結果報告終了

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同志社大学大学院ビジネス研究科

2023723日開催の標記MBA公開講座の結果について以下のとおり報告します。

1. 開催概要

開催日時:2023723日(日)13:30-17:10
場所:京都リサーチパーク1号館4階 サイエンスホール(KRPフェス2023の一環として開催)
主催:同志社大学大学院ビジネス研究科(同志社ビジネススクール)
後援:京都リサーチパーク株式会社(以下では「KRP(株)」)
開催趣旨:ビジネス環境が大きく変化する中、中小企業の方々、起業を準備される方々にとって経営についてまとまって学ぶことの必要性が増している。本講座では、MBA修了生および経営研修受講経験者の体験談とともに、同志社大学大学院ビジネス研究科(同志社ビジネススクール。以下では「DBS」)、公益財団法人京都産業21、京都府生涯現役クリエイティブセンター、日本政策金融公庫による連携取組の計画を紹介し、中小企業にとっての経営について学ぶことの意義を考察した。
主対象層:中小企業経営者、経営幹部層、これらの候補者、税理士・会計士、起業家、行政・産業支援機関の方々
出席者数:一般参加者28名(事前申込み28名中22名、当日参加6名)、登壇者11名、アルバイト学生6名、参加総数45

2. 登壇者

第1部 講演:中小企業の経営と学ぶことの意義
児玉 俊洋(こだま としひろ)/DBS教授「中小企業経営の特徴と中小企業関係諸機関による連携取り組み」
野瀬 義明(のせ よしあき)氏/DBS教授「中小企業が最低限おさえるべき会計・ファイナンスの知識」
奥田 智則(おくだ とものり)氏/株式会社日本政策金融公庫京都支店国民生活事業 筆頭副事業統轄「日本公庫における経営者の学びの支援」

第2部 学習成果活用体験談
秋竹 俊伸(あきたけ としのぶ)氏/株式会社早和果樹園(そうわかじゅえん)代表取締役社長(DBS2021年度修了生)「DBSでの2年間で気づいた会社経営のおもしろさ」
浦 嵯希里(うら さぎり)氏/中央工業株式会社取締役(DBS2018年度修了生)「DBSでの学びを家業で活用奮闘中」
千秋 園子(ちあき そのこ)氏/株式会社幹細胞&デバイス研究所経営管理室長(DBS2019年度修了生)「MBA知識で考えるベンチャーの経営」
柴田 晋吾(しばた しんご)氏/株式会社ロゴスコーポレーション取締役副社長(DBS2013年度修了生)「DBSでの気づきによる事業拡大の決断」
南 美樹(みなみ よしき)氏/株式会社南陽商会代表取締役社長(2022年度事業展開力養成実践講座修了者)「中小企業に活かすMBAの考え方」
平岡 貴子(ひらおか たかこ)氏/京都府生涯現役クリエイティブセンター2022年度MBA体験コース修了者「急に兼業・副業の促進と言われても~その一歩を踏み出すために~」

第3部 講演:公的支援機関の役割
加地 将徳(かじ まさのり)氏/公益財団法人京都産業21京都経済センター支所長「公益財団法人京都産業21の概要~中小企業支援のために~」
前田 志津江(まえだ しずえ)氏/京都府生涯現役クリエイティブセンター事務局長「社員の学び直しについて」

3. 講演概要

第1部 講演:中小企業の経営と学ぶことの意義

児玉 俊洋/DBS教授「中小企業経営の特徴と中小企業関係諸機関による連携取り組み」

KRPにおける同志社ビジネススクールMBA公開講座は2013年からはじまり、今年は「中小企業の経営~学ぶことの意義とは~」をテーマとして、4機関で協力して開催している。4機関を紹介する。京都産業21は中小企業の支援機関で2014年から毎年DBSと共同企画講座を開催している。本年分については机上の配布資料も参照されたい。現在参加者を募集中である。京都府生涯現役クリエイティブセンターは「学びなおし」を実施する機関で、2022年からDBSと共同で「MBA体験コース」を開催している。本年分については定員をオーバーする申し込みをいただいている。4つめは日本政策金融公庫で政府系の金融機関で小規模企業、中小企業への金融支援をされている。今年度よりこの4機関で連携して中小企業の経営に関する学びの支援を強化していくこととしている。DBSは、「建学の精神である良心教育」と「京都に育まれた伝統と革新の知恵」を立脚点とし、「人間の尊厳を尊重し企業や組織の成長を担えるリーダーシップを備えた人物を育成する。」ことをミッションとしている。DBSでは、世界標準としてMBAに必要な科目分野ととともに、ミッションに基づく特徴的な科目分野として「イノベーション」とともに「中小企業・地域経営」分野の科目を有している。中小企業白書のデータによると、中小企業におけるマネジメントスキルの必要性は急増しており、ビジネススクールや支援機関の研修において中小企業が経営を学ぶニーズは増加していると考えられる。現に、DBSには大企業と並んで中小企業から多くの学生が入学しており、近年、特に中小企業からの入学者数が増加している。DBSでは、中小企業向けには標準的理論にとどまらず中小企業の経営の特色を踏まえた教育を行っている。

野瀬 義明 氏/DBS教授「中小企業が最低限おさえるべき会計・ファイナンスの知識」

中小企業が最低限おさえるべき会計・ファイナンスの知識を説明する。DBSの必須科目である基礎会計学・ファイナスの一部である財務分析を紹介したい。財務分析では、その会社が良いのか悪いのかが分かる。架空の2つの会社の損益計算書、貸借対照表を見ながら財務分析を行い、どちらが「良い」会社かをみていく。分析の種類は「規模(売上高)」「収益性(売上高営業利益率)」「効率性(総資産回転率)」「健全性(自己資本比率)」「成長性(増収率)」「生産性(一人当たり営業利益)」と総合指標である「ROA(総資産経常利益率)」「ROE(自己資本当期純利益率)」がある。これらに基づいた算出結果が最終ページにあるが、各種類が何対何になっているかでこの2社の優劣が判断できることが分かる。ご自身の会社の現在の財務分析も是非してみてほしい。

奥田 智則 氏/株式会社日本政策金融公庫京都支店国民生活事業 筆頭副事業統轄「日本公庫における経営者の学びの支援」

日本政策金融公庫は、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つの事業本部からなる政策金融機関であり、うち国民生活事業では中小企業、特に小企業の方々に融資を行っている。融資先は全国で119万企業あり、全国の中小企業が385万企業あるので3社に1社が利用していることになる。多くの中小企業では社長自身がプレイングマネジャーになっている。経営管理能力、知識の向上をしていかねばならないという経営課題を持っている。公庫は融資が本業であるが、本日は経営者に役立つ情報提供活動について紹介する。日本公庫の概要としては、3事業合計の融資件数約29万件のうち融資総額500万円以下が47%、3,000万円以下が90%。国民生活事業の1融資先当たり平均融資残高は約1,000万円で、1989年以降に株式公開した企業は417社である。
融資以外の情報提供ではLINE公式アカウント、特設サイト、冊子などで補助金、助成金、経営の工夫事例を公表している。他業種情報もあるので活用されたい。また、公庫の総合研究所(シンクタンク)では、中小企業の経営に関する調査、研究を行っており、「脱炭素」や「デジタル化」を推進している企業などの事例をホームページ、冊子で公表しているので経営方針の決定の参考としてほしい。さらに、ホームページでは自社の決算書財務データを入力すると財務指標推移なども確認することができるとともに、経営指標調査として119万企業の決算書をもとに収益性や生産性なども集計しており、同業他社との比較などもできるので参考としてほしい。その他、全国でセミナーやシンポジウムも開催しており、リモートでも参加できるので活用してほしい。最後に、無料で相談できる公的支援機関を通じた法務、税務の専門家の紹介もしている。経営者一人ですべての知識を吸収することは不可能であるので是非活用してほしい。また、最近ではリスキングなどの社会人の学びなおしが増加している。公庫では教育資金を融資する制度もあり経営者の学び支援も行っているので活用されたい。

第2部 学習成果活用体験談

秋竹 俊伸 氏/株式会社早和果樹園代表取締役社長(DBS2021年度修了生)「DBSでの2年間で気づいた会社経営のおもしろさ」

みかん農家の出荷組合を法人化した会社の2代目社長に就任したが経営のことがわからないので経営の基礎を学びたいと思いDBSに入学した。DBSでは、管理会計に興味を持ち、管理会計のゼミに入り、農業法人経営における管理会計の実態と実践について調査・研究した。また、さまざまなバックボーンを持った同期生とのグループワークも楽しかった。
DBSで学んだ成果は、これまでの意思決定の振り返りをすることができ、確信が持てるようになった。また、5force分析により自社の生きる道がわかってきたり、グレイナーの企業成長の5段階の法則では、自社の成長軌跡と全く一緒であることがわかったり、損益分岐点分析により、自社の仕組みがわかってきた。
さらに、知らないことを知ることが大事であることがわかってきた。また、経営と云うものに対して怖いという気持ちから経営って面白いという考えに変わってきた。 今、会社では、管理会計を用いて部門別経営を実践したり、原価企画を用いてみかんゼリーを開発して年間50,000セット販売できるようになった。
最後に、経営の基礎を学ぶことは、経営者としての成長につながる。

浦 嵯希里 氏/中央工業株式会社取締役(DBS2018年度修了生)「DBSでの学びを家業で活用奮闘中」

同志社大学 理工学部を卒業後、理工学研究科へ進学、MOTコースを活用し、ビジネス研究科を修了した。修了後一般企業へ就職、2022年に和歌山県の家業へ入り、高圧ポンプの製造販売会社の経営に加わっている。当社の抱える問題点として、局所的にしか知名度がない為、何をしている会社なのかすぐに理解されない事が多かった。DBSでは、0→1だけがイノベーションではないという事を学ばせて頂き、ブランドとして「知られないという事は、存在しないのと同じ事」として、202211月にホームページをリニューアルした。また、産業集積地にない中小企業の成長要因について考察し、若手採用と人材育成が成長要因の一つとしてソリューションレポートに纏めさせて頂いた。DBSに行って良かったと感じている事として、年齢、業種、国籍を超えた多くの素敵な方々と出会えた事と、柔軟な考え方や切り口を得たこと、そして、学び続けることによりいつか訪れるであろうチャンスを掴み取るという、今の自分自身の自信と心の支えになっている所である。

千秋 園子 氏/株式会社幹細胞&デバイス研究所経営管理室長(DBS2019年度修了生)「MBA知識で考えるベンチャーの経営」

大学発ベンチャーの管理部門のマネージャーをしていた時に、会社が急激なスピードに変化しており、今後、どのような経営課題に直面するのか、どのような仕組みや体制が必要になるのか、自分の今までの経験では対応できないと考えDBSへ入学を決めた。
DBSで学んだことは、自分の考えてきた課題がすでに解決されていたので、関心分野の最先端の知識が得られたこと、複合的な視点を持つこと、高い視点を持つこと、ものごとを俯瞰すること、さまざまな情報を集めて分析し判断すること、深く考えることなどである。DBSで得たものは、第3の場所、さまざまな立場の人と接すること、新しい視点、考え方の柔軟性、自分を相対化する視点などである。特に、人的ネットワークでは、DBSの先輩を顧問に迎えて、当社の弱いところをサポートしていただいている。
仕事では、経営に関わる仕事が多くなり、これまで、難しいと思っていたものが、今はメリット、デメリット、リスク、短期、長期といった時間軸で整理して現状と照らし合わせることで、経験のないことでもある程度判断できるようになった。また、管理部門の目線でしか考えられなかったものが、会社全体の視点で考えられるようになり、経営者から同じ言葉で話せるようになったねといわれたことがすべてを表している。

柴田 晋吾 氏/株式会社ロゴスコーポレーション取締役副社長(DBS2013年度修了生)「DBSでの気づきによる事業拡大の決断」

当社は同族企業で、1928年の創業以来、事業形態や社名を変化させながら現在に至ってる。そこの4代目として、現在の事業であるアウトドアブランド「ロゴス」を中心とした企業の維持継続のためになすべきことを明らかにする必要があった。2012年当時のキャンプ用品事業領域には限界が来ており、新しい事業が必要となっていた。こうした問題点の解決の糸口を見つける手段の一つとしてDBSに入学した。弊社の企業目的は、「アウトドアメーカーとして屋外と人の接点に位置する第一ブランドを目指す」ことであり、基本理念は「アウトドア文化を既存概念に囚われず、世の中にワクワク感を与えること」である。その為に、キャンプ用品に新たにアパレル製品を取り入れつつ、それをアウトドアアクティビティにつながる<ワクワク>感を感じられる売り場とする為に「空間展示」という手法を開発した。競合他社には無い、売り場でトータルに見せられる環境を整える事で売り上げ自体もそれまでの平積み販売よりも実績を伸ばす結果を出す事ができた。その結果をソリューションレポート(SR)に纏めさせて頂き、現在では、「空間展示」を行なっている全国直営店を50店舗に増加させ、ロゴス・ランドやロゴス・パークの運営、その他業種とのリレーションなども手掛ける事となり、売上はこの7年間で120Upさせる事ができた。

南 美樹 氏/株式会社南陽商会代表取締役社長(2022年度事業展開力養成実践講座修了者)「中小企業に活かすMBAの考え方」

DBSと京都産業21の共同企画講座である「事業展開力養成実践講座」を受講した動機は、若い頃よりのMBAへのあこがれ、思いのほか安価な授業料(MBAの授業と変わりはなかった)変化する世の中に対応するためには勉強し続けることが大切だと思ったことであった。また、弊社の専務も別のMBA講座で勉強していて、同じレベルでの円滑なコミュニケーションのために受講した。学習の成果として、会社概況、南陽の作法、企業理念、事業ドメイン、自社の存在価値、5つの競争分析による自社を取り巻く環境、新事業実現のポイント、組織と人、自社の財務分析をまとめた<シン・南陽商会へ>~永続企業へのロードマップ~をレポートとして作成した。現在も人間力を磨いて、お客様のために「南陽商会=何とかしようかい!!」を実現するために奮闘中である。

平岡 貴子 氏/京都府生涯現役クリエイティブセンター2022年度MBA体験コース修了者「急に兼業・副業の促進と言われても~その一歩を踏み出すために~」

令和2年に厚生労働省が「兼業・副業の促進に関するガイドライン」を出したことで、企業が従業員の働き方に対して大きな舵きりをした事で従業員の選択肢が大きく広がった。私自身、企業の一社員の立場で定年まで不変のものと考えていた中で、新しい選択肢を提示され、これはチャンスなのか?自分に何ができるのか?と考えていたが、同時に何から組み立てれば良いのか全くわからない状態であった。その殻を破る一助となったのが「京都府生涯現役クリエイティブセンター」が開催したDBSMBA体験コース(新事業創造の基礎知識マスター講座)での学びであった。そこで「新事業立案」により新事業のアイデアを創出、磨き上げ、廃棄を重ねる事でビジネスを模索し、「ファイナンス」を通じて財務分析や収益モデルの設計手法を学ぶことができ、「リーダーシップ」の考え方を通じて「Do More, Do Less、(もっとやるべき事と、やらない事)」の自己評価を定期的に実施する事ができる様になった。体験コースではあるが、MBAのエッセンスが詰まった「研究に立脚した実践的知識」を武器に、新たな一歩を踏み出してみませんか?

第3部 講演:公的支援機関の役割

加地 将徳 氏/公益財団法人京都産業21京都経済センター支所長「公益財団法人京都産業21の概要~中小企業支援のために~」

当財団は、中小企業の企業活動に真に役立つ質の高いサービスを提供している。京都リサーチパークに本部があり、その他に、京丹後市に「丹後・知恵のものづくりパーク」、けいはんな地区に「けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)」、四条烏丸に「京都産業21経済センター支所」の計3つの支所がある。主要事業は、中小企業に対するワンストップ相談窓口をはじめ、販路開拓・資金支援・人材確保等の経営課題解決に向けたあらゆる支援を行っていることである。平成26年度からDBSと協働し、中小企業の経営者・幹部層を対象とした講座を実施。今年度で10年目の取り組みとなる。平成26年度から昨年度までに計12講座を開講し、178名の参加実績がある。講師陣はDBSから登壇されている。プログラムの作成、教室の提供等の協力も受けている。今年度は103日より、全7回の連蔵講座を実施する。「事業展開力養成実践講座」と銘打ち、経営革新・事業展開に関る戦略や組織づくり・ファイナンスについて学ぶ講座を実施する。

前田 志津江 氏/京都府生涯現役クリエイティブセンター事務局長「社員の学び直しについて」

京都府内の中小企業等に「学び直し」に関するアンケートを行ったところ、77%が学び直しの必要性を感じると回答。しかし、在職者に学び直しの機会を提供していると回答した企業は、31%であり、必要性を感じていても学び直しの機会を提供できていない企業が多いことがわかった。こうしたことから、人生100年時代を見据え、「生涯学び・働き続けることのできる社会」の実現のため、令和38月に京都府が当センターを開設した。主な機能は、人材マッチング、相談・キャリア支援・リカレント教育である。令和5年度の前期リカレント研修は12講座を開講。オンラインセミナーもリニューアルし109のオンデマンドコンテンツを無料で提供している。リカレント教育の一元集約サイトである「京都リカレントナビ」には227講座を掲載している。令和5年度前期リカレント研修では、DBSと共同し、「MBA体験コース」を有料で提供している。職業人生が長期化する中「学び直し」を通じて、いつまでも輝き続ける皆さんを応援したい。

4. 机上配付資料

・「財務分析」資料(DBS教授 野瀬義明)
・「DBS2年間で気づいた会社経営のおもしろさ」資料(株式会社早和果樹園)
・「DBSでの学びを家業で活用奮闘中」資料(中央工業株式会社)
・「ミチしるべ」他資料1種類(日本政策金融公庫)
・「京都府生涯現役クリエイティブセンター」他資料1種類(京都府)
・「Doshisa Business School」資料2種類(DBS
・「DBS MBA入門シリーズ講座 2023 SPRING」(DBS
・「2023年秋学期入試説明会オープンスクール」(DBS
・「事業展開力養成実践講座」他資料3種類(公益財団法人京都産業21)
・「KRPフォトコンテスト」(京都リサーチパーク株式会社)
・「アンケート」2種類