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2022/03/18

「京大発イノベーションを探る」iPSバイオベンチャーの「今」と「近未来」~京大発iPS再生医療技術の実用化を目指すキーパーソン2名が語ります~ 終了

京大発イノベーションを探る1_バナーC.jpg2022年224()に『「京大発イノベーションを探る」iPSバイオベンチャーの「今」と「近未来」~京大発iPS再生医療技術の実用化を目指す2名のキーパーソンが語ります~』がオンラインで開催されました。当日は我が国を代表する京大発iPSバイオベンチャーのキーパーソン2名から、iPS再生医療の「今」、そして「近未来」についてトークセッションも交えて詳しくお話をお伺いすることができました。本レポートでは、当日の様子の一部をご紹介させていただきます。

目次

・プレゼンテーション サイアス株式会社 代表取締役CEO/CTO  等 泰道 氏

・プレゼンテーション 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門 教授 江藤 浩之 氏

・トークセッション ~iPS再生医療の現状と未来~

プレゼンテーション サイアス株式会社  等 泰道 氏

0224イベントレポート⑴.png0224イベントレポート⑵.png等氏:サイアス株式会社は京都大学CiRA発のベンチャー企業です。京都大学CiRAの金子新教授の技術をライセンス導入し、京都大学をはじめとする多くのサポーターにご支援をいただきながら研究を進め、今、プレクリニカルのステージにあります。これから先は、CiRA-Foundationで臨床細胞を作り、京都大学の中にある治験センターKi-CONNECTでの治験をしていこうと計画しています。

0224イベントレポート⑶.pngサイアスが行っていることは、iPS から各種免疫細胞、NK細胞やCD 8陽性 T 細胞、 CD 4陽性ヘルパー細胞、その他の免疫細胞を作り、TCRs CARsを導入し、所望の免疫細胞を作っていくプラットフォームの開発です。サイアスで特に注力しているのが、TCR-TT細胞受容体を使ったT細胞です。人がそれぞれ持つ T 細胞受容体を使った T 細胞治療により、治療困難な固形がんの克服向けて現在開発が進んでいるところです。



プレゼンテーション 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門  江藤 浩之 氏

0224イベントレポート⑷.png0224イベントレポート⑸.png江藤氏:治療に使われる輸血製剤に関して、現代において若者たちの献血が減っていく中、需要と供給のバランスが崩れ始めており、献血以外の製造法に基づいて輸血製剤が供給できるようにするということが私たちの究極の夢となっています。その一つが、iPSの技術を使って血小板輸血製剤を作るということです。
メガカリオンは、 iPS細胞から巨核球という血小板しか作らない細胞を大量に作る技術が開発できたことを契機に設立しました。



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例えば上記のようなフローケミストリー製造の考え方に基づき、連続して血小板を作り出すことが可能になります。閉鎖系の回路によりバイオ機器を連続的に活用し、一回で製造終わらせるのではなく、増やした巨核球を効率よく何回かに分けて血小板を作るという製造プロセスができると私たちは考えています。

トークセッション「iPS再生医療の現状と未来~

イベント後半ではトークセッションとして、お二人に、iPS再生医療技術の実用化における現状の課題についてや、iPS再生医療の未来展望について、詳しくお話をお伺いいたしました。
0224イベントレポート⑺.png

サイアス株式会社 代表取締役CEO/CTO  等 泰道 氏()
京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門 教授 江藤 浩之 氏()

Q:iPS再生医療技術の実用化における現状の課題についてお聞かせください。

等氏:iPS由来の免疫細胞治療に注力して開発を続けている多くのプレイヤーは、現在ほぼ全てがR&Dの段階です。我々を含めて、治験で使えるレベルの細胞を作成し治験に入っていこうとしていますが、実際に商品になった場合、iPSの製品であれば、1,000L2,000Lといったレベルの培養で1,000人前10,000人前を作っていく必要があり、その点が大きな課題として挙げられます。免疫細胞治療の場合、できるだけ多くの人に使ってもらえるようにするためにも、ゲノム編集等々で克服していく必要があることが課題かと思っています。

江藤氏:先のプレゼンテーションで輸血製剤の需要と供給のバランスが崩れているという話をさせていただきましたが、現在血小板製剤が足りていないのであれば、10万円あるいは14万円(注意:HLA合致洗浄血小板製剤)など日赤で提供されている輸血製剤と同等の価格にできないとダメですよねというご指摘はよく受けます。現時点では、10年後20年後のスパンで考えてどのようにその値段まで持っていくのかということ含めて、サイエンティフィックだけではなくマーケットに関しても広くディスカッションできる土壌がもう少し必要かと感じています。

Q:iPS再生医療の未来展望についてお聞かせください。

等氏:細胞治療剤の世界においては、この数年でかなり多くのプレイヤーが治験に入っていく状況になっています。もちろんサイアスもその中の一つになるでしょうし、そこから一歩進んで実用化となる場合、35年後あたりに希少疾患の分野での承認を受けるものが出てくると私は信じています。実際に細胞を使う治療がCAR-Tで示されたように、の患者さんに治癒を誘導するポテンシャルが非常に高いという点から大変期待もされていますし、iPS 由来の免疫細胞治療剤も治癒を誘導するものが多く出てくるのではないかと想像しています。1015年のスパンではおそらく細胞治療剤の世界が、低分子の世界、それから抗体治療剤の世界、DNA RNA といった治療剤と同等もしくはさらに大きな世界となって、がんを治癒させる世界が本当に見えてくる時代に入っていくのではと展望しています。

江藤氏:iPS 細胞を発見された山中先生がリーダーシップをとって、オール日本という形で企業も含めて細胞治療法に先鞭をつけようという運動がある程度進んできたかと思います。一方で、特に米国の様々な場所から我々を凌ぐような形でどんどん新しい技術をインプットした細胞治療法の提案がされてきており、このままだと負けそうだとも感じています。
iPS 細胞治療法に活用するだけではなく創薬も含めて、iPSというのは初期化、いわゆる若返りをする細胞です。先ほど等社長もT細胞が若返るということを仰っていましたが、まさにこれ(若返り)が人の体の中で起きる技術につながる可能性もあります。本日発表したような外で細胞を作って投与することだけではなく、如何にiPSというコンセプトを体の中で活用することで病気を未然に防いだり、若返りにつなげたりできるか、という方向に将来は進んで行くのではないかと個人的には思っています。

最後に

なお、イベント開催後の2/28、サイアス株式会社様はシリーズBにおいて、総額 21.3億円の資金調達をされたことを発表されました。免疫細胞療法の開発の加速だけでなく、本格的な米国展開の準備を開始されるとのことです。京都大学iPS細胞研究所様を起源とされるサイアス様がまさに世界に向けて躍進されるタイミングでお二方のお話を伺える、非常に貴重な機会となりました。
(サイアス株式会社様より:サイアスでは開発や製造の分野でサイアスの挑戦に参加をしてみたい人材を求めています。ご興味のある方は是非URLからご覧くださいませ。(https://thyas.co.jp/join/))

KRPでは、今後も定期的にライフサイエンス・ウェルネス系の企業・スタートアップやアカデミアの研究者を対象に、研究環境やアクセラレーションプログラムなどの情報を発信するセミナーを開催していく予定です。次回もお楽しみに。


サイアス株式会社のご紹介

組織名:サイアス株式会社

サイアス株式会社は、ヒトiPS細胞からT細胞を再生し、がんや感染症に対する個別化された再生免疫細胞療法を提供しています。骨髄で産まれたT細胞が、異物やがん細胞を認識するためのトレーニングを受ける場所を胸腺=Thymusといいます。"as"は、"Antigen-Specific"を意味すると同時に、日本語の明日(あす)を示します。そして"Thyas"という言葉には"次世代の個別化されたT細胞療法が産まれる場所"という想いが込められています。チョウ目ヤガ科(Noctuidae)シタバガ亜科(Catocalinae)の大型のガであるムクゲコノハをThyas Junoと呼びます。サイアスのロゴマークは、見る人によって、羽を広げたムクゲコノハにも、舞妓さんの着物や雅楽の装束にも、もちろんT細胞受容体にも見えるようです。

WEBページ: https://thyas.co.jp/

京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門のご紹介

組織名:京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門

京都大学iPS細胞研究所は、2020年度に設立10周年を迎えました。2010年の開所時に「iPS細胞の医療応用」という使命を掲げ、これを念頭に以下の4つの目標を達成することを目指して、研究所一丸となって研究に取り組んでおります。

2030年までの目標

  1. iPS細胞ストックを柱とした再生医療の普及
  2. iPS細胞による個別化医薬の実現と難病の創薬
  3. iPS細胞を利用した新たな生命科学と医療の開拓
  4. 日本最高レベルの研究支援体制と研究環境の整備
WEBページ: https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/



過去の関連セミナーレポートのご案内

KRPでは、定期的にライフサイエンス・ウェルネス系の企業・スタートアップやアカデミアの研究者を対象に、研究環境やアクセラレーションプログラムなどの情報を発信するセミナーを開催しています。

・2021年10月27日開催 ラボの安全管理のスペシャリストに聞くコロナ禍でもう一度見直す実験研究における安全管理
・2021年9月29日開催 健都イノベーションパーク進出企業によるトークセッション「みんなで考えてみよう!健都に出来る最新施設の楽しみ方」
・2021年8月31日開催 『京都大学と考えるスタートアップが成長するラボ』トークセッション
・2021年7月29日開催 『食とバイオのオープンイノベーション拠点大解剖』トークセッション
・2021年7月14日開催 『コロナテック最前線~研究者とスタートアップの緊急対談~』
・2021年6月23日開催 『「Beyond Next Ventures」と考えるバイオベンチャーのアクセラプログラム活用法』トークセッション
・2021年6月10日開催 『シェアリングエコノミーと実験機器の新しい流れ』トークセッション
・2021年5月13日開催 『研究者集団「リバネス」と考える新しいラボの在り方』セミナー

イベントレポート等はこちら⇒https://www.krp.co.jp/labplus/events/