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2025/03/24

【株式会社マリ】完全非接触のSAS治療機器で世界に挑む

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、高血圧や心臓病、糖尿病などの合併症を引き起こす危険な睡眠障害にも関わらず、治療継続率の低さが課題とされている。そんな中、非接触のSAS治療機器の開発を推進する株式会社マリ。代表取締役CEOの瀧 宏文氏に開発中の治療機器や、医師免許を取得しながら医療機器開発の道に進んだ想い、今後の展望などについてお話を伺った。

株式会社マリ/代表取締役CEO 瀧 宏文(たき ひろふみ)氏

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SAS患者の負担を軽減する非接触の治療機器を開発。

現在、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法として持続陽圧呼吸療法(CPAP、シーパップ)が一般的です。患者さんに専用マスクを着けてもらい、空気を送り込むことで睡眠時の呼吸を可能にするという効果的な治療法です。しかしながら、毎晩マスクを装着しながら寝ることは患者さんにとって大きな負担となり、治療の継続が難しいという課題がありました。

この課題を解決するために、弊社では患者さんにとって負担の少ない「非接触」によるSAS治療機器の開発を進めています。この装置には「無呼吸状態の検出」と「無呼吸状態を解消」という2つの役割があります。「無呼吸状態の検出」にはミリ波レーダを活用して対象者の胸の動きをモニタリングし無呼吸状態を判断します。

さらにこの装置は、低周波音により目が覚めない程度の刺激を与えることで正常な呼吸を促して「無呼吸状態を改善」することも可能です。例えるなら、息が止まっている人の肩を優しく揺さぶるような感覚です。弊社では、「無呼吸の検出」だけではなく、この「無呼吸状態を改善」するという治療も行い、医療機器の承認を受けて販売することを最終目標としています。

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医師免許を取得後、未開拓の治療に貢献するために医療機器開発の道へ。

私は元々、大学では医学部で学び医師免許も取得しましたが、未開拓の医療分野で働き、治療が十分と言えない患者さんの役に立ちたいと考えました。その点において薬学の道もありますが、私自身は物理学に興味があったので工学の道を選びました。大学院の情報学研究科でレーダについて学び、医療機器の開発・研究を行うようになったのです。医学の知識を活かして医療機器を開発できることは、臨床研究を行う際にも大きな強みになっています。

その後、大学で教員として勤務しながら、スタンフォード大学のバイオデザインプログラムに参加しました。そのプログラム受講中に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者さんに出会い、研究開発を進めたのが起業のきっかけとなります。このプログラムは医療機器を開発するだけではなく、スタートアップを起業し資金調達し、装置の開発や承認まで実践的に学べるものでした。その経験を経て、SAS治療機器の開発事業に専念するため教員を辞め、201711月に株式会社マリを立ち上げました。

マリという会社名は夫婦関係の維持・改善という意味の「Marital Relationship Improvement」という英単語の頭の発音が由来になっています。SASはいびきの大きさなどが原因で、夫婦やパートナーとの関係悪化を招くこともあります。当社の治療機器で患者さんの負担を軽減し、そうした関係の改善に寄与できれば幸いです。

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会社の成長と共にオフィスも拡張でき、情報発信できるのがKRPの魅力。

KRP に入居を決めた第一の理由は、研究開発の場としての利便性の良さでした。現在、共同開発を進めている京都大学の医学研究科と工学研究科へのアクセスがしやすく、さらに京都駅にも近いので、出張で新幹線を利用する際にも便利です。

会社の成長に合わせて施設内でオフィスもステップアップできる点もKRPの魅力です。弊社は2018年に会員制シェアオフィスの「KRP BIZ NEXT」に入居し、2019年に6号館のオフィスに移転し、2024年には9号館と4号館に移転してオフィスを利用しています。オフィスを拡張する際も移転しやすく、適切なサービスを受けられるというのは大きなメリットです。 

さらに、KRPでは多彩なイベントも開催されており、弊社も海外展開を目指すヘルスケア領域のスタートアップと事業会社のイノベーションプラットフォームである「HVC KYOTO」や、「KRPフェス2024」ではスタートアップ支援のためのトークセッションに登壇するなど、さまざまなイベントに積極的に参加しています。このような場で情報発信を行うことで、資金調達やスタッフの採用に繋がっており大変有り難いと感じます。また京都には大学が多くあるため、人材募集や育成にも適した場所であると考えます。

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患者のプライバシーを守り働く人の負担も軽減。独自技術を世界へ届ける。

前述しましたように、最終目標である「無呼吸状態を解消」を行う治療機器については、開発から臨床研究、医療機器としての承認、保険適用の手続きが必要となり、長い年月を要します。そのため、開発のなかで生まれた技術はどんどんライセンシングによって収益化をはかっていきたいと考えています。「無呼吸状態の検出」に関しては、臨床研究においても成果を出しており、現在、製品化を進めています。

この「非接触」のセンシング技術は、医療機関や、介護施設、保育施設において健康状態をモニタリングする「見守り」に役立つのではないかと考えています。ビデオカメラとは違い、対象者のプライバシーを守りながら呼吸や心拍などを計測できます。もちろん、ウェアラブルデバイスでも可能ですが、高齢者や乳幼児は嫌がって外してしまうケースも多く、非接触の場合は、対象者の負担はありません。 

ほかにも、ペットや家畜といった動物の呼吸状態を検知して感染症などを早期発見することもできるでしょう。弊社の「見守り」の技術によって、夜間勤務など働く人の負担も減らし、労働環境の改善にもつながるのではないでしょうか。

ミリ波レーダによる非接触の技術は他企業でも開発されていますが、医療レベルで高精度な生体モニタリングができるのは、世界においても弊社だけの独自技術と言えます。海外市場も視野に入れて開発を進め、弊社の治療機器を世界中の医療現場に届けていきたいです。

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瀧 宏文(たき ひろふみ)

1975年大阪生まれ。京都大学医学部医学科卒業後、医師免許取得。京都大学情報学研究科特定助教、東北大学医工学研究科特任准教授を経て、20171月~6月スタンフォードバイオデザイン(グローバルファカルティ研修)に参加。201711月に株式会社マリを設立。20194月から京都大学COI拠点研究推進機構の非接触見守りセンサグループに参画し、睡眠時無呼吸症候群治療機器や非接触生体情報センサの製品開発を推進。非接触見守りセンサコンソーシアム代表。

企業情報
組織名:株式会社マリ
役職名:代表取締役 CEO
代表者:瀧 宏文
所在地:9号館 1F
TEL:075-315-8997
URL:https://marisleep.co.jp/

事業内容
音声やミリ波レーダ等による独自の非接触センシング技術とディジタル信号処理によって生体情報の測定や睡眠呼吸障害の診断を非接触で行う医療機器。さらに非接触で低呼吸・無呼吸状態の解消を行う医療機器等の開発を行っています。また、ビジネス向けには当社が保有するリモートモニタリングや睡眠呼吸障害のスクリーニング技術などをベースにパートナー企業と共同で事業を進めて参ります。