2025/03/17(月)
【株式会社糖鎖工学研究所】 世界をリードする糖鎖技術で、創薬開発にイノベーションを起こす
人の生命活動に重要な役割を果たす「糖鎖」は、バイオ医薬品、ペプチドなど中分子医薬等の創薬開発を全く違う新しいステージへ導く力を秘めている。その糖鎖の大量生産技術と修飾技術を主軸として、化学的なアプローチによりバイオ医薬品を生み出す株式会社糖鎖工学研究所。世界の先頭を走る革新的な技術と事業について、またKRPを拠点にするメリットや、今後めざす未来について、代表取締役社長の朝井洋明氏と取締役兼技術部長の下田泰治氏に話を伺った。
株式会社糖鎖工学研究所/代表取締役社長 朝井 洋明氏
株式会社糖鎖工学研究所/取締役 技術部長 下田 泰治氏
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バイオ医薬品に活用できる高純度な「糖鎖」を大量生産する、唯一無二の技術
■御社の技術と事業内容について教えてください。
朝井氏:弊社では「ヒト型糖鎖」を取り扱っています。糖鎖は鎖状に単糖がつながったもので、タンパク質や脂質に結合し、細胞の表面や多くの血中タンパクの中に多く存在します。身近なものを例に挙げますと、皮膚や体の中の水分を保湿する役割があり化粧品などに使用される「ヒアルロン酸」も糖鎖の一種です。
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ABO式のヒトの血液型も糖鎖によって決まります。糖鎖は生命現象を左右する重要な物質で、細胞分化、老化、免疫応答などの生命現象や、がんの転移、ウイルス感染、炎症などの疾患にも関係していることが明らかになってきました。まだまだ未解明な部分も多いのですが、さまざまな疾患の治療薬として活用できる可能性があり、大きな期待が寄せられています。
弊社のコア技術は、鶏卵を原料にした高純度の「ヒト型糖鎖製造技術」と、狙った位置に均一な糖鎖を付加することができる「糖鎖修飾加工技術」です。鶏卵にヒトと同じ糖鎖が含まれることは昔から知られていましたが、その構造があまりにも多様で複雑なため、極めて扱いにくくその研究はあまり進んでいませんでした。
元々、私は大塚化学に在籍しており、新規事業として糖鎖の研究を進めることになりました。2002年に横浜市立大学の梶原康宏先生(現・大阪大学大学院理学研究科・有機生物化学研究室教授)が開発された技術を導入し、現在もご指導を頂きながら研究を進めています。
下田氏:糖鎖やペプチド、タンパク質に関連する研究開発や医薬品への応用にかかる受託研究を受けて、その研究が成就すると糖鎖を大量生産し、原薬や医薬中間体、原料として販売するというのが弊社のビジネスモデルです。糖鎖を扱う企業は多くありますが、質・量・価格においてバイオ医薬品への利用が可能な糖鎖を扱えるのは世界においても弊社だけと言えます。
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■KRPに入居されたきっかけをお聞かせください。
朝井氏:大塚化学の糖鎖工学研究チームは、当時、徳島県にあったのですが、東京大学と横浜市立大学、東京理科大学にあったサテライト研究所と集約して移転することになりました。そこで、全国の候補地を探しましたが、当時、約20もの部屋をまとめて借りられるラボは少なく、京都の都心から近いという利便性の高さからKRPへの移転を決めました。
糖鎖工学研究所は2012年に分社化され、2013年にマネジメント・バイアウト(自社買収)により大塚グループから独立し、現在に至っています。KRPはイベントも多くあり、製薬会社も多く入居されているので、他社と情報交換ができるのが魅力です。また、海外のお客様には京都という立地が大変好評で、観光も兼ねて弊社に訪れる方も多くいらっしゃいます。
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さまざまな枠を超えて企業や学生との繋がりが生まれた「KRPフェス2024」
■「KRPフェス2024」開催に、どのように関わられたのかお聞かせください。
朝井氏:KRPが創業35周年を迎えるにあたり、毎年開催する「KRPフェス」を盛り上げたいとKRPの門脇社長からご相談を受けた事をきっかけに、企画から参画させていただくことになりました。ライフサイエンスを領域とする企業が多く入居されているので、「ものづくり」をテーマに、分析技術・計測技術・バイオテクノロジーなどを軸とする技術イノベーションフォーラムを開催することになりました。
下田氏:入居企業が主体的に動くイベントにしたいというKRP担当者の熱い想いにも賛同し、担当の方と一緒に入居企業を訪問し、参画を呼びかけました。イベントに参加すれば情報収集もできますし、他企業との繋がりもでき、新たなイノベーションが生まれます。また、自社の研究や商品、サービスをポスターセッションで宣伝できる点もアピールしました。
朝井氏:京都市産業技術研究所や京都府中小企業センターと話し合いをする中で、KRPだけでなく京都の街全体に広がるようなイベントにしようという事になり、島津製作所様や堀場製作所様、横河電機様などKRPに入居されていない企業なども巻き込むイベントとなりました。また、KRPの担当者が積極的に大学に足を運び「KRPフェス」の宣伝をされたので、学生も沢山集まりました。私からお声がけした大学の先生から、研究室の学生も参加させて欲しいと言われた際は、魅力的なテーマが提案できたと安心しました。
■「KRPフェス2024」に参画されて良かった点など感想をお聞かせください。
朝井氏:多くの人に来て頂けるように、第一線で活躍するアカデミア研究者をゲストスピーカーとしてお招きし、最先端の研究や取り組みを発表して頂きました。講師をされた近畿大学の木下充弘教授は最先端技術で抗体医薬の分析をされており、京都大学大学院の川上浩司教授も日本におけるデータサイエンスの第一人者で、テレビにもよく出演されています。研究者だけでなく、学生にとっても面白い講演会になったのではないでしょうか。
多くの学生さんも来てくださり、そのうち数名が弊社の研究にも興味を示していただきました。このような活動は、優秀な人材確保にもつながるのではないかと期待しています。企業側としても、学生さんと履歴書だけではなく実際に対面し、その方の人柄や研究への意識の高さを知る機会があるというのは重要です。
下田氏:手作りのフェスでしたが、何事も体験する事が大事と痛感しました。KRPで作成してくださったオリジナルTシャツを皆で着て参加しましたが、一体感が生まれ学園祭に近い雰囲気を楽しめました。イベント終了後には懇親会なども開催し、KRPや他企業の方々と仲良くなり連体感が生まれました。数社の企業とビジネスにつながる可能性ができたのも大きな収穫です。また、共催というカタチで糖鎖工学研究所の名前をクレジットされたことで、弊社の認知度向上にも繋がりました。
「朗らかに、しなやかに、凛として」働き、創意工夫を続けていく
■今後、会社として注力したいことなど、お聞かせください。
下田氏:株式会社日本触媒と糖鎖修飾ソマトスタチンに関する共同研究を進めています。これはヒトの生体内にあるソマトスタチン(成長ホルモンの分泌抑制作用を持つペプチドホルモン)にヒト型糖鎖を付加させることで、天然のペプチドを医薬品へ応用できることを示す技術の一例で、現在この技術の導出活動を進めています。
また現状では、脳の中に薬剤を届けることは非常に難しいと言われていますが、それを可能にする糖鎖の機能が分かりつつあり、その研究も進めています。これらの技術は、医薬品の元となる化合物を見つけるという創薬の初期段階に有用な技術となり、今後はこのような創薬のシーズの技術開発にも力を入れていきたいです。
朝井氏:設立当時から、仕事における3つのモットー「朗らかに、しなやかに、凛として」を大切にしており、この考えは社内にも浸透しています。楽しんで仕事をするのが何より大事と感じます。AIなどの技術がどれだけ進化しようとも、研究者一人一人のアイデア、創意工夫とスキルこそが大事だと考えています。社員一人一人が楽しく、柔軟な発想で、誇りをもって働き、新たなイノベーションを起こして欲しいです。
KRPのように、郊外型ではなく京都の中心にあり、これほどの規模とフレキシビリティのある施設はないと思います。サイエンスこそは、日本が世界で戦い生き延びられる分野だと考えています。KRPは今後も一層、さまざまな垣根を超えてあらゆる企業が活発に交流し、若者が集う拠点になってほしいと願います。
(プロフィール)
朝井 洋明氏
鹿児島県奄美大島出身。鹿児島大学大学院理学研究科修了後、1989年に大塚化学株式会社に入社。徳島研究所研究員として勤務し、営業職も担当。その後、新規事業開発に携わり、2009年社内に設立された糖鎖工学研究所所長に就任。2012年の分社化に伴い社長に就任。2013年、経営陣によるマネジメント・バイアウトにより独立。2023年大阪大学生物工学国際交流センター招聘教授、LeaP科学財団理事を務める。
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下田 泰治氏
長崎県長崎市出身。小野薬品工業の水無瀬研究所にて、中枢性疾患治療薬の開発に関わる研究プロジェクト・リーダーとして医薬品開発研究に従事。その後、創薬系ベンチャーの研究開発やCRO(医薬品開発業務受託機関)の受託研究事業に携わる。2010年に大塚化学糖鎖工学研究所に入社。研究部長及び事業部長を経て、2020年より現職。
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企業情報
組織名:株式会社糖鎖工学研究所
代表者:代表取締役社長 朝井 洋明
所在地:1号館
TEL:075-315-9218
FAX:075-315-9225
URL:https://www.glytech.jp
E-Mail:glytech-info@glytech.jp
事業内容
弊社では、糖鎖関連技術の研究開発とその技術を利用した事業化検討を行っています。
世界をリードする糖鎖技術で、創薬開発を支援いたします
弊社は、糖鎖の大量生産技術と修飾技術をプラットホームとして、化学的なアプローチによりバイオ医薬品を生み出す、創薬支援をビジネスモデルとしております。また、世界に類の無いユニークなホルモンペプチド薬やアルツハイマー治療薬のパイプラインも保有しています。
コア技術は「糖鎖製造技術」と「糖鎖修飾加工技術」です。
【他社とは違う、糖鎖製造技術】
鶏卵を原料に、さまざまな工程を経て純度の高い「ヒトN結合型糖鎖」を製造しております。現在、年間10kg以上のスケールでの製造実績があり、また50~100種類糖鎖ライブラリーを持っておりますので、様々な誘導体としてご提供が可能です。
【カスタムメイドの、糖鎖修飾加工技術】
狙った位置に均一な糖鎖を付加することができ、ペプチド本来の活性を生かしたままで、「糖鎖付加ペプチド」を合成することができます。また付加する糖鎖は本数や構造も任意に選ぶことが可能です。糖鎖付加のメリットとして、疎水性や難溶性の高い物質の水溶性の向上や、生体内で分解しにくくなるなどの効果が確認されています。
英語版WEBサイト:https://www.glytech-inc.com