【開催報告】環境フォーラム Green Tech Wonder 共創で実現するイノベーション-越境連携で描く持続可能な未来終了
2026年2月13日(金)京都リサーチパークにて、「KRP環境フォーラム Green Tech Wonder共創で実現するイノベーション-越境連携で描く持続可能な未来」(共催:総合地球環境学研究所、京都超SDGsコンソーシアム)を開催しました。このフォーラムは、事業規模や業態を問わず、環境・サステナビリティ領域(グリーン分野)へ参入できる契機や道筋を共有することを目的に開催しました。越境等、自社以外との連携を活かしつつ、独自の強みで業界の発展に貢献している企業と、環境政策研究の第一人者が登壇し、事例発表やディスカッションをとおして、グリーン分野における新たな発想や実行・推進につながる知見を提示しました。(掲載内容は当日の様子が伝わるよう、一部を抜粋・要約してご紹介します。転載・二次利用はご遠慮ください)
【タイムテーブルと登壇者】
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ことはじめ講座 |
総合地球環境学研究所 副所長・教授 浅利 美鈴 氏 |
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企業による先進事例紹介
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(1)株式会社サトー サーキュラーエコノミー事業部 部長 塩谷 雄介 氏 (2)不二製油株式会社 経営企画本部 サステナビリティ推進部 部長 泉 晶子 氏 (3)株式会社村田製作所 サステナビリティ推進部 シニアマネージャー 大塚 浩亮 氏 (4)SPACECOOL株式会社 代表取締役CEO 兼 CTO 末光 真大 氏 |
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パネルディスカッション |
浅利先生(モデレータ)、上記登壇企業の4名 |
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交流会 |
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【ことはじめ講座】
環境教育やごみ問題の研究者である総合地球環境学研究所副所長・教授の浅利先生により、昨今の環境課題に関するポイント等を解説いただきました。一概にサプライチェーン排出量を削減していかなくてはならいとはいえ、我々が貢献できるところはどの段階なのか。先生には、参加者の属性を踏まえてご説明いただきました。
米仏他諸国と比較した日本人の環境意識調査をもとに、日本では環境課題について日常的にコミュニケーションを取ることが少ないことに言及。マイバックの使用こそ定着はしたものの、再エネを扱う電力プランの契約やエコ関連認証マーク付き製品の購入等については、十分に浸透していない実態を紹介。これらのことから、身近な人と環境に関する会話を始めることが、環境意識の向上につながると改めて呼びかけました。さらに、日本のリサイクル関連法の現状を概観し、京都市のごみ排出量の推移を振り返りました。「京都市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例」(しまつのこころ条例)により、2019年に達成された目標である「ごみ排出量を2000年のピーク時の半分にする」ことと合わせて、資源循環型社会における価値観の変遷について私見も述べられました。

総合地球環境学研究所 浅利 美鈴 氏
【企業事例紹介】
登壇企業4名の方より各社の取り組み事例、外部との連携事例をご紹介いただきました。
(1)株式会社サトー:ラベリング機器や物流・小売向けソリューションを提供し、バーコードやRFIDなどの自動認識技術を中心に業務効率化で企業の現場改善を支援する総合メーカー
DPP(デジタル製品パスポート)を活用した資源循環モデルの構築に向けた実証実験の結果、動脈企業(製造・販売側)と静脈企業(回収・再資源化側)では重視する視点が対照的であるという課題が明らかになりました。そこで、関係者が共通で取り組める循環設計思想―例えば、製品設計段階からのリサイクル性確保、材料情報の標準化、回収しやすい構造設計の導入―を共有し、これらをDPPで連携することが重要であると説明されました。

株式会社サトー 塩谷 雄介 氏
(2)不二製油株式会社:BtoBを主軸に、植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4事業を展開する食品中間素材メーカー
原料のサステナブル調達から植物性食品の普及に至るまで、バリューチェーン全体を通じた環境・人権への取り組みについて紹介。パーム油のサプライチェーンでは、NDPE(森林破壊ゼロ・泥炭地での新規開発ゼロ・搾取ゼロ)を方針に、農園までのトレーサビリティ向上、地域と連携したランドスケープ・アプローチの実践やグリーバンスメカニズムを構築・運用。さらに、環境負荷の低減と食の多様性に寄与する植物性食品やアップサイクルを通じた資源循環について示されました。最後に、サステナブルな食の未来の実現において「公正な移行」の視点の重要性についても語られました。

不二製油株式会社 泉 晶子 氏
(3)株式会社村田製作所: セラミックコンデンサや無線モジュールなどの電子部品等を世界的に提供し、IoTや自動車・通信分野で高信頼・高密度化を支える先端技術を展開する企業
同社は循環社会の実現に向け、昨年度から独自目標:2050年までに製造過程で発生する排出物の循環資源化率・資源利用率100%達成を設定。連携先や顧客とのトレードオフが数多ある中、工業用PETフィルムを、PET原料であるBHET*に再生する日本初の取り組み(9社連携)にも参画。また同社の圧電技術と繊維系総合化学メーカーとの連携で生まれた電気の繊維「ピエクレックス」を用いたアパレルの“着る循環”社会実証を推進し、GREEN×EXPO2027での展開を予定しています。
*BHET(ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート)は、使用済みのPETボトルやポリエステル繊維を化学的に分解(解重合)して得られる、高品質な再生PET樹脂製造の中間原料のこと。

株式会社村田製作所 大塚 浩亮 氏
(4)SPACECOOL株式会社:太陽光と大気からの熱を遮断して熱吸収を抑えることができる放射冷却素材の膜材料を開発・製造する2021年創業スタートアップ
ビジネスモデルは、外部パートナーの既存の商材や施工方法に合わせること。床材・防水シート製造企業等との連携により、学校や公的機関の建築物への実績や豚舎での肥育豚の出荷日齢の短縮、熱中症対策など実証を続けています。気候変動課題を適応策に着目した同社の戦略は、緩和策としても屋根適用時のカーボンニュートラル性が証明されつつあり、グローバルに公共政策への展開も期待されています。なおKRPではこの膜材料を用いて、建物屋上において省エネ実現に向けた実証実験を行っています。

SPACECOOL株式会社 末光 真大 氏
【パネルディスカッション】
フォーラム後半では、事業資本と人的資本の視点からグリーン分野における企業プレゼンスについてパネルディスカッションを実施しました。モデレータとして浅利先生、前半の企業事例紹介者4名がパネリストとして登壇。各社の取り組み事例を踏まえ、社内外との連携を通じてどのように事業資本と人的資本(人材・組織・ネットワーク等)を構築・展開してきたか等を取り上げました。
(1) 連携時に課題を乗り越えたポイントや、転機・好機になったコツ
(2) CEOとして、全社で社外連携を進める際に大事にしていること
(3) 各社のグリーン人材育成に向けた仕組みや制度、文化など
(4) これからやってみたい、注目していること・分野
(1)連携時に課題を乗り越えたポイントや、転機・好機になったコツ
村田製作所・大塚氏:9社が関連するPETフィルムリサイクルでの連携で困った点は、連携に必要な機密情報が「本当に相手に必要な情報か」を見極めること。プレーヤーを揃えて条件を明確化し、必要最小限の情報共有をルール化・段階化することが、課題を乗り越える鍵になった。
不二製油・泉氏:サステナビリティ委員会では、以前はボトムアップで重点テーマを設定していたが、社会からの期待との間にギャップがあった。2019年度からダブルマテリアリティ評価でESG重点項目を策定し、各項目の管掌を役員クラスが担う職制方式へ移行。サステナビリティを本来業務として位置付け、責任と権限を明確化することで、トップダウンによる取り組みの実効性が高まった。
サトー・塩谷氏:社外連携時、どの部門が担当するか、旗振り役に踏み出したことは転機となった。またプリンタのリサイクル率は10%以下だったが、社内を巻き込むためには、回収したプリンタを社員に身近な製品であるハンドラベラーに再生するというトップのアドバイスは価値観の共有につながった。
(2) CEOとして、全社で社外連携を進める際に大事にしていること
SPACECOOL・末光氏:ビジョンはシンプルであること。社外をどう巻き込むか、同じ方向を向けるように明確であることも重要。また自分は研究者でもあったので、研究者と対話しがちだが、事業をドライブする営業担当と会話することについても重要視している。
(3) 会社のグリーン人材育成に向けた仕組みや制度、文化など
末光氏:本業が省エネ製品の研究開発であるが、社員にはリテラシーとしてGX検定取得を推奨している。またCEOとして学んだこと(例えば国連環境計画の動き等)を、直接社員に説明・共有する機会を設けている。
塩谷氏:社内に仲間を作ることが大事であると考えているため、社内で工場見学の企画を組み、他部署の参加を促したり、取引先を講師に招いたりしている。こういった動きを社内制度に組み込むことを働きかけていきたい。
泉氏:日常業務の判断軸の一つとして、サステナビリティが当たり前に根付く状態を目指し、継続的に社内啓発に取り組んでいる。部門研修や階層別研修、国内外のグループ会社に向けたeラーニングにサステナビリティを組み込み、中長期的な価値創造へつなぐものとして浸透するよう図っている。
大塚氏:会社独自のSDGsカードゲームを使用し、従業員の理解を高めている。「理解・共感/行動・実践」の各フェーズに合わせた社内浸透活動を行っているが、行動・実践面では試行錯誤している。社外連携においては専門知識が必要のため、開発・調達・ものづくり・経営企画など人材ローテーションを積極的に進めている。
(4)今後注目していること、またはこれからやってみたいこと
大塚氏:気候変動対策に比べて資源循環への関心が高まってきたが、資源循環は調達・処理・使用などの組み合わせが適切でないと実現が難しくなる。今後は大きな一括した循環を目指すというより、小規模で成立する複数の小さな輪を構築することがトレンドになると推測している。
泉氏:サステナブルな原材料をどのように確保していくかは業界全体の重要テーマ。一方、企業側のサステナブルな取組みの価値が、消費者に理解され共感されてはじめて日常の選択につながっていく。業界や立場を超えた協働を通じて、理解の輪を広げていきたい。
塩谷氏:再資源化に重要な産業廃棄物処理業界では、今までの「適正処理」という視点から「資源循環」という意識に変わってきている。業界内中小企業が多いが、企業間をまたいだ情報開示が必要。再生材の流通を、サトー社のラベルソリューションをもとに支えていきたい。
末光氏:省エネ商材を扱っているが、素材がプラスチックであることから、よりエコな素材で製造できないか研究している。再エネは発電率の振れ幅が大きい。省エネで20%減れば、太陽光パネル設置も20%減る。物理的にも今後も施工のしやすさを目指してグローバル化を加速していきたい。
パネルディスカッションの締めくくりとして、浅利先生は社内外を問わず仲間を増やすことの重要性を強調しました。特に印象的だったのは、「『戦略的不良社員』という、確信を持って影響力を発揮する仲間を増やしていきたい」という言葉です。既成の枠にとらわれず、積極的に変化を起こす人々を増やすことが、今後の組織やコミュニティの力になるというメッセージでした。
昨年9月、総合地球環境学研究所内に「グリーンナレッジセンター」が設置されました。本センターは、多様なステークホルダーや地域、テーマのハブとして「つながり」を生み出し、教育や人材育成(「人づくり」)を通じて、環境問題の解決と持続可能な社会の構築に貢献することを目的としています。環境課題は、関わる業界や対応可能な段階が多岐にわたり、単独の組織で解決できる範囲には限りがあります。明確な答えがない課題も多いため、個別の取り組み間で連携可能なポイントを継続的に探し出し、組織の内外と協力して解決の輪を広げていく地道な活動が求められます。京都リサーチパークは、今後も周囲と連携しながら環境課題への関心を喚起し、解決に向けた知見や技術を発信し、次世代へ継承していきます。

