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2023/04/28

「東西サイエンスパークDAY 2023 開催レポート〜東西サイエンスパークのディープテック・ライフサイエンス分野で活躍するスタートアップ企業が集結!東西を結び、新産業創出を目指す〜 終了

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2023年4月21日、「研究開発型の企業が生まれ育ち、交流する拠点」をコンセプトに日本初の都市型サイエンスパーク「かながわサイエンスパーク」を運営する株式会社ケイエスピー(KSP)と京都リサーチパーク株式会社(KRP)が第2回目となる「東西サイエンスパークDAY 2023」を共催しました。

両サイエンスパークの代表企業による基調講演の後、スタートアップコンテストではディープテックやライフサイエンス分野で活躍する企業がピッチを実施。東のKSP、西のKRPと3社ずつのチームになり、東西対抗戦をしました。観戦者216名による投票結果、KSPが勝利。その後の懇談会では、相互の健闘を労いながら、交流を深めました。 

本イベントは、2021年10月18日にKSP、KRP及び株式会社リヨンドの間で締結した三社連携協定に基づく初めての活動として昨年から「東西サイエンスパークDAY」を開催しています。「東西サイエンスパークDAY」は、東西のスタートアップ・エコシステム拠点都市の架け橋となり、世界を変える新産業・新ビジネスの創出を目指す第一歩を目指します。

本記事は速報レポートとして、東西代表企業の講演やスタートアップコンテストのピッチをお届けします。

開会挨拶 京都リサーチパーク株式会社 代表取締役 / 門脇あつ子

二度のオイルショックと高度経済成長が終焉を経て、日本全土に変革が必要だと発起したリーダーたちが1989年にかながわサイエンスパークを、その同年に同じような志を持つ人たちが京都リサーチパークを設立しました。東西のサイエンスパークは、まだベンチャーという言葉が社会に浸透する前から、新産業の創造を目的に、研究開発型ベンチャーやスタートアップをサポートしてきました。

特に研究開発型ベンチャーは、長期にわたる研究費用や施設・備品などの資金が欠かせず、研究成果が出たとしても製品やサービスを届けるまでに時間を要することが多いです。それらの壁を乗り越えるためにも、どのような研究開発型ベンチャーがいるのか、事業化に向けてどのような道を描いているのかを互いに知り、交流を深めるための一歩として「東西サイエンスパークDAY」は開催されました。

京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長 門脇 あつ子は、開会式にて「東西の各チームがワンチームとなって、戦えたらなと思います。一方で、昨年の第一回東西サイエンスパークDAYでは東西の地区を超えた交流が大切だと実感しました。戦いつつ、交流を深められたらと思います」と語りました。

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京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長 門脇 あつ子
「東西の地区を超えた交流が大切」

東西代表企業講演

【西:KRP】アルケマ株式会社 京都テクニカルセンター 所長 工学博士 / ダミアン・ヴィトリ氏
【東:KSP】ダブルスコープ株式会社 取締役 / 大内秀雄氏

両社は東西チームを率いるリーダー的な役割を担っており、両チームとも登壇前にチームメンバーと拳を突き合わせるフィスト・バンプを実施。笑顔で拳を合わせる様子からも、各サイエンスパークのチームが普段から交流を深め、仲間として切磋琢磨していることが伺えました。

【西:KRP】研究環境が整っている京都からサステナビリティに貢献

フランス化学品メーカーであるアルケマ グループの日本法人として、アルケマ株式会社は設立しました。1993年にKRPに入居したアルケマは、本社が東京都にあり、他には京都と横浜の二拠点を設けています。また事業内容は、特殊化学・先端材料分野を軸とする化学品の製造・販売です。現在はサステナビリティの向上に貢献する材料の提供に注力しており、例えば植物由来の樹脂材料原料や金属の代わりとなる軽量な材料があります。グループ全体として、2030年までに-46%(2019年比)の温室効果ガス排出削減を目指しています。

ダミアン・ヴィトリ氏は、1993年に開設された京都テクニカルセンターの所長を務めています。そんなダミアン・ヴィトリ氏は京都に研究・開発拠点がある有用性を「京都リサーチパークは研究に適した環境が整っています。私たちは京都府産業支援センターの機械機器をよく使わせてもらっていたり、隣の滋賀県の公的機関を利用して研究を進めていたりします。 本社は東京にあるのですが、関西のお客様も多くすぐに会いにいけるメリットもあります」と語りました。

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【西:KRP】アルケマ株式会社 京都テクニカルセンター 所長 工学博士 ダミアン・ヴィトリ氏
1993年にKRPに入居。京都テクニカルセンターの所長を務める

【東:KSP】予測不可能な時代だからこそ、お客様を大切に

ダブルスコープ株式会社は、リチウムイオン電池にかかせない素材「セパレータフィルム」の研究開発や製造・販売をしています。2005年に40人の韓国人と日本人の大内氏が集まって設立したダブルスコープは、2015年には東京証券取引所プライム市場に上場を果たし、さらに2022年には連結子会社のW-Scope Chungju Plant Co Ltdが韓国取引所コスダック市場に上場しました。

現在、韓国に2つ、ハンガリーに1つの工場をもち、さらには北米での工場建設も検討しているダブルスコープ。順調に見えるダブルスコープですが、創業・成長期は研究や工場設立に投資をするなかで、業績が追いつかない時期があったそうです。「銀行から支援してもらうなか、業績が悪くなると『早くお金を返してください』と言われることも。未来予想だけではなかなか評価してもらえないため、それまでの信頼関係の積み重ねが大事になってきます。さらに、今は何が起こるか予想しづらい時代です。応援してくれるお客様を大切にしつつ事業に邁進してください」と語り、参加者に鼓舞と激励を送りました。

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【東:KSP】ダブルスコープ株式会社 取締役 大内 秀雄氏
2006年にKSPに入居。少しずつ拡大をして、2015年に上場を果たす。

東西スタートアップコンテスト

東西サイエンスパークを代表するスタートアップ6社がピッチ(短いプレゼンテーション)を行い、東西チーム地区対抗で投票による総合結果を競い合いました。

【西:KRP】Ghoonuts株式会社 代表取締役 / 都志宣裕氏

「脳機能の促進を通して、人々の生活を豊かにすることを目指し、脳卒中後の失語症治療の医療機器を開発しています。脳卒中後は体が動かなくなったり、食べ物を飲み込めなくなったり、身体的な後遺症が残る可能性があることはみなさんもよくご存じだと思います。しかし、言語障害が残る可能性があることをご存じの方は少ないはず。体は動いても言語障害が残ってしまった人の復職は8.2%と低い数字になっています。この数字は、言語聴覚士よりも理学療法士の方が多かったり、運動機能に比べてメカニズムが複雑だったりすることなどが影響しています。

そこで私たちは、脳を外側から微弱な電気で刺激する経頭蓋電気刺激技術を活用した医療機器を開発しています。人によっては効果が効きやすい、効きにくいなど差があるため、脳活動を測定して、パーソナライズされたものをつくっています。失語症の次の展開としては、認知機能障害疼痛など領域を広げて製品を提供していきたいです」

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経頭蓋電気刺激技術を活用して脳卒中後の失語症治療の医療機器を開発

【東:KSP】株式会社Thermalytica CEO / 小沼 和夫氏 ・経営戦略部 部長 / 篠本 遼氏

気候変動についてこの先10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持つと言われています。我々Thermalyticaは数千年先を見据えて、地球のサステナビリティを実現するべく活動しています。

Thermalyticaのコア技術は超断熱材TIISA®です。TIISA®はエアロゲル系の断熱材で、性能と経済性を併せ持っていることを特徴とします。このため、最先端のみならず、汎用品においても広く使われることが期待されます。分野に合わせた活動を以下の通り行っています。最先端分野では、宇宙応用に向けたJAXAとの共同研究、水素社会実現に向けた液化水素(-253℃)の運搬・貯蔵向けの断熱材開発、EVバッテリーの熱暴走対策向けの断熱シート開発などを行っています。汎用品分野ではプラントや建造物の断熱対策や機能性繊維などの様々な領域で広く普及する活動を行っています。Thermalyticaが対峙する課題は日本にとどまらず、世界共通の課題のため、海外での活動にも力を入れています。

第3期が始まったばかりのこのタイミングで、J-Startup 2023の選定を受けることができました。これを機に、TIISA®のグローバル展開を更に加速していきます。」

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超断熱材TIISA®で地球のサステナビリティを実現する

【西:KRP】株式会社イムノロック 取締役CFO / 合同会社SARR 代表執行社員 / 松田 一敬氏

「私はKRPが主催しているヘルスケア分野特化型のピッチイベント『Healthcare Venture Conference KYOTO(HVC)』に出たり、KSPのイノベーションスクールの講師をしたり、両者のサイエンスパークとの交流があります。現在は、神戸大学の白川利朗教授を中心に、経口タイプのがん免疫療法剤の開発を目指す創薬ベンチャーイムノロックでCFOをしています。

免疫療法とは、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。弊社で研究開発を進めているのは、がん細胞を攻撃する『キラーT細胞』を誘導し、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬『免疫チェックポイント阻害薬』の有効性を高める経口抗がんワクチンです。今年から臨床試験に入っており、今後は臨床試験のデータを用いてイグジットできればなと思っています。また、この研究は、がん以外にも新型コロナウイルスのワクチン開発にも応用でき、今後くるだろうパンデミックにも備えれたらなと考えています」

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経口抗がんワクチンでがんに苦しむ人たちを減らす

【東:KSP】Fracta Leap株式会社 代表取締役 / 北林 康弘氏

「私たちは世界の水不足解決に向けてデジタルソリューションを開発しています。日本は水の豊富な国なので危機感を抱きづらいですが、世界では2050年に50億人が水不足の被害を受けると予測されています。私たちはデジタル技術で、水処理インフラの生産性を抜本的に向上させ、この問題解決に貢献します。

具体的なソリューションとしては、複雑で膨大な水処理プラントの設計をアルゴリズムで自動化する『設計自動化』と、人の経験に基づいて判断されている同プラントの運転をアルゴリズムで最適化する『運転最適化』の2つがあります。プラント設計には熟練者の膨大な工数が必要なため、人手不足や技術承継が課題ですが、『設計自動化』ソリューションでこれらを解決できます。更に、プラント運用フェーズでは、『運転最適化』ソリューションで費用とエネルギーを節約し、CO2排出量も削減できます。まずは、日本を中心に事業を展開していますが、目下東アジア・ASEANなどの海外展開の準備も進めています。やはり、水不足が深刻なのは海外なので、私たちのソリューションが世界中で使われるよう尽力していきます」

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デジタル技術で世界の水不足問題を解決する

【西:KRP】株式会社マリ 代表取締役 博士(情報学)医師 / 瀧 宏文氏

「私たちは睡眠時無呼吸症候群の診断と治療機器を開発しています。朝起きたらパートナーから『夜中にいびきをかいていたよ』と指摘されたことはありませんか?いびきは自覚症状がない人が多く、いびきのせいで呼吸をしにくくなると心不全や高血圧などの病気を引き起こす可能性が高いです。現在の治療法は、就寝時にマスクを着用して圧力をかけて空気を送るのですが、途中で着用をやめてしまうのが課題です。

そこで私たちが提供する『VitaWatcher』はミリ波レーダで非接触で無呼吸を検知します。そして、検出したときだけ、起こすのではなく低周波照射で覚醒させます。これができると寝ているときに何も装着せず、快適に過ごすことができます。現在は、無呼吸の検出はできていますので、今後は低周波照射を組み合わせて開発していきます」

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ミリ波レーダで無呼吸を検知。睡眠時無呼吸症候群を減らしていく

【東:KSP】ugo株式会社 代表取締役CEO / 松井 健氏

「私は、世界各国でデジタルコンサルティング事業・プロダクト事業をする株式会社モンスターラボホールディングスの創業メンバーとして働き、その後ものづくりに興味があったため、ものづくりを学びながらIoTデバイスの量産を手がけていました。2018年にugoを設立して、『アバターロボットとの協働で日常をリデザイン』をビジョンに掲げて活動しています。

提供するサービスは業務DXロボット『ugo』の開発・生産です。2本のアームと移動機能を備えており、見回る・運ぶ・軽作業ができるため、警備や点検、介護などに利用されています。現在、日本は労働力不足で人件費が上がっています。そこで人材の代替としてロボットの活用が進んでおり、国内のロボット市場は年平均成長率が30%以上になっています。今日では、ugoのロボットをレンタルするだけでなく、業界でも評価の高いユーザビリティを備えたugoのソフトウェア『プラットフォーム』をユーザーに開放しています。毎月の研修を通じてugoプラットフォームに広く触れていただくほか、皆様がどのようにお使いになるかを共有し、さらにはセンサーメーカーなどとも協働できるエコシステムの形成を続けています。これを発展させ、海外への進出も目指しています。 」

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日本トップ、さらには世界を見据えたロボット開発を目指す

投票結果/表彰

すべての登壇者のピッチが終わると、会場の参加者およびオンライン参加者が、東西スタートアップグループのどちらが総合的に良かったかを投票。結果発表までの休憩時間、オンライン参加者には、登壇スタートアップ各社ブースでの説明をライブ配信しました。

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オンライン参加者には、登壇スタートアップ各社ブースでの説明をライブ配信

「東西サイエンスパークDAY 2023」スタートアップコンテスト東西対決の結果は、東に決定!

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満面の笑みでトロフィーを受け取る【東:KSP】ダブルスコープ株式会社取締役の大内秀雄氏。
勝者メンバーには、優勝トロフィーと、
株式会社リヨンド 代表取締役社長 川田 哲也氏から景品としてHOTEL ARU KYOTO宿泊チケットが手渡されました。

今回のイベントは「東西スタートアップコンテスト」と銘打っていますが、勝敗が問題ではなく、東西スタートアップが取り組んでいる事業内容や将来の展望を共有することで、東西交流の深化を図り、東西スタートアップ・エコシステムの発展に寄与することが最大の目的です。互いの活動を知ることで、刺激や交流のきっかけにつながったのではないでしょうか。
本イベントをきっかけに、さらに世界を変える新産業や新ビジネスが創出していくことを、主催一同願っております。

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登壇した東西8社および主催のKRP、KSPで記念撮影。
互いを深く知り合う交流の場という意味でも、意義のあるイベントでした。
ここで芽生えた種が、将来どんな形で花開いていくのかが楽しみです。

閉会挨拶 株式会社ケイエスピー 代表取締役社長 / 窪田 規一氏

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株式会社ケイエスピー 代表取締役社長 窪田規一氏
「『今年は勝ちたい!』という気持ちがあったので、トロフィーをもらえて嬉しいです。
まさにWBCの栗山監督の気持ちでおります」

株式会社ケイエスピー代表取締役社長の窪田規一氏が、「東西サイエンスパークDAYは競うことを目的にしてはいないのですが、昨年はKRPが優勝をして悔しかったなと(笑)。『今年は勝ちたい!』という気持ちがあったので、トロフィーをもらえて嬉しいです。 まさにWBCの栗山監督の気持ちでおります。ここからまた新産業創造に向けて、互いに切磋琢磨できたらと思います。本日はありがとうございました!」閉会挨拶を締めくくり、「東西サイエンスパークDAY 2023」は終了しました。

ご来場およびオンライン参加の皆様、登壇企業の皆様、多くの関係者の皆様、ありがとうございました。

開催プログラム

日時

プログラム

14:00~14:10

開会挨拶

京都リサーチパーク株式会社 
代表取締役社長 門脇 あつ子

14:10~14:40

東西代表企業講演

【西:KRP】アルケマ株式会社
京都テクニカルセンター 所長 工学博士 / ダミアン・ヴィトリ氏【東:KSP】ダブルスコープ株式会社
取締役 / 大内秀雄氏

14:50~15:50

東西スタートアップコンテスト

※登壇順

Ghoonuts株式会社 <KRP>
代表取締役 / 都志 宣裕氏

株式会社Thermalytica <KSP>
CEO / 小沼 和夫氏 ・経営戦略部 部長 / 篠本 遼氏

株式会社イムノロック <KRP>
取締役CFO / 合同会社SARR 代表執行社員 / 松田 一敬氏

Fracta Leap株式会社 <KSP>
代表取締役 / 北林 康弘氏

株式会社マリ <KRP>
代表取締役 博士(情報学)医師 / 瀧 宏文氏

ugo株式会社 <KSP>
代表取締役CEO / 松井 健氏

15:50~16:10

休憩/投票

オンライン:展示ブース案内

16:10~16:25

投票発表/表彰

16:20~16:30

閉会挨拶

株式会社ケイエスピー 
代表取締役社長 窪田 規一氏

16:30~17:30

展示案内/名刺交換会

主催

株式会社ケイエスピー、京都リサーチパーク株式会社

協賛

飛島建設株式会社、株式会社ミクロスソフトウエア、株式会社CSD

後援

神奈川県、京都府、川崎市、京都市、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所(KISETC)、公益財団法人京都高度技術研究所(ASTEM)

協力

株式会社リヨンド