【第3期卒業生:徳山倖我さん】教育とものづくりを軸にした事業で、ワクワクに素直に生きる人を増やしたい
自称、次世代のワクワクさん。「自分のワクワクに素直に生きられる人を増やしたい」と、教育とものづくりを切り口に活動している徳山倖我さん。大学在学中に子ども向けの3Dプリンターワークショップなどの取り組みを始め、2022年にCOM-PJ第3期に参加しました。プログラムを通して自分自身や事業にどのような変化があったのか、お話を伺いました。

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COM-PJをきっかけに、自分自身と向き合った
徳山さんが大学に入学したのは、コロナ禍の2020年4月でした。1年目は授業のほとんどがオンライン。学校に通えない日々が続く中、起業家が発信する動画や書籍にふれるうちに、起業への憧れが芽生えたと言います。
「最初は単純に『起業家ってかっこいい!』と憧れて、自分も起業してみたいと思いました。当時の気持ちを今振り返ってみると、起業家の人たちが自分のワクワクに素直に従って生きている姿、人生のハンドルを自分で握っている姿を見て、かっこいいと感じたんだろうなと思います」

京都産業大学情報理工学部で、3Dプリンターやレーザーカッターといったツールを使ってものづくりをする「デジタルファブリケーション」を専攻していた徳山さんは、自分の強みを生かした起業を模索しはじめます。そんなとき、学生や社会人など多様な人たちが集う京産大の学外施設「町家 学びテラス・西陣」で「今度、子ども向けイベントをやるから、3Dプリンターのワークショップをやってみる?」とお誘いを受け、西陣エリアでイベントを開催することになりました。
「3Dプリンターを子どもに体験してもらう取り組みは他にあまりなかったので、新しいことができているのではないかと手ごたえを感じて。一旦これを軸に活動してみようと、学生団体を立ち上げました。その後、COM-PJのことも町家で教えてもらって、『起業について勉強できるんや!』と即参加を決めました」

参加を決めた当時は、社会起業のことも、COM-PJ を運営するKRPとtalikiのことも、何も知らなかったと話す徳山さん。COM-PJの説明会では、talikiの中村タカさんに「社会課題に関心があるわけではないけれど、結果的に社会課題解決につながりそうなアイデアがある。それでも参加していいですか?」と質問して、「勇気のある質問をありがとうございます」と言われたのをよく覚えていると笑います。
「プログラム前の面談では、環境に優しい素材を使って、3Dプリンターでアクセサリーを制作する、といったアイデアを話していました。でも、キックオフの場で他の参加者の話を聞くと、『社会課題を解決するためにこういう事業がしたい』と強い思いを持っている人がほとんどで。僕はまだアイデアも固まっていないし、『起業したい』という気持ちしか持っていない、ただの大学生。そんな自分がすごく恥ずかしいなと思ったし、コンプレックスを感じました」

キックオフの後、「社会課題かどうかはさておき、自分は社会に対して何をしたいんだろう」と真剣に問いはじめた徳山さんは、家族や友人に話を聞いたり、過去を振り返ったりしながら、徹底的に自己分析。ノート丸一冊にびっしりと書き込むほど、ひたすら自分と向き合った末に見えてきたのが、「教育」と「ものづくり」というキーワードでした。
「両親が若くて、下の兄弟とは10歳近く離れているという家庭環境だったので、僕自身は兄弟が成長していく過程も、両親が親として成長する過程も、どちらも近くで見てきた感覚があるんです。だから、人が成長するプロセスや、人がより幸せな人生を歩んでいくためにはどんな働きかけが必要か、といったことに常に関心が向いていて。それに最も近いのが、教育の領域ではないかと考えました。そこで、教育と自分の強みであるものづくりの2つを、事業の軸にしようと決めました」
COM-PJの参加者や運営メンバーとの出会いをきっかけに、自分と向き合い、これから進む道について改めて考えた経験。そしてその経験を通して、自分本位の「起業したい」だけでなく、事業を行う理由や社会的価値を軸に考えるようになったことは、「僕にとって本当に大きな転換点。3ヶ月間のプログラムの中で1番のインパクトでした」と徳山さんは話します。
仮説検証を繰り返し、事業をブラッシュアップ
徳山さんがCOM-PJで取り組んだのは、3Dプリンターやプログラミングなど、子どもたちがさまざまなものづくりを体験できる教室「TSUKUM Lab」の事業プラン。プロトタイプの検証フィールドとしてKRPのイベントスペース「たまり場」を活用し、実際に子ども向けイベントも開催しました。
「保護者の方たちにヒアリングをする中で、子どもが習い事を通して他者との関わりを持つことを重視している人が多いことがわかってきました。そこで、保護者のニーズを反映して、1人で黙々と作るのではなくチームで取り組む『チームプロジェクト型ものづくり教室』を考え、最終ピッチで発表しました」

(提供:合同会社TSUKUM)
初めて参加したアクセラレータープログラムがCOM-PJだった徳山さんは、プログラムの中で最も勉強になったのは、「仮説検証のサイクルが身に付いたこと」だと話します。
「仮説検証を繰り返すことを常々言われていたので、そのサイクルが自分にしっかりと染みついたと感じます。コンテンツを作って試してみて、フィードバックを得て判断すべきだということは、当たり前だけど忘れてしまいがち。つい『子どもってこういうのが好きだよね』という想像でコンテンツを作ってしまいそうになりがちなので、そこがすごく勉強になったと思います」
3Dペンを使った子ども向けワークショップ(提供:合同会社TSUKUM)
もう1つ、COM-PJに参加して良かったこととして挙げてくれたのは、メンターによる人つなぎ。徳山さんを担当したのはtalikiのインターン生でしたが、徳山さんに大きな影響を与える人との縁をつないでくれたそうです。
「メンターさんが『僕はまだインターンでお役に立てない面もあるから、とにかく人をつなぐ』とおっしゃって。当時紹介してもらった人の一人は、今も仕事でご一緒していて、師匠のような存在です。出会えたことをとても感謝しています」
また、COM-PJに一緒に参加した同期の人たちも、自分にとって大きな存在になっていると徳山さんは続けます。
「すでに事業を始めている人も多かったので、プログラム中は先輩たちの裾をつかんで必死に付いていくような気持ちでした。でも今では、お互いに相談し合ったり、一緒に銭湯に行ったりできる、良い仲間になっていますね」
子どもも大人も、ワクワクに素直に生きられる社会へ
徳山さんはCOM-PJに参加した翌年に合同会社TSUKUMを設立。プログラミング教室の運営や教育コンテンツの企画運営、デジタル工作機械の導入支援など、教育とものづくりを軸に事業を展開してきました。さらに2025年4月からは、株式会社Monozukuri Ventures HoldingsからKyoto Makers Garage(以下、KMG)事業を継承するという新たなチャレンジにも挑んでいます。
KMGは、京都市の協力のもと、2017年に株式会社Monozukuri Ventures Holdings(旧:株式会社Darma Tech Labs)、京都リサーチパーク株式会社、公益財団法人京都高度技術研究所が共同で開設したものづくりベンチャー戦略拠点。学生時代からアルバイトやインターンとしてKMGに関わっていた徳山さんが、23歳という若さで事業を継承しました。

「Make your WAKUWAKU!」を企業ミッションに掲げる徳山さんは、「ワクワクに素直に生きられる人を増やしたい」という思いで、子ども向けの事業に取り組んできました。その思いは、今では子どもたちだけでなく全ての世代へと向けられています。
「活動を始めた当初は、まずは次世代を担う子どもたちに事業を届けたいと考えていました。でも『ワクワクに素直に生きる人』という枠組みに、年齢は関係ないと思うようになって。KMGを継承する話をいただいたとき、初めはすごく悩みましたが、よく考えてみると僕はワクワクさんを増やしたいんだから、子どもだけじゃなくてもいいなと思えたんです」
KMGは従来通り、クリエイターやスタートアップのものづくり支援の拠点、ものづくりができるコワーキングスペースとして運営しながら、KMGが仕事を受注して、クリエイターの人たちとチームを作り、プロジェクトマネジメントを行う体制も築いていきたいと考えているそうです。
「僕たちは、自分のワクワクに素直に従って、ものづくりで生きていこうとしているクリエイターの人たちを応援したい。ものづくりは得意だけど、ビジネスや法律の分野は苦手とするクリエイターも多いので、そういった面でサポートしていけたらと思っています」

さらに徳山さんは、COM-PJで取り組んでいたTSUKUM Labについても、引き続き事業化を目指しています。
「実は、KMGの継承はTSUKUM Labを実現するためでもあります。ゆくゆくはKMGを、日中はクリエイターが仕事をしていて、放課後になったら子どもたちがぞろぞろやって来て、クリエイターと一緒にものづくりをしているような場所にしていきたいんです」
子どもから大人まで、ワクワクに素直に生きる人たちを応援したい。そして、自分自身もワクワクに素直に従って事業を運営していきたい。今後について、目を輝かせて話す徳山さんは、これからCOM-PJに参加したい人に向けて「COM-PJはとても愛のあるプログラム。3ヶ月間は大変ですが、参加して後悔はしないと思います」と笑顔でエールを送ってくれました。
執筆:藤原 朋
撮影:中田 絢子
編集:北川 由依

合同会社TSUKUM・徳山倖我
自称、次世代のワクワクさん。2023年8月、京都産業大学情報理工学部在学中に合同会社TSUKUMを設立。教育コンテンツの開発運営や小中学生向けプログラミング教室などを展開する。
2025年4月には、モノづくりコワーキングスペース「Kyoto Makers Garage」を事業継承し運営中。
「Make your WAKUWAKU !」という理念の下、自分の中から湧き出る“ワクワク”のままに今この瞬間を面白がり、如何に冒険的に生きるかを日々探求中。
https://www.tsukum.com/
KyotoMakersGarage
つくる。はたらく。うる。つながる。クリエイターのための全てがそろうコワーキングスタジオ Kyoto Makers Garage(通称、KMG)。
3Dプリンター、レーザーカッター、CNCマシンなどの工作機械や、幅広い技術領域をもつスタッフによるサポート、受託制作、ギャラリースペースなどをご用意しています。
形のある物からないモノまで、"つくる" ことが好きな全ての人のためのコミュニティです。
https://www.kyotomakersgarage.com/