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【第2期卒業生:梶本大雅さん】子育てと芸術を軸に、事業領域が広がっていく

2017年に学生団体としてオトギボックスを立ち上げ、親子向けのコンサートを行う活動を始めた梶本大雅さん。2021年に法人化し、その年に2期生としてCOM-PJに参加しました。「感情のおもちゃ箱を社会に届ける」を理念に掲げ、コンサートやイベントの制作、クリエイティブ制作、アーティストのマネジメントなど幅広い事業を手がける梶本さんに、プログラムを通して得た経験がどのように今につながっているのか、お話を伺いました。

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これまでの延長線上にある、新たなアプローチを模索

オトギボックスの始まりは、梶本さんが大学1年生の頃。大阪音楽大学でミュージックコミュニケーションを専攻していた梶本さんは、絵本作家と作曲家をゲストに招いた授業に触発され、地元の友人と共に絵本の読み聞かせイベントを開催しようと思い立ちます。

「初めての読み聞かせイベントに来てくれたお客さんは6人だけ。でも、保護者の方の1人が大号泣されているのを見て、『この活動にはきっと意義がある。これからも続けていきたい』と思ったんです。そこで、大学の同級生に声をかけて結成したのがオトギボックスです」

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楽器の生演奏と絵本の読み聞かせを届ける親子向けコンサート「ようこそ絵本の音楽会へ」を中心に、学生団体として活動していく中で、現在talikiの取締役/COOを務める原田岳さんと知り合った梶本さん。この出会いをきっかけに、2019年は「NEW AGE KYOTO」(taliki主催の学生団体の支援プログラム)、2020年には「ninaumeプロジェクト」(talikiと京都知恵産業創造の森が主催する産学公連携・地域連携イノベーションプロジェクト)に参加しました。

さらに、2021年6月には株式会社オトギボックスを設立し、その年のCOM-PJに挑戦。梶本さんは、talikiやKRPが携わっているプログラムに、なぜ何度も参加しようと思ったのでしょうか。

「1つのプログラムを終え、また次のプログラムに参加しようと思えた理由は、運営メンバーの方たちの安心感が1番大きかったですね。talikiやKRPの人たちが、メンターとして丁寧に話を聞いてくれて、自分ごとのように一緒に考えてくださったことが、とても印象に残っています」

梶本さんがCOM-PJで取り組んだのは、これまでのオトギボックスの活動の延長線上にある新たなアプローチを模索すること。子どもたちと一緒に作る音楽祭の実現を目指しました。

033-241003 (1).jpg当時の梶本さんのプレゼン資料を振り返るKRPの運営メンバー

 子どもたちが出演者として参加する音楽祭を、ワークショップを重ねながら作り上げようと考えていた梶本さん。しかし、事業づくりは思うように進まず、最終ピッチには参加しないという決断をしました。

「誰かの悩みや痛みに寄り添えているのか。そもそも顧客のペインとは何なのか。いくら考えても納得感が得られなくて。しかも当時はコロナ禍だったので、プロトタイプをオンラインで行うことも考えたのですが、やっぱり対面でやりたい気持ちが強くて、仮説検証もできなかったんです」

ただし、この事業を諦めたわけではなく、プログラムを終えた後も模索を続け、その年の12月にはプロトタイプまで何とかこぎつけます。でも、オトギボックスのメンバーは企画制作を得意とする一方で、演奏のアプローチやワークショップの引き出しが足りず、外注するにも予算の問題があったため、なかなかうまくいきませんでした。

それでも梶本さんは決して諦めませんでした。このときに試行錯誤していた事業の種は、時を経て、現在は「TSUMIKIプロジェクト」としてオトギボックスの事業の1つになっています。

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「TSUMIKIは、子どもたちと一緒にコンサートの企画をするプロジェクトです。西宮市フレンテホールさんと一緒に、2022年からスタートしました。COM-PJのときは、子どもが演奏側として参加することを想定していましたが、TSUMIKIでは子どもが運営側に回り、コンサートのプログラム制作から、演出、照明、受付まで、すべて子どもたちが担っています」

子どもたちの関わり方を、演奏側から運営側に変えるという発想の転換から、事業を成立させた梶本さん。当日の様子をまとめた動画を見ながら、「めっちゃ楽しいんですよ」とうれしそうに笑う姿から、COM-PJでの経験が着実に今につながっていることが伝わってきます。

COM-PJはコミュニティでありセーフティネット

COM-PJの3ヶ月間を改めて振り返り、良かったと思う点について尋ねると、梶本さんは真っ先に、仲間やコミュニティの存在を挙げます。

「一緒に参加したメンバーとは今でも関係が続いているし、頑張っている姿が励みになる仲間ができたのは本当に良かったなと思っています。参加者同士のコミュニティだけでなく、COM-PJでお世話になったKRPやtalikiの方たちは、困ったときに頼れるセーフティネットのような存在でもあります。以前、トラブルがあって経営が危機的状況になってしまったときも、すごく助けていただきました」

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「梶本さんは応援したくなる人柄」というKRPメンバーの言葉を聞いて、「応援してくれる声があるから頑張れるし、裏切りたくないという気持ちが大きい」と話す梶本さん

 また、COM-PJの実践的な講義を通じてビジネスの基礎を学べたことも、自分にとって良い経験になったと言います。

「僕は音大出身で、起業についての知識はほぼなかったし、オトギボックスは学生団体の延長で法人化した会社なので、当初は利益を上げるという意識が薄くて……。だからCOM-PJで、起業家の方たちのリアルな事例を聞きながら、『起業とは何ぞや』『経営とは何ぞや』からしっかりと学べたのはありがたかったです」


さらに梶本さんは、プログラム期間中に幅広いジャンルのメンターへメンタリングを依頼できることや、talikiの子会社であるhalのメンバーによるコーチングを受けられることも、大きな支えになったと語ります。

「第三者として話を聞いてくれる人がいたおかげで、とても助けられました。一緒に指針を立ててもらえるのがうれしかったですね」

当時の仕組みから発展して、現在のCOM-PJのプログラムでは、halによるワークショップを実施し、事業持続性を左右するメンタルウェルネスの知恵を養うことにも力を入れています。

誰もが安心できる場づくりを目指して

もうすぐ8年目を迎えるオトギボックス。梶本さんは、活動を続けていくうちに社会の課題やニーズが見えてきたと、これまでを振り返ります。

「今までに延べ9800人ほどのお客さんが来てくださったんですけど、5000人を超えたあたりから、やっとお客さんのニーズがつかめるようになった気がします。アンケートで『うちの子が泣いても周りが嫌な顔をしなかった』『周りの子が泣いていても、すごく微笑ましかった』といった声がたくさんあるのを見て、子ども連れで安心して行ける場所が社会の中で求められているし、続けていく意義があると実感しました」

今年10月には、ずっと続けてきた「ようこそ絵本の音楽会へ」の発展形として、障害がある子どもも参加しやすいように、空間や会場体制などすべてをユニバーサル化したインクルーシブ・コンサート「ようこそ絵本の音楽会へ touch the world」を開催予定。他にも、乳幼児や障害者領域の空間プロデュースなど、子育てと芸術を軸にしながら、事業が広がりつつあります。


さらに、今後の展望について尋ねると、梶本さんは目を輝かせながらこんなふうに話します。

「会社のメンバーで話している将来の夢は、オトギボックスという自社のハコを作ること。子どもも大人も含めて、地域の人たちみんなが安心できる、未来の公民館みたいな場所を自分たちで持ちたいですね。空間プロデュースの仕事も、この大きな夢につながっていると思って取り組んでいます」

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実は、オトギボックスの代表だけでなく、西宮市フレンテホールのディレクター、京都フィルハーモニー室内合奏団の理事など、さまざまな顔を持つ梶本さん。新卒のときからCM音楽の制作会社でも仕事をしています。(現在は業務委託として継続中)

「いつかは自分たちのハコを持てるように、今はいろいろな会社で勉強させてもらっています。起業家が学ぶには、働きに行くのが1番早いんですよ。今はいい形でキャリアと事業が手元にあって幸せだなと思います」


自身の事業といくつもの仕事をうまくリンクさせている梶本さんの姿は、これから起業する人たちのロールモデルの1つになりそうです。最後に、COM-PJに参加したい人へのメッセージをお願いすると、こう答えてくれました。

「こんなに寄り添ってくれるプログラムは他にないんじゃないかと思います。すごく安心感のある場所だし、しっかり話を聞いてくれるからこそ、自分の哲学を曲げずに進むことができました。参加者の方たちも、社会課題解決を真に願って向き合っている人ばかりで素敵だなと思いますね。すごくいいプログラムなので、ぜひ参加してください」


執筆:藤原 朋
撮影:中田 絢子
編集:北川 由依

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株式会社オトギボックス ・梶本 大雅

株式会社オトギボックス代表取締役
株式会社マランフランアシスタントプロデューサー
特定非営利法人京都フィルハーモニー室内合奏団 理事
西宮市フレンテホール ディレクター

1998年 9月21日生 兵庫県西宮市出身 京都府在住
2021年大阪音楽大学 音楽学部 音楽学科 ミュージックコミュニケーション専攻を卒業。卒業時に音楽・社会活動賞を授与。
在学時にオトギボックスという団体を立ち上げ、親子向けコンサート 「ようこそ絵本の音楽会へ」の制作を始める。