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【第4期卒業生:久保とくみさん】がんを経験した看護師がつくる、闘病者・家族のサポートプラットフォーム

がんの診断の有無にかかわらず、誰もが充実した人生を送れるようにしたい。そんな思いから、闘病支援サービスの開発に取り組んでいる久保とくみさん。仲間たちと事業の立ち上げを進める中でCOM-PJに出会い、2023年に4期生として参加しました。プログラムを通して得た経験がどのように今につながっているのか、お話を伺いました。

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がん患者の心理的・社会的課題を解決したい

久保さんは大学の看護学部を卒業後、看護師として5年ほど働いていました。しかしあるとき、母親が肺がんに罹患。自分に支えられるだろうかと不安な日々を過ごす中で、次第に眠れない、食べられないといった不調をきたし、やがて自身も悪性リンパ腫に罹患してしまいます。

患者としての苦痛も、患者を支える家族としての苦痛も、自ら経験した久保さん。また、1人の医療従事者としてのもどかしさも感じていました。患者・患者の家族・医療従事者という3つの立場を経験し、「医療機関ではがん患者の心理的・社会的課題を解決しきれていない」と思い至ったと言います。

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「今の病院のシステムだと、患者さん一人ひとりに対する心理的・社会的サポートをする時間的余裕がなくて。心理的・社会的な課題は、血液データみたいに目に見えないから、どうしても優先順位が下がってしまいます。でも、実際に患者さんたちにヒアリングをしてみると、実は身体的苦痛よりも割合は大きくて、心理的・社会的苦痛が約7割を占めているんです」

がん患者の社会的課題とは、仕事やお金の問題はもちろん、外見や人間関係の変化など、多岐にわたります。「今の医療システムではケアしきれないのなら、病院以外でのサービスが必要ではないか」と考えた久保さんは、まずは患者同士で情報交換ができるコミュニティづくりをスタート。2022年4月に闘病サポートコミュニティ「Re:live(リリブ)」を立ち上げます。


また、入院中にお見舞いに訪れたエンジニアの友人に「がん患者の心理的・社会的課題を解決できるようなアプリがほしい」と話したことがきっかけで、「じゃあ一緒に作ろう」とアプリ開発への挑戦が始まります。そんなときに出会ったのが、COM-PJでした。

「エンジニアの友人と『プロトタイプを作って仮説検証をしないとね』『自分たちだけで進めるよりも、アクセラに参加したほうが絶対に早いよね』と話していた頃、たまたま参加したピッチコンテストの後の交流会で、『君たちのやろうとしていることならtalikiさんが合うと思うよ』と教えてもらったんです」

こうしてtalikiやCOM-PJの存在を知った久保さんは、その年に開催されるCOM-PJ第4期に参加することにしました。

 

深い対話を通して、事業をさらに一歩前へ

久保さんは、COM-PJの前年にはオーストラリアで開催されたプログラムに参加し、COM-PJと同時期には別のアクセラレータープログラムにも挑戦していたそうです。他のプログラムと比べて、COM-PJが特に良かった点はどんなところだったのでしょうか。

「担当のメンターが付いて伴走してくださることが、すごく大きな支えになりました。他のプログラムにもメンター制度はありましたが、特に自分の担当というわけではなく、進捗報告などの細かいやり取りはなかったので。COM-PJでは基本的にオフラインでメンタリングをしていただけて、すごく密にコミュニケーションを取れたのが良かったですね」

メンターとの対話を通して、「本質的なところまで深く考える癖が付いた」と久保さんは振り返ります。

「例えば、COM-PJに参加する前もヒアリングはしていましたが、ただなんとなくやっていただけというか……本質をちゃんと見ていなかったと思うんです。『ヒアリングをして何を確かめたいの?』『検証してどういう結果があれば、確からしいとわかるの?』と深く掘り下げてメンターと対話することで、さらに一歩先へ進めたと感じています」

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久保さんのメンターを担当したKRPの井上雅登さん(右)。「井上さんはがん患者の家族という立場も経験されていたので、当事者として同じ目線で話すことができました」と久保さん


さらに、COM-PJの特長として、久保さんは「参加者同士の交流ができるちょうど良い規模感」を挙げます。

「4期生は10数人で、全員がお互いにコミットできる距離感でした。一緒にプレゼンの練習をしたり、ヒアリングの対象者を紹介し合ったりして、切磋琢磨しながら成長していけたと思います。今でもときどき集まって飲みに行きますよ」

また、COM-PJは3ヶ月という短期間で集中して行うプログラムだからこそ、スピード感のある事業づくりの初動につながったと言います。

「短期間でブラッシュアップできるのも、COM-PJの魅力です。10月の最終発表というゴールが決まっていたので、目標に向かって一丸となり、チームの成長にもつながりましたね。短期集中の濃いプログラムだからこそ、参加者も熱量が高く、やる気も体力もある人たちが集まっていると感じました」

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メンターの井上さんは、「久保さんは本当にまっすぐに育っていった感じがする。特に、いろんな人の力を借りられる素直さが、すごくいいなと思った」と当時を振り返ります。例えば、メンタリングの場にチームのエンジニア2名も一緒に参加し、井上さんと1on3を行ったこともあったのだとか。井上さんの話を聞いて、久保さんは「そんなこともありましたね」と楽しそうに笑います。

「チーム内の意思統一がしきれていなくて、コミュニケーションに困っているんですよねって、井上さんに相談したんです。井上さんと同じようなメンタリングが私にもできるなんて一切思わないので、自分が持っていないスキルは他の人の力を頼るしかないじゃないですか(笑)。チームのメンバーにも井上さんのメンタリングを受けてもらって、思考の整理や成長のきっかけにしてほしいなと思いました」

ちなみに、チームメンバーも一緒にメンタリングをするのは珍しいケースですが、これまでのCOM-PJでは、2期目でCEOが参加し、4期目に同じ企業のCOOが新規事業立ち上げのために参加するなど、チームメンバーが継続的に関わっていくケースが増えつつあるそうです。

 

海外展開も見据え、着実に歩みを進めていく

久保さんがこれまで準備を進めてきた、闘病者・家族のサポートプラットフォーム「CureMind」は、2024年秋にローンチ予定。現在は、サービス内容のブラッシュアップや法律面の対応といった、大詰めの作業に取り組んでいます。

「CureMind」のコア機能は、医療従事者や社労士といった専門家や、がんサバイバーなど、患者が相談したい相手にマッチングできるサービス。さらにサブ機能として、服薬や副作用を記録・管理できるサービスもあります。服薬だけでなく体調やメンタルも記録でき、自身の振り返りや医療者とのコミュニケーションの円滑化、医師の問診時間の短縮にもつながります。

「患者さんにヒアリングをしていく中で、『マッチング機能だけでなく、服薬や体調の管理もしたい』という声をいただいたので、サブ機能として追加しました。お話を聞いてみると、医療者とのコミュニケーションに問題を抱えている人が多くて。私自身もそうだったんですけど、医師と一対一で話すとき、緊張して伝えたいことをうまく伝えられなかったりするので、そこもサポートできればと思いました」

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さらに、地域のがんコミュニティやがん専門美容室といったケアサポートにつなげる機能も、順次追加していく予定です。

「自分に必要な情報を探すのは、時間や労力といったコストがかかってすごく大変なんです。だから、CureMindを使ってもらったら全部の課題を解決できるよっていう、トータルサポートができるプラットフォームにしたいと思っています」

他にも久保さんは、CureMindのプラットフォームとしてのさまざまな存在価値を見出しています。例えば、患者としてCureMindを利用した人が、将来は自分の経験を生かしてピアサポーターとしても活動できるなど、闘病生活の出口にもなればと考えているそうです。また、ここに集約した匿名化したデータは、研究機関や製薬会社に活用してもらい、医薬の発展にも寄与していけたらと話します。

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ローンチ後は、数ヶ月の検証期間を経て、次はネイティブアプリを開発するための資金調達を目指したいと語る久保さん。その視線は、さらに先の展開をも見据えています。

「今取り組んでいる課題は、日本だけのものではないので、将来は海外展開もしていきたいと考えています。一度ベースのモデルを作ってしまえば、他の病気でも対応できるはずなので、サービスが足りていない他の慢性疾患でも展開したいです。そしていずれは、私と同じようにビジネスの経験がなくても思いが強くて起業したいと考えている人たちを、エンパワーメントできるような存在になれるといいですね」


最後に、これからCOM-PJに参加したい人へのメッセージを、とお願いすると「しんどいこと、困っていることがあれば、いつでも連絡ください!今までいろんな人にGIVEしてもらったので、私も返していきたいなって思っています」とニコニコと朗らかに答えてくれました。今後はCOM-PJのアルムナイ合宿への参加も予定している久保さん。この先もますます後輩たちを力強くエンパワーする存在になっていくことでしょう。


執筆:藤原 朋
撮影:中田 絢子
編集:北川 由依

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株式会社MiaLuce・久保とくみ

大阪医科薬科大学卒業後、看護師として勤務。
2021年に悪性リンパ腫にかかり、同時に母もがんになり、医療従事者、患者本人、患者の家族を経験。
闘病中は孤独、正しい情報が見つからない、同じ疾患のロールモデルが見つからず未来が想像できない不安、仕事と治療の課題、死に対する恐怖、社会的役割がない無力感が重なり抑うつ状態に陥ることを痛感。このままでは未来のがん患者も同じ辛い経験をしてしまう、と闘病中にがんオンラインサポートのサービスアイデアを着想。
Re:live 闘病サポートコミュニティを母体とし、リアルな原体験から 日本初!がん患者・家族の課題を解決するがん闘病サポートプラットフォーム"CureMind"を開発中。アプリ上では、情報コラム、がん患者を闘病アドバイザーや医療、社労士、キャリアの専門家やケア用品を含むサポート資源と結びつけることでがん患者をサポートし、 日々の服薬や副作用の記録、メンタルや体調の記録をアプリ上で行い、患者の闘病生活の管理と医療者とのコミュニケーションの円滑化、診察の効率化を図ることを目指す。

集約したデータを製薬会社・研究機関に活用していただき 患者中心のヘルスケアイノベーションを興し、医薬の発展に寄与するプラットフォームモデル。連携する医療機関・企業・研究機関・がん患者会様を募集中!https://mialuce.amebaownd.com/

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