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特集

2018/06/27

【株式会社メガカリオン】輸血医療「第2のイノベーション」

iPS細胞由来の安全な血小板製剤を作製する技術を確立し、医療現場が100年以上待ち望んだ献血に頼らない血小板の安定供給の実現を目指す技術ベンチャー、メガカリオン。iPS細胞を利用した事業の意義と課題、そして展望について、代表取締役社長の三輪玄二郎氏に伺った。

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(株)メガカリオン 三輪 玄二郎 氏

アメリカでの経験がメガカリオン立ち上げの動機に

 ハーバード大学のビジネススクールに留学していたのですが、そのときの恩師に誘われて、人の皮膚を培養して火傷の治療に使う技術を実用化しようというプロジェクトに、創業メンバーとして入ったのが医療分野に関わったきっかけでした。もともと医療分野の人間ではありませんし、医療ベンチャーに関わったのは本当に偶然でした。
 そのプロジェクトでは、ベンチャー立ち上げのサポートをしました。たとえば、ハーバードのメディカルスクールで発明された技術を事業化するためのビジネスプランや資金調達については、ビジネススクールのメンバーと一緒に私も手伝いました。契約関係、特許関係の整理はロースクールが、そして再生医療に絡んでくる倫理問題は神学部の教授が担当するという、まさしくオールアカデミアで大学発のシーズを事業化していきました。シーズを立ち上げて事業化することの面白さを30代の頃に経験し、これを日本でもやってみたいと思ったことが、メガカリオンを立ち上げた非常に大きな動機の1つです。

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iPS細胞由来の血小板製剤

インパクトとポテンシャルの大きさに価値と意義を見出す

 iPS細胞由来の血小板作製は、東京大学の中内啓光教授と京都大学の江藤浩之教授の研究成果により開発された技術です。私と中内先生は麻布高校の同級生で、同窓会で再会した折に、非常にユニークな再生医療のシーズがあって事業化したいけれど、自分たち研究者では皆目見当がつかない。君も一肌脱ぎなさいと、彼に説得されました。もちろん私は科学者ではないので技術のところは分かりませんが、これが実現すれば100年間変わらなかった輸血のシステムを変えられる、というインパクト、そしてポテンシャルの大きさはひしひしと感じました。これは、やってみる価値があると。

iPS細胞関連の総本山「京都」に立地する理由

 今まで多種多様な起業に携わってきましたが、分野に関わらず、事業化する手法には共通するものがあります。人・モノ・金の3つです。メガカリオンの場合、モノ、つまり技術は山中先生や中内先生というトップサイエンティストの方がされていて、保証できる。資金については、投資家を説得するという苦労はすでにアメリカで経験済み。私にとって1番難しかったのは「人」です。人を集めて組織を作る、回す、というところの経験は初めてだったものですから。

 ただ、スポーツのチームでも同じですが、すごいプレーヤーがいるチームには、彼と一緒にプレーしたい、優れた技術を学びたいと、良い選手が集まってくる。それと同じで、トップサイエンティストがいらっしゃるところには、優れた企業や人材が集まってくるものです。山中先生がいらっしゃる京都は、iPS細胞を使った事業、臨床応用の総本山といえます。メガカリオンが京都にオフィス・ラボを構えている理由もそこにあって、京都という旗印の下に集まった、光る技術をもった企業や人材と前例のないiPS細胞由来の血小板製剤の実用化に向けて取り組んでいます。

京都発のコンソーシアムスタイルを日本型モデルに

 医療のインフラである輸血用の血小板。それに代わるiPS細胞由来の血小板製剤は、利用される範囲というのが非常に大きい。きちんと供給されないと医療の世界が回らない。しかも全世界で使われるものです。これはベンチャーだけではできない、パートナーが必要だと初めから分かっていました。その考えが、アメリカの経験をいかしたコンソーシアムの形成につながっています。血小板製剤に限らず、サイエンスを実用化する際には、大量に、安定的に、さらにコストも抑えながら作らなければなりません。しかし、サイエンスとビジネスをつなぐトランスレーションの部分というのはそんなに簡単な話ではなく、実用化する上での最大のハードルになります。コンソーシアムという形で進めているのは、そこに橋を架けるのが目的です。日本初のiPS細胞を用いた革新的な再生医療技術を、日本企業とのコンソーシアムで事業化する。このメガカリオンのモデルが上手くいけば、同じような形で、ベンチャーと大企業、既存の企業とがタッグを組んで、あるいはチームを作ってという、日本型モデルになる可能性があるのではないでしょうか。

スタートアップにとっての情報のハブ機能をKRPに

 メガカリオン式モデルは、ベンチャーと既存の企業がお互いに手を組んで、良い意味で利用し合って力を発揮できるというものです。そのための情報のハブといった機能を、KRPさんに提供していただけるとありがたいですね。そういうファンクションというのは、スタートアップには非常に役立ちますから。

三輪玄二郎氏

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京都リサーチパーク(株) 代表取締役社長 小川と(株)メガカリオン 代表取締役社長 三輪玄二郎氏

東京大学経済学部卒業後、三菱油化(現 三菱ケミカル)に勤務。
ハーバード・ビジネス・スクールMBA 修了後、Bain & Companyに勤務、BioSurface Technology(現 Sanofiの一部門)共同創業者、iCELL共同創業者代表取締役(現任)を経て、メガカリオンを創業し代表取締役社長に就任。
Forbes Japanの「日本の起業家ランキング2018」で1 位に選出。

企業情報

KRP2号館、KRP6号館、KISTIC

株式会社メガカリオン
代表取締役社長 三輪玄二郎氏
U R L:http://www.megakaryon.com/