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2019/01/08

KRPPRESS特集:ものづくりは人づくり① 「多様な人と文化と情報で、京都をものづくりの都に!」

ものづくり企業の"人づくり"とは

 労働人口の減少、高度な技を持つ職人たちの高齢化、そして後継者不足...。ものづくりに携わる中小企業において、人材確保、人材育成は急を要する課題となっている。

 多くの中小企業が存在する京都、その下請け構造が変化するなか、中小ものづくり企業の発展のため設立された(一社)京都試作ネット(以下、京都試作ネット)。その現代表理事である鈴木滋朗氏と前代表理事の竹田正俊氏、そして2017年9月にものづくりのコミュニティの場「Kyoto Makers Garage」をオープンされた牧野成将氏の3 名に、京都の地域に根差した中小ものづくり企業の人づくりの現状と未来について語っていただいた。

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「働く」ことに対してどう考えるか若い世代に変化が見られる

竹田 ものづくりに限らず中小企業が直面する課題に、人材不足があります。採用したくても人が来ない。当社も以前はそうでした。立ち上げて17年ですが、現在、50代の社員はいません。20代~40代までの若いメンバーばかりです。きっかけとなったのは、社屋を新しくしたことでした。

牧野 どういうことですか。

竹田 採用活動で学生と面談する中で、初任給や仕事の内容よりも、自分の会社人生の場となる職場環境に重きを置いている印象があったのです。実際、アポを取って会社を訪れても、昔の倉庫のような社屋を見るなり帰っ てしまう学生もいました。そこで環境を整える一環として社屋を新しくした。すると、それまでゼロだった応募が3桁になるぐらい劇的に変化したのです。誇れる事業内容があっても、環境でこれほど左右されるのだということを身をもって体験しました。

鈴木 弊社は隔年で新卒採用をしていますが、給与とか休日といった条件面を重視する学生と、価値観を重視してビジョンなどについて質問してくる学生に、二極化しているように思い ます。自分たちが働くということを、より鮮明に考えている世代なのかもしれません。竹田さんがおっしゃった「環境」につながるかと思いますが、会社の価値観とビジネスに共感できる人を、我々としても採用したいですね。

牧野 なるほど。価値観、ビジョンへの共感ということですね。私たちの会社はまだ若く、「京都をものづくりベンチャーの都にしたい」という思いのもとにたくさんの方が集まり、応援していただいています。正社員や業務委託など、働き方もさまざまです。

採用人材の多様化を考える労働人口は本当に減っているのか?

牧野 私たちのところでは、外国人を多く採用しています。3分の1くらいが外国人。京都は非常に外国人が多い地域で、海外でも、京都なら住んでみたい、働いてみたいという声は多いですね。また、女性のメンバーが多いのもうちの特徴。男性社員を採れないのであれば、外国人や女性をもう少し吸引していくというのも一つの方法ではないでしょうか。

竹田 まさにそのとおりで、ここ2年で我が社が採用した社員の7割が女性です。そもそも最終面接まで残るのが、女性のほうが多い。 面談してみると、仕事を内容ではなく「意義」で選んでいるというのを、女性のほうに強く感じます。外国人も、そう。京都にはたくさんの留学生がいますが、働くところがないと思っている人が多い。京都の中小企業で、ものづくりをしているところ、働けるところがこんなにあるということを、我々のほうからアピールしていかないと。優秀で、前向きで、「意義」への共感をしてくれるのであれば、国籍・性別問わず採用したいという会社は多いと思いますね。

鈴木 弊社でも、エントリーしてくる女性は年々増えています。しかもエンジニア希望が多い。もう、ビジネスの場で男性女性と切り分けるのはやめる時期なのでしょうね。企業は、歴史が長くなるとイノベーションが起きにくくなる。大切なのは歴史の長短や経験値の大小ではなく、変化する力。そのためには今、価値観を変えて変化していくタイミングなのかもしれません。

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KMG内で製作作業中の留学生

理念やビジョンを共有するそして、同じ景色をつくり出す

竹田 社員に理念やビジョンを浸透させるには、泥臭く、同じことを言い続けるしかありません。創業以来ずっと、毎週月曜日の朝に30分、理念やミッションにかかわる話を続けていますが、それはまるで、砂漠に水をまくようなもの。ほとんどが蒸発して、何も変化がないように見える。でも、まき続けると、いつかオアシスが現れる。地中に少しずつしみ込んでいた水がオアシスを生み出すのです。だから、リーダーは自信を持って語り続けなければならない。10年ちょっと経った頃、少しずつわかってきてくれたかな、と思うようになりました。もっと早い方法があるなら教えてほしい(笑)

鈴木 竹田さんからは対話をしろとよく言われますね。コミュニケーションは質より量。質を求めるより量を確保しろと。コミュニケーションを図りながら、会社が目指す景色と社員が見たい景色が同じになるよう、共感性を重要視しています。そのために社員がリクエストする教育、勉強の場は、どんどん提供していきたい。自発的に学びたいと思う、そういう機会をつくるのがトップの仕事であり、人材育成の根本をなすものかなと思います。

牧野 私たちのところは、まだ、自分たちが悩み、学びながら試行錯誤している状況。ただ、価値観の共有というのはすごく大事にしようと思っていて、全体合宿をするなどして、価値 観をイメージ化したり、何度も言葉にするようにしています。方向性が見えづらくならないよう、とにかく何度も何度も伝えていこうと思います。

竹田 「成果は組織の外にある」ということも社員に話しています。お客様に評価されてこその成果であり、誇り高い仕事の証し。社内で完結するのではなく、外に成果を求める。そうすることで、モチベーションの向上につながります。

KMGに対して感じた異質性つまりは多様性の宝庫ということ

牧野 京都試作ネットの方と接して思ったのは、本当にものづくりが好きな人が多いこと。そういった方々がもっと気軽にものづくりできるような環境、拠点となる場所を提供したいと いうのが、KMG(Kyoto Makers Garage)の考え。イベントには京都試作ネットの方だけでなく学生や社会人の方も参加して、試作できる環境を提供しています。

鈴木 京都試作ネットには、京都をものづくりの集積地にしたいというビジョンがあります。京都をさらに成長、発展させていくための仕掛けづくりですね。KMGもその一環です。ただ、 見たことがない景色を醸し出すKMGに対して、最初は異質を感じていました。でも、そこには京都試作ネットでは集まらない人や情報が集まる。そのパワーとコラボすることで、私たちが 目指す「協創」試作をさらに進めることができる。根底にある思いが同じだと知り、見ている景色は異質でも何でもなく、同じなのだと気づきました。

牧野 京都で、試作というものを軸に新しいビジネスモデルが生まれて、新しい産業の創出につながれば素晴らしいし、KMGとしてもそこにチャレンジしたいと思っています。そもそも、京都試作ネットがなければKMGはスタートしていませんでした。それくらいKMGにとって京都試作ネットは大切なパートナーであり、欠かせない要素。そして京都の財産でもあると思っています。京都のものづくりを担う人たちと、新しい何かを「協創」していけることを期待したいですね。


IMG_1928.jpg京都中央市場近くのビルを改装したKMGの外観

冒頭写真は左から(株)最上インクス 代表取締役 鈴木滋朗氏、(株)Darma Tech Labs 代表取締役 牧野成将氏、(株)クロスエフェクト 代表取締役 竹田正俊氏

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