2024/07/05

つくばの環境とオリエンタル技研工業のネットワークを活かす!スタートアップ&新規事業に特化したレンタルラボ X/S(イクシーズ) Worksite

茨城県つくば市のテクノパーク豊里工業団地に、この春レンタルラボがオープンした。運営しているのは、実験設備やラボ改修などで知られるオリエンタル技研工業株式会社(東京都千代田区)。自社の施設をフルリノベーションしたインキュベーションセンター「X/S(イクシーズ)Worksite」は、スタートアップや新規事業に特化している。レンタルラボ11室、シェアラボ1室のほか共通機器室やBBQテラスなどを備え付けたユニークな施設となっている。

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目次

  • 創業の地で求められるレンタルラボとは
  • スタートアップ&新規事業に特化したラボ。こだわりのコンセプト
  • 実験設備メーカーならではのサポート体制とネットワーク活用
  • コラボレーションはコミュニケーションから

創業の地で求められるレンタルラボとは

オリエンタル技研工業株式会社(以後、同社)は、研究環境や実験設備の製造からラボの設計・施工まで行うメーカー。化学・製薬系、食品・化粧品メーカーやアカデミアなど、幅広い業界の研究施設の施工で知られている。また、研究空間のデザインにも力を入れている企業だ。同社のグループ企業には、研究施設専門の一級建築士事務所であるプラナス株式会社もある。
今回のラボは、同社の設計・施工という業績を活かし、さらに発展させた形とも言えるだろう。

同社は1978年に創業し、このラボの建物は1988年に工場として建設された。実験台などの設備の生産や検査を行い、のちにショールームを併設。2020年、ショールーム機能を東京に移転した後も、この施設は倉庫として使われていた。

「創業以来お世話になっているつくばの地で、もっとサイエンスに貢献することができないだろうかと考え、ここをインキュベーションセンターにコンバージョンする企画が始まったのです。そして20244月オープンすることができました」と話すのは、オリエンタル技研工業株式会社執行役員で経営戦略室長・インキュベーション事業部長の柄澤建之介さん。このインキュベーション企画の発起人でもある。

つくば市は、日本で最も研究機関が集まっているエリアだが、スタートアップの受け皿としての「レンタルラボ」が足りないという問題を抱えていた。同社はこの施設を計画するにあたり、つくば市や茨城県、また近隣のスタートアップに「どんな課題を抱えているか?」などのヒアリングを行った。
そこからわかったことは、近隣のラボが常に満床で、入居条件に合わないベンチャーたちはラボを探し回っている状態だということ。
「そのような状況を知り、受け皿が必要だと感じました」と柄澤さん。
スタートアップは、金銭的にも人的リソースも限られているので、ラボを一から構築するのは非常にハードルが高い。
そこで、スタートアップの負担を軽減できるラボを目指した。

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X/S(イクシーズ)Worksite」の企画を立ち上げたオリエンタル技研工業株式会社の柄澤建之介さん

スタートアップ&新規事業に特化したラボ。こだわりのコンセプト

最寄り駅は、つくばエクスプレスの「研究学園駅」。現地までは車での移動が必要で、アクセス面では少々不便に思うかもしれない。
「私たちは、もともとここに拠点を構えていたので、ここからつくばの科学技術を一緒に支援したいという思いがあります」(柄澤さん)

「手ぶらでサイエンス、時々BBQ」というユニークな施設コンセプトは、課題解決を意識して設定したもの。
「当然、手ぶらでは無理ですが、手ぶらに近い感覚で研究を開始できるような環境を構築しよう、という私たちの思いが込められています。可能な限り、必要な実験設備を備え付けた状態でリースする形にしました」と柄澤さん。
レンタルラボ全室に、実験台と流し台を設置した状態で貸し出す。これは研究設備メーカーである同社だからこそ出来たとも言えよう。

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実験台・流し台が設置済のレンタルラボはかなり魅力的。

「時々BBQ」というのは、つくばの緑豊かな環境を活かして、BBQスペースがあったらコミュニケーションやネットワーキングにも利用できるかもしれない。サイエンスとバーベキューを一緒に楽しむ施設にできないだろうか? というところから着想したもの。
実際、施設の庭にはBBQスペースがあり、ピザ窯も設置されている。都会では味わえないラボの空間を感じる。

さらに柄澤さんは「人、技術、資本をここに集めてクロスさせることで、新しいイノベーションを育んでいく。私たちは、研究設備メーカーとして研究環境をつくるノウハウがあります。それに加えて、これまでの仕事での企業・大学のサイエンスコミュニティとのネットワークを、入居者につないで、資本提携や共同開発など、スタートアップを伴走型で支援するというコンセプトでスタートしました」と思いを語る。

実験台や流し台、さらに電源があらかじめ設置してあることで、最小限の初期投資で研究開発をスタートできる仕組みを構築。スタートアップや新規事業の研究者に優しいレンタルラボだといえる。
現時点の入居者の研究テーマは、食品関連やマテリアル系・ナノマテリアル系など。20244月にオープンした施設が、6月時点でラボ11室のうち、すでに約7割(面積換算)が入居済だということを見ると、研究者にとって非常に魅力的な施設だと思われる。
施設の中は、廊下や共用スペースにアート作品を置いたり、照明にも凝ったりと、同社の専門性や空間デザインへのこだわりが見られる。

さらに注目するのは、共通実験機器室が設置されていること。レンタルラボでこのような設備があるのは珍しい。至れり尽くせりのラボ設計だといえる。また、シェアラボも間もなく本格稼働するとのこと。

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間もなく本格稼働するシェアラボ(1室)

実験設備メーカーならではのサポート体制とネットワーク活用

「計画段階からPRを始めて、お客様の声を聞きながら進めてきました」と柄澤さん。
当初から対話をしていたお客様に関しては、お客様のニーズを反映した形のラボになっているとのこと。また、これから入るお客様の場合も「もうちょっと●●したい」という要望には柔軟に対応する模様。

「私たちは研究設備メーカーなので、研究環境をサポートする部隊としてEHS(エンバイロンメント・ヘルス・セーフティ)部門という部署があります。他にもお客様のサポートや研究設備のメンテナンスをするチームもあり、入居者様が負荷を感じずに安全に研究できる体制を作っています」と柄澤さんは語る。

つくば市は2022年「スーパーシティ型国家戦略特別区域」に指定され、新たな技術、サービスの社会実装を積極的に支援する体制が進んでいる。
同社もつくば市が運営するコンソーシアムなどに参画して、ベンチャーを包括的に支援する。また、サイエンスコミュニティや筑波大学の産学連携など、地元のネットワークを活用していくつもりだという。
さらに柄澤さんは「多様な産業と一緒に成長していく視点です。この施設の一部にはつくば産の木材を使い、オープニングイベントでは、つくばのブルワリーやお肉屋さんが参加してくれました。今後もつくばの魅力を発信しつつ、一緒にサイエンスコミュニティを盛り上げていきたいです」と語った。

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BBQエリア。4月には地元のブルワリーや精肉店も参加してオープニングBBQイベントが開催された。

コラボレーションはコミュニケーションから

4月のオープニングBBQイベントでは、業界の方と入居者様とのマッチングにより、すでに新たなコラボ話も始まっているとか。
BBQや各種イベントなどの機会があれば、新しいコラボレーションを生み出すきっかけにもなるだろう。
外部の企業や業界とのマッチングだけでなく、研究者同士のコラボレーションにも期待しているという。
「今後、コラボのしくみ作りを課題にしていこうと思っています」(柄澤さん)

この施設を計画する上で非常に重要視していたのが「コミュニケーションを取ること」だという。
「人が出会いやすいような導線づくりを考えています」(柄澤さん)
もともとあった建物をリノベーションしたので、出来ることがかなり制限されているが、その中で「人が集まりやすい場所づくり」がポイントだと話す。

「私たちはもともとつくばでやっていたから、そしてクライアントのネットワークがあったから・・・。これまでのお仕事をしてきたベースが無かったら、なかなかこういうスタートの切り方はできなかったかもしれません」と、柄澤さんはこれまでのコミュニケーションやネットワークの大切さを語った。

柄澤さんから、これから入居したいという研究者たちにひとこと。
「入居者さん同士と、外部の人たちといろいろつながりをもって、新しいイノベーションにチャレンジできる空間・環境づくりを展開していきたいです。そういう思いを持った方にぜひお越しいただきたいと思います。私たちも全力でサポートいたします。一緒に、この施設とともに成長していけると良いなと思います」

つくばから生まれる新たな研究者たちに期待が膨らむ。

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