2022/09/05

CYBERDYNEがサイバニクス産業創出のためのウェットラボ施設をキングスカイフロントに開設 「サイバニクス医療イノベーションベースA棟」

装着型サイボーグHAL®の開発で知られるCYBERDYNE株式会社が、川崎市殿町地区の国際戦略拠点キングスカイフロントに、サイバニクス産業創出に向けた医療・バイオ系企業とのコラボレーションをコンセプトにしたレンタルラボ「サイバニクス医療イノベーションベースA棟」を開設しました。このラボについて、同社の代表取締役社長兼CEO山海嘉之様にお話を伺いました。
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 目 次

  • スタートアップ企業との協業も視野に入れるレンタルラボ
  • サイバーダインのさまざまな技術も活用できる。新たな連携イベントにも期待
  • 24時間体制の医療イノベーションに最適の環境
  • 再生医療系・製薬系との協業から未来の医療へ「ぜひご一緒に!」


スタートアップ企業との協業も視野に入れるレンタルラボ

――まず、山海社長が今回「サイバニクス医療イノベーションベースA棟」(以下施設)を開設されたねらいとは?

山海社長:人の脳神経・筋系の機能改善・機能再生のためには、世界初の装着型サイボーグHAL®による「サイバニクス治療」が標準治療となりつつありますが、重度の患者さんの場合には細胞レベルや細胞生成物質レベルでの技術投入も効果的だと考えています。そういったことも含めて、サイバニクス治療を体系化できればと思っています。
そこで、当社の新世代ロボット化バイオリアクターの技術、医療・バイオ系とA I・ロボット・情報系の融合技術などの展開に加え、当社の事業開拓の方向性と合致する企業や、当社と協業できるスタートアップ企業などに入居してもらい、関わる企業に喜んでいただけるような協業シナジーで事業推進に取り組むというねらいから、この「サイバニクス医療イノベーションベースA棟」を開設しました。私の研究室ではこれまで様々な細胞・組織培養などに取り組んできましたので、こうしたチャレンジャーに対しても良いフィードバックができると思っています。

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山海嘉之代表取締役社長兼CEO

サイバーダインのさまざまな技術も活用できる。新たな連携イベントにも期待

――施設の設備面の特徴について、特にサイバニクスらしいところはどういうところでしょうか?

山海社長:協業シナジーをもって協働する方々に対して、この施設内では、当社のロボット化バイオリアクターや、当社の技術者の技能分析技術、最新のロボット技術や情報収集・集積・AI解析技術が、個別案件としてアレンジして適宜活用できるというところですね。
また、弊社の技術を活用し、24時間体制でロボットが清掃・搬送・見守りなどを行うのも特徴のひとつです。

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サイバニクス医療イノベーションベースA棟のラボ内部(一例)

※ 全フロアがウェットラボ仕様

給排水 ○(排水は生活排水・特殊排水の2系統)
排気ダクト ○(メカニカルバルコニーより屋上へ立上げ)
ガス
CPC室
RI実験室 可(要相談)
遺伝子組み換え実験 P2以下(応相談)
バイオセーフティレベル BSL2以下(応相談)

――入居企業のビジネスの成長などを期待したプログラムや、イベントなどについて教えてください。

山海社長:協業シナジーが最高に発揮できるようにビジネス的な観点からサポートしていきます。当社からの技術等のアドバイスや当社グループとの事業連携、当社及びCEJファンド(当社のCVCファンド)による資金供給などによる事業支援を提供します。イベントとしては、「サイバニクスEXPO」を定期的に開催して、日常的に新しい連携の機会を提供します。これは出資会社の人たちや大手企業の社長などを招き、新しく加わって出資してほしい人たち、さらにチャレンジャーを集めて太いシナジーが生まれるようなことをしていくものです。


24時間体制の医療イノベーションに最適の環境

――多摩川スカイブリッジも開通し、対岸には羽田イノベーションシティが開設されるなど、注目が集まるキングスカイフロントに施設を設けられましたが、キングスカイフロントについて、どのように見ておられますか?

山海社長:位置づけとして見たときに、羽田空港に到着してあの橋を渡ってすぐラボに到着できるというのはものすごいメリットです。この施設の4階では24時間体制で治験も可能です。サッと来てサッと帰ることもできるので、時差のある国から日本に来て、時差ボケしないで帰ることが可能。そのように24時間体制の医療イノベーションを進める場になれる、というポテンシャルを持つ場所だと思っています。

何もかも東京一極集中だと揶揄(やゆ)されていますが、多摩川スカイブリッジという橋によって川崎市がその恩恵を享受する環境が実現したと思います。

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山海社長・教授の研究室で実現された細胞培養・組織形成の事例

――国や行政の方へご意見などがあればお聞かせください。

山海社長:今回、私がキングスカイフロントでがんばろうと思った理由は、神奈川県の方が非常に熱い思いを持って動いていると感じたからです。
川崎市を含めた神奈川県は、政令都市がそれなりに連携していて、対立関係よりも連携関係の方が良く見えました。こういう県があるなら日本もまだまだ捨てたものではない、と感じます。


再生医療系・製薬系との協業から未来の医療へ「ぜひご一緒に!」

――御社の装着型サイボーグHAL®がもたらす未来について、またその中でこの施設が果たす役割などについてお聞かせください。

山海社長:まず、薬との組み合わせ・再生医療との組み合わせでHAL®をフル活用していきます。そのためにはバイオ系の研究成果や製薬系の取り組みも伸ばしていきます。そしてそのシナジー効果で、HALとのセットで新しい複合医療を確立させていきます。
再生医療だけ・薬だけで生きていくことは大変でしょうが、HALと一体化させることによって世界のどこの国も追いついて来られない事ができるでしょうね。

少なくともHAL®は治験や地域の病院・地域の医療センターなどと連携して、地域全体の取り組みにつながれば、と考えています。

そして、「サイバニクス・クラウド」というものが動き始めます。これは、病院の中で使う技術や家庭で使う技術、非医療用の世界など全てをシームレスに作り、働くところや生活全部をセンシング技術でつなぎながら、患者さんが日常でどのような状況になっているかをデータサイエンスとして分析するものです。さらに、日常の予防や退院した後の予後、働く場所、高齢で施設にいる人たち、これらを全部つないで、生活環境そのものを整えていく技術なのです。こういうことが、この施設を含めた取り組みから将来実現できると思っています。

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対岸の羽田空港へは多摩川スカイブリッジを通ってダイレクトアクセスが可能

――最後に、入居を検討している企業・研究者様へメッセージがあればお願いします。

山海社長:ぜひ、未来開拓をご一緒に! チャレンジしていくために必要なさまざまなサポートもセットです。たとえば高い装置を買わなくても、うちの装置を使ってもらったら良いですから。その分、事業を加速させたり、他と差別化できるところに力を入れたりして欲しいと思っています。

――山海社長、本日はどうもありがとうございました。山海社長の情熱を感じるレンタルラボでした。