2020/12/08

外部資金、賞を数多く獲得するスタートアップが誕生。大阪大学産業科学研究所 企業リサーチパーク

大阪大学産業科学研究所 企業リサーチパーク(以下、企業リサーチパーク)は、同大学内に位置しながら、学外の企業も利用できるオープンなインキュベーション施設。外部資金、賞を数多く獲得する注目のスタートアップも、この場所から誕生しています。

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目 次

●最新設備が揃うオンキャンパス型のインキュベーション施設

●「産業のための科学」を支えつづけて80年以上!

●「戦略室」が入居企業を強力にサポート

●マッチングを乗り越えれば、可能性は無限大

 

最新設備が揃うオンキャンパス型のインキュベーション施設

大阪大学産業科学研究所のインキュベーション施設として、2009年から運用されているのがここ「企業リサーチパーク」。1~4階のフロアには、クリーンルームも備えたドライ&ウェットラボ、居室仕様の研究室のほか、共同で利用できるカンファレンスルームやリフレッシュスペースも用意されています。

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ウェット系ラボ(ドライ系との違いは、水道の給排水・ガスは床面ボックス内に収納されていることです。ドライ系は壁面取付です)

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ドライ&ウェットラボの活用例

また、実験・解析装置の充実も特筆もの。国立大学のオンキャンパス型らしく、核磁気共鳴装置、質量分析装置、透過電子顕微鏡など最新機器の利用が可能。さらに量子ビーム科学研究施設では、極超短時間領域での化学反応初期過程の研究、短パルス電子ビームにより誘起される2次ビームによる時空間材料解析なども施設の共同利用により可能です。

※実験・解析装置は原則有償利用です。

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ラボに展開される実験室・解析装置の事例(フレキシブル3D実装協働研究所)

「産業のための科学」を支えつづけて80年以上!

産学連携の重要な拠点として、オープン以来数々の事業創発を支えてきた企業リサーチパーク。現在でも平均して20社以上、大企業から中小企業まで、幅広い分野の企業が利用しています。

実は、母体である大阪大学は産学連携のトップランナー。2018年度には企業との共同研究費で、全国1位になりました。そもそもどうして大阪大学は、企業との連携に力を入れているのでしょう?

「大阪大学、特に産業科学研究所ではその名にある通り『産業のための科学』という考え方が、その発足当初から伝統的に今日まで根付いています」

そう語るのは、産業科学研究所戦略室に所属し、産学連携のコーディネーターも務める加藤久明特任准教授です。

「当研究所は、産業のための科学を研究する機関を大阪に設置したい、という関西財界の強い要望によって1939年に設立されました。今から80年以上も前、まだ大阪帝国大学時代のことです。それ以来、当研究所では常に、産業と大学研究発の技術を結びつけ、社会のためにどのように役立たせ、発展させていくかを模索しながら運用してきました」

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加藤久明特任准教授

「戦略室」が入居企業を強力にサポート

産業と科学を結ぶ。現在、その使命を強く担っているのが、加藤特任准教授が籍を置く「戦略室」(旧名称:「産学連携室」)です。

「企業と当研究所教員とのマッチングはもちろん、入居者間の交流の促進、各種申請のお手伝い、外部資金獲得のサポートなど、幅広い業務で皆さまをバックアップしています。いわば、『産学連携のよろず屋』ですね」

加藤特任准教授がそう言って笑うように、業務内容は多岐に渡ります。たとえば、大学シーズを活用して生まれた日本酒開発プロジェクトでは、共同研究の成果として開発された販路開拓を大学本部組織と連携をして販路開拓までをサポート。多くのコネクションを駆使しながら、商品の認知向上と取引先の拡大を支えました。また、サポートは入居企業だけにとどまりません。十分な研究費を得られない研究者に対しては、マッチング先の企業を紹介するだけでなく、各種の産学連携展示会などを通じた営業も共同で実施しています。そのような積み重ねにより、大学発ベンチャー設立につなげたこともありました。

「私自身も研究者と研究プロジェクトのマネジメントを両方経験しているからわかるのですが、頭を費やす『考える時間』というのは、どうしても削ることができません。だからこそ、新規事業や研究に携わる方たちには、本来の使命であることにぜひとも頭を使ってほしい。それ以外のことは、できる限り私たちがお手伝いしたいと思っています」

 

マッチングを乗り越えれば、可能性は無限大

最新の設備が整い、ビジネスのための強力なサポートも受けられる。新規事業開発に理想的な環境ですが、入居には条件があります。それは、産業科学研究所教員とのマッチングの上、共同研究契約、もしくはその前段階の「お試し期間」である連携研究契約(上限3年)を結ぶということ。

「一般的なインキュベーション施設と比べるとハードルは上がりますが、ぜひ気軽に問い合わせていただきたいと思っています。当研究所には情報・量子科学系、材料・ビーム化学系、生体・分子科学系、ナノテクノロジーの4つの領域で多くの専門家がいますし、私たちも全力でマッチングを支援します。また、残念ながらマッチングが叶わなかったとしても、別施設を含めた選択肢のご提案ができるように努めています。私たちへ相談をしていただことが、次のビジネス、新しい出会いのきっかけにつながれば、これほど嬉しいことはありません」

産業のための科学をテーマに、80年以上にわたって産学連携を進めてきた産業科学研究所。大学シーズを活用しながら新規事業開発に取り組みたい、そんなときにはぜひ相談してみるのがおすすめですよ!