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22年前、稲田は宝石鑑定士の資格を携えて商社に就職した。仕事の幅を広げたいという理由で宝石の仕入れの担当から営業販売にも関わった。ほどなくバブルがはじけた。会社が倒産した。


■市場の常識は世間の非常識
宝石はしょせん贅沢品。景気が悪くなれば売れなくなってしまう。今までやってきたことはなんだったのだろうか」。稲田は自分の仕事を振り返ると同時に、景況に大きく左右されるビジネスに対し、不信感を抱いていた。「いつの時代も必要とされるものを提供するビジネスに関わりたい」。稲田が心惹かれたのは食品、しかもどの時代も普遍的に消費されている野菜だった。稲田は京都中央卸売市場で青果を取り扱う卸売業者に就職した。稲田が驚いたのは野菜が売れるスピードの早さ。高額な宝石が営業のフロントアプローチから売買契約まで数ヶ月かかることもあることに対し、野菜は数時間、場合によっては数分で売れていった。決済も3日から20日という早さだった。需要と供給のバランスによって価格が形成される青果市場の合理性、そして確実に産地に利益が還元される決済システムは他の業界では見られない画期的なものだった。しかし、流通システムはどうか。すでに全国規模で展開するスーパーが小売りの主流であるにも関わらず、市場は産地から小売りまでが地域の縦のつながりのまま。例えば大根。豊作だった東京では安い値段がついてもなお余っているのに、不作だった京都では高い値段でも飛ぶように売れているという矛盾が常に生じていた。欲しい商品が集まらない。手元にある商品は売りにくい。集荷力と販売力に関しては、競争原理の元で工夫が重ねられている他業界から大きく後れを取っていた。市場の常識は世間の非常識だった。


■独立、そしてアウトサイダーの苦悩
「市場の流通機能は今の市場規模と合わない」。稲田は新たなビジネスモデルのアウトラインを描きつつあった。野菜が余っている市場から不足している市場へ転売するというものだった。卸売業者で過ごした10年間で積んだ経験を武器に、5年前、稲田は独立を決意。日本初の卸売市場であり、全国有数の規模を誇る京都中央卸売市場の近くにあるKRPに事務所を構えた。市場の中や隣接した環境に身を置かなかったことには、市場の古い慣習に対する少しの反逆精神と、異業種の良いところを吸収したいという目論見があった。株式会社トレードの歴史が始まった。しかし、古い商慣習を維持し続けてきた市場では、想像以上に新しいものに対する拒絶反応が強かった。「今まで数十年にわたる取引先との付き合いをないがしろにしてポッと出の会社と契約するわけにはいかない」。稲田は今までの市場の商慣習を破壊するアウトサイダーとして扱われた。いくらトレードから仕入れる方が安くても、従来の仕入れ先から野菜を買う業者がほとんどだった。経験はあっても信用はゼロからのスタート。稲田はKRPのシステム開発業者に依頼し、スピーディで確実な決済システムを構築し、取引の安全性をアピールすることで、徐々に信頼関係を築いていった。

■物流システムの強化
従業員の数は次第に増え、職場はみるみる活気づいた。朝の8時から正午までは電話での商取引が行われ、その賑やかさは戦争さながらとなった。取り扱い品目は需要にブレがない根菜類を中心とした16品目に絞り、全国の市場から市場へ売買した。トレードの業績が上がるにしたがい、全国の卸売市場になくてはならない企業となった。次なる課題は物流システムの強化。稲田は物流部門の株式会社クルーズを設立し、京都に24時間365日稼働する冷蔵保管をかねた物流センターを置いた。仕入れた野菜の鮮度を落とさず保管し、そこから需要のある市場へ配送される。運送業者と倉庫を手配していた時と比較して、市場から市場に野菜が届けられる時間は一気に短縮され、安全性を付加した物流システムが確立されつつあった。しかし2年前の夏、日本を記録的な猛暑が襲った。全国の野菜の生産量が落ち、野菜不足に陥った。数少ない野菜もすぐに腐ってしまうため、倉庫に備蓄することも困難だった。異常気象などの天災…青果最大の敵が稲田の前に立ちはだかった。


■夢の「野菜工場」設立へ
「いくら生産者が努力しても天災によっていとも簡単に供給ダウンしてしまう野菜とはなんだろう?」。生産者の高齢化が問題となっている今、いずれ日本の野菜自給率が大幅低下することも予想される。食の安全性を考えれば、輸入に依存することに対しても不安がぬぐえない。「安全な野菜を安定して生産できる野菜工場をつくるしかない」。稲田は野菜工場の開発を目指すプロジェクトを立ち上げた。工学と農学それぞれのプロフェッショナルの協力を仰ぎ、屋内の安定した環境で野菜を生育させる設備について研究した。野菜の生育を最大限に伸ばす環境をつくれば、通常の土耕栽培では3毛作が限度の作物も、なんと24毛作まで可能になることがわかった。また、雑菌が多い土耕栽培では困難な無農薬栽培も、水耕栽培による野菜工場なら無理なく導入でき安全性も保障される。味は養液のphバランスや蛍光灯の光の強さでコントロールができることもわかった。研究の結果を受けて、今年1月5日、株式会社スプレッドを設立。生産部門を立ち上げることになった。3,000平方メートルの敷地で6種の野菜を生産する植物工場は、年内に完成できるメドが立った。ゆくゆくは全国に物流センターをつくり、そのネットワークを活用して、株式会社ディールで消費者に直接販売する計画もあり、個人宅に注文から24時間以内に配達するサービスを開始する予定だ。そこには高齢化で買い物が困難な世帯も気軽に野菜を買えるようにしたいという、稲田の願いが込められている。生産から流通、小売りまでを最短で結ぶ物流システム…稲田の挑戦はまもなくひとつの集大成の姿を見せる。



■Company Profile
■株式会社トレード
業種:野菜・果実の卸売業
代表者:代表取締役 稲田信二
電話:075-316-6022
FAX:075-316-6030
所在地:京都市下京区中堂寺粟田町93番地
京都リサーチパーク6号館 3F
ホームページ:http://www.tradecompany.co.jp
メールアドレス:general@tradecompany.co.jp
設立:2001年8月
従業員数:25名
研究内容:■生鮮食品流通事業のネットワーク構築
■全国卸売市場に対する青果販売





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京都リサーチパーク(株) 営業部 営業企画室
TEL:075-315-8342 Fax:075-322-5348
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