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大学を卒業後、田中が仲間とデザイン事務所を立ち上げたばかりの頃だった。1本の電話が事務所にかかってきた。


■舞い込んだ仕事
「京都にある東洋電具製作所(現ローム)という会社のプロモーションをやってもらえないか」。電話の主は、広告代理店の担当者。当時、東洋電具製作所は、電子部品業界の中で抵抗器メーカーとして頭角を現していた。学生仲間で立ち上げたベンチャー企業だ。若いスタッフが集まっているだけに勢いがあるものの、認知度や信頼性に乏しいことが悩み。何とか企業ブランドを作れないか、と広告代理店に相談したのだった。
田中は大学時代、関西を中心に各種のデザイン賞をものにした。大学卒業後、勤め人になるのではなく仲間とデザイン事務所を立ち上げたのも、デザイナーとして多少なりの自信があったからだった。そんな田中に白羽の矢が立った。
仕事の中身を詳しく聞く。すると、クライアントの東洋電具製作所のニーズは、「とにかく何でもやっていいから、お客さんの心をとらえるものにして欲しい」とのこと。一瞬、田中は戸惑う。一般的に企業の広告宣伝戦略といえば、その製品の性能や有用性をアピールするものだが、そうした要望がまったく出てこない。「面白い。思い切ったことをやれるチャンスだ」。田中は二つ返事で仕事を引き受けた。


■電子部品と音楽
事前にある調査が行われていた。東洋電具製作所と取り引きのある電機メーカーの技術者や担当者らへのアンケート調査だった。顧客だけでなく、電子技術関連の学会員や各メーカーの技術者をたどり、およそ5,000人の嗜好や関心事を探った。
すると、およそ8割の人がクラッシック音楽を趣味にしていることが分かった。調査対象のほとんどは技術者。みな、自ら目利きして音質の高いオーディオ機械を購入しているほか、中には自分で部品を作ってセットを組んでいる人もいる。LP版のレコードが普及し始めた時期。ところが、クラシック音楽の情報は専門誌しかない状況だ。「お客の心をつかむのに、クラシック音楽をテーマにしたメディアを作ろう」。企画が整った。
作ったのは「目で見る音楽史」と題したダイレクトメール。西洋音楽を、中世音楽、バロック音楽、クラシック、ロマン派、モダンの5つに分け、写真をふんだんに盛り込んだグラフィック重視の解説書だ。東洋電具製作所の名前は一切なく、同社が出していた製品ブランド「R.ohm(アールオーム)」がページの片隅にあるだけ。機能どころか製品そのものの宣伝を一切盛り込まなかった。
2ヶ月に1冊づつ、アンケート調査の対象になった技術者や顧客のもとへ冊子が送られる。当時としては相当変わっていて、斬新なものであった。そのため効果はすぐに表れた。ページの片隅に載せられた「R.ohm」の商標は一気にその知名度を上げる。今で言うブランディングの成功である。各所からの引き合いもあり、販促につながる事例もあった。

■ニクソンショック
田中はこの仕事で、東洋電具製作所の首脳陣から信頼を得ることができた。以後、一切の宣伝広告などのデザインを田中が担当することになる。電子分野の技術者が読む専門誌への広告、製品取り扱い説明書のデザイン、第2弾の「目で見る音楽史」――。この間、東洋電具製作所は、抵抗器メーカーから集積回路(IC)メーカーへと変化していく。抵抗器がICに組み込まれ、抵抗器単体でのビジネスが成り立たなくなってしまうという見通しからだ。
「様々なタイプの広告をした。電子部品は外見が面白いわけではないので、クリエイティブな表現に苦労したが非常に自由にやらせてもらった」と振り返る。
60年代の終わり、田中は新聞の記事に目をとめた。アメリカでコーポレート・アイデンティティ(CI)が重視され始めているとの内容だ。「これは東洋電具のニーズにぴったりだ」。勉強を重ね、CIを導入しよういう提案書を1971年7月末に提出した。
ところが2週間ほど経ったとき、ニクソンショックが起こる。東洋電具製作所でも宣伝広告を打てるどころではない状況に。雑誌への広告など一切の仕事がストップした。「もうCIの仕事もないと思ってすぐに作った提案書を捨てちゃいました」(田中)。
その数年後――。東洋電具製作所の担当者から電話がかかってくる。「田中さん、憶えてまっか。あの企画やるかもしれません」。CIプロジェクトが復活した瞬間だった。


■慎重さとのバランス
抵抗器メーカーから先端技術の半導体メーカーへ――。会社のイメージを大きく変えるプロジェクトだ。商標から会社名まですべて変えなければならない。しかし、すべてを一度に変えてしまうとこれまでの会社の信用力などの蓄積をも否定することになりかねない。田中が考えたのは、2段階に渡ってCIを行う計画だった。
第1段階は1979年、製品ブランドの「R.ohm(アールオーム)」を変更することだった。「R.ohm(アールオーム)」のRはもともとResistorから、ohmは抵抗の単位から取っていた。新しい名前は「ROHM(ローム)」。国内外のデザイナーから寄せられたデザインから現在使われているロゴを採用。コーポレートカラーはブルーに決めた。さらに、新しい商標名を認知してもらうため三度、「目で見る音楽史」を発行する。アジアの音楽をテーマに、インド、ジャワ、バリ、ビルマ(現ミャンマー)を取り上げた。
2年後の81年、会社名を東洋電具製作所からロームへ変更。伝票やステーショナリー類、封筒なども「ROHM」のロゴを配したデザインにし、社員の意識と企業ブランドを高める戦略だ。製品の配送などに使っていたトラック、パッケージ類、そしてカタログなどすべてにデザインを施し、イメージを高めた。ロームは会社名を変更した2年後の83年、株式を上場した。市場最高の初値をつける。田中が関わった当初の売上は10億に満たない。それが現在は4,000億近くの売上を誇り、日経の企業ランキング1位の座を獲得する企業となった。
田中は「デザインとは経営資源の1つ。取り入れないより取り入れたほうがいい」と話す。「しかし、デザインというものは感覚の比重が大きいもの。つまり判断の基準が不確定なわけです。それを取り入れるには、思い切りのよさが必要。私としては、思い切りよく面白い仕事をしていきたい、と思っています」。(敬称略)



■Company Profile
■株式会社ガルデザインシステム
業種: デザイン
代表者: 田中 如水
電 話: 075-323-5200
FAX: 075-323-5201
所在地: 京都市下京区中堂寺粟田町93番地 京都リサーチパーク6号館2階
ホームページ: http://www.gullds.co.jp
メールアドレス: gullds@gullds.co.jp
設立: 1982年6月
従業員数: 13名
事業内容:  ■CI・VIシステムの計画、企画、制作
 ■商品企画とパッケージデザイン等
 ■販売促進企画制作等
 ■ポスター、カタログ、各種グラフィックマテリアルと印刷
 ■広告キャンペーンと広告原稿制作
 ■IR、広報活動等の企画計画
 ■PR誌、会社案内等のエディトリアル
 ■施設サインの計画、制作とその請負・モニュメントアートの企画、制作及びその請負
 ■環境デザイン、インテリア、エクステリアデザイン





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京都リサーチパーク(株) 営業部 営業企画室
TEL:075-315-8342 Fax:075-322-5348
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