2021/12/21(火)
「特許庁」に学ぶ!バイオベンチャー向け大企業との共同研究のポイント 終了
2021年11月30日(火)に『「特許庁」に学ぶ!バイオベンチャー向け大企業との共同研究のポイント』がオンラインで開催されました。今回は研究開発型バイオベンチャーが大企業とつきあう上で必要な知財戦略について、簡潔に学ぶことができるスタートアップ向けの知財戦略ポータルサイトを展開する特許庁ベンチャー支援班に加え、関西圏でも特にスタートアップの注力領域になっている「バイオ」の知財戦略について専門家・辻丸国際特許事務所の南野先生にご登壇いただくと共に、ご自身の経験に基づいたアドバイスを含め株式会社オリゴジェン城戸社長にお話しいただきました。本レポートでは、当日の様子の一部をご紹介させていただきます。
目次
・辻丸国際特許事務所 事業紹介「バイオベンチャー向け 共同研究における注意すべきポイント」
・株式会社オリゴジェン 事業紹介「新たな再生医療の実現へ ~新しいタイプの神経幹細胞 オリゴジーニー細胞~」
・トークセッション「共同研究をする上で、スタートアップと大企業がWinWinになるためには?」
・特許庁 スタートアップ支援施策紹介
オープニングアンケート:共同研究を行ったことはありますか?
ご参加者のうち約8割が、共同研究を行ったことがある・今後する可能性がある、とのことでした。南野氏からは、「バイオベンチャーは比較的事業化するまでに大企業や事業会社さんとコラボレーションして製品を作るということが多い傾向があるため、こういった数値になったのかと思います」とのコメントをいただきました。
辻丸国際特許事務所 事業紹介「バイオベンチャー向け 共同研究における注意すべきポイント」
辻丸国際特許事務所の南野氏からは、バイオベンチャーが共同研究において注意すべきポイントに関して、⑴自社の秘密情報の取り扱い⑵共同研究成果は誰のもの⑶契約終了後の共同研究成果の利用に関して、と主に3つの論点をお話いただきました。
南野氏:共同研究において自社の秘密情報開示にあたり、相手方企業との間で秘密保持契約を結んだとしても、自社コア技術のエッセンス部分は開示してはいけないというのが原則論です。ベンチャー企業側は、自社のコア技術と関連する秘密情報を精査し、第三者が使ってもいい情報、使わせない情報とを仕分けして、開示する秘密情報を決定する必要があります。
ベンチャー企業が自社単独で技術開発から製品の上市までこぎつけるのは人・もの・金の観点から現実難しく、企業との共同研究・開発等による協業は成長段階で生じる可能性が高いです。共同研究を行う中で、困っていることや判断がつかないことがあれば、早めに専門家へ相談いただければと思います。
株式会社オリゴジェン 事業紹介「新たな再生医療の実現へ ~新しいタイプの神経幹細胞 オリゴジーニー細胞~」
株式会社オリゴジェンの城戸氏からは、事業のご紹介と今後の展望についてお話いただきました。
城戸氏:株式会社オリゴジェンのミッションは、幹細胞の技術を用いて治療法のない神経疾患の患者に新しい治療法を提供すること、そして患者の QOL の改善・家族の負担の軽減・社会的にも非常に問題となっている医療費負担の問題解決です。
単独で開発に成功した新しいタイプのヒト神経幹細胞、オリゴジーニー細胞は、高い分化効率、高い増殖能力を持つにも関わらずがん細胞にならず安全であることなど、再生医療製品としては非常に使いやすい細胞です。現在はPelizaeus-Merzbacher病に対する臨床治験の準備を進めており、そのために必要な資金調達を行おうとしています。
トークセッション「共同研究をする上で、スタートアップと大企業がWinWinになるためには?」
イベント後半ではトークセッションとして、ご登壇のみなさまのご経験談と共に、共同研究を行う上で注意するポイントやスタートアップと企業がWinWinになるポイント等、詳しくお話をお伺いしました。
辻丸国際特許事務所 弁理士 南野 研人 氏(中央)、株式会社オリゴジェン 代表取締役 城戸 常雄 氏(右)
Q:共同研究において、スタートアップと大企業がWinWinになるためのポイントについてお伺い出来ますでしょうか。
南野氏:大学発ベンチャーの場合、企業を立ち上げるために重要な特許を出すケースが非常に多いです。包括的に自分の事業を保護することも大事なポイントではありますが、第三者が自社の技術を安易に使用できないようにする戦略を描くことも重要なポイントとなります。
城戸氏:大企業が相手だとしても、対等だと思って交渉することが大事なポイントの一つとなります。ベンチャー企業は下請けではありませんので、自分たちは確固たる技術を持ち、対等の交渉相手だと自信をもって対応することが必要です。
また、どうしてもまだ、「ベンチャーの技術を奪おう」と思っている会社も少なからず世の中には存在するため、誰と共同研究を行うか、手を組む相手を慎重に選択する必要があります。お互いの強みをそれぞれ持ち寄ってwin-win になるような相手を探すのが重要だと思っています。
そして、南野さんもおっしゃっておられましたが、契約締結時に、どこまで情報公開を行うかを含めきちんと管理をしていかないと、NDAがあったとしても知財を守れるとは限りません。万が一を想定しながら動くことが大事だと思います。
特許庁 スタートアップ支援施策紹介
当日は特許庁 今井さまから、スタートアップ向けの支援施策に関してもご紹介いただきました。
今井氏:スタートアップ向け支援施策として、知財アクセラレーションプログラムIPASというものをご用意しています。IPASは、スタートアップ企業に対し、知財専門家とビジネス専門家で構成される知財メンタリングチームを派遣し、知財戦略の構築を支援するプログラムです。メンタリングチームが、5か月間程度のメンタリングでビジネスの側面からビジネスモデルのブラッシュアップや診断等を行い、さらにそれに連動した知財戦略の構築支援を行います。
また、IP BASE というポータルサイトもご用意しています。そもそも知財とは何かといった基礎的なところに不安があるスタートアップの方に、まず見ていただきたいサイト、知財専門家とつながるサイト、というコンセプトで運用をしております。IP BASEは基本的にスタートアップに対して基礎情報等をお届けするものですが、同時にお金の出し手であるベンチャーキャピタルの皆様やその他の投資家皆様向けにも知財戦略構築の重要性について啓蒙しています。
向かって右より、辻丸国際特許事務所 弁理士 南野 研人氏、株式会社オリゴジェン 代表取締役 城戸 常雄氏、特許庁総務部企画調査課 ベンチャー支援係長 今井 悠太氏、KRP新事業開発部 池田 瑠里子(司会)
最後に
今回は、多くの例をご提示いただきながら、想定外の出来事についても担保するという特許の難しい側面と、だからこそ必要な専門家の知識という勉強になるお話が満載でした。
KRPでは、今後も定期的にライフサイエンス・ウェルネス系の企業・スタートアップやアカデミアの研究者を対象に、研究環境やアクセラレーションプログラムなどの情報を発信するセミナーを開催していく予定です。次回もお楽しみに。
<今回ご登壇いただいた「辻丸国際特許事務所」のご紹介>
会社名:辻丸国際特許事務所
最近の技術革新の流れはより一層早まり、人工知能(AI)等のコンピュータサイエンス、データサイエンス、医療等のヘルスケア、ライフサイエンス、カーボンニュートラル等のエネルギー革命等、様々な分野で研究開発が加速しており、研究開発の成果である知的財産権の重要性は益々高まっています。
知的財産権戦略がビジネス戦略の成否のカギとなり、ひいては国家戦略にまで影響を及ぼしているといっても過言ではありません。
当所は、専門性が高く、かつ、経験と実績のあるスタッフにより、様々な分野の最先端の研究開発に対応し、かつ、各企業・大学等の各アカデミアに応じた知的財産権戦略を提案・構築して行きます。
WEBページ: http://tsujimaru-pat.jp/
<今回ご登壇いただいた「株式会社オリゴジェン」のご紹介>
会社名:株式会社オリゴジェン
株式会社オリゴジェンは、幹細胞技術を用いた医薬品開発を専門とするバイオベンチャーです。
治療法のない疾患で苦しんでいる数多くの人達がおられます。このような疾患に対して、幹細胞技術を用いて新しい治療法を開発し、少しでも多くの方々が苦しまずに生活できることを目指します。
WEBページ:https://www.oligogen.jp/index.html
<知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」>
「知財って重要そうだけど、まず何をすればいいか分からない」
「誰に相談すれば良いのか分からない」
特許庁は、そんなスタートアップの声に応えるべく、"スタートアップがまず見るサイト"、"知財専門家とつながるサイト"として、知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」を開設しました。
スタートアップ関係者(スタートアップやベンチャーキャピタル、アクセラレーターなど)と、知財専門家(弁理士や弁護士など)の双方が参加するスタートアップ知財コミュニティの「基地」となることを目指して、運営しております。
WEBページ:https://ipbase.go.jp/about/
過去の関連セミナーレポートのご案内
KRPでは、定期的にライフサイエンス・ウェルネス系の企業・スタートアップやアカデミアの研究者を対象に、研究環境やアクセラレーションプログラムなどの情報を発信するセミナーを開催しています。
・2021年10月27日開催 ラボの安全管理のスペシャリストに聞くコロナ禍でもう一度見直す実験研究における安全管理
・2021年9月29日開催 健都イノベーションパーク進出企業によるトークセッション「みんなで考えてみよう!健都に出来る最新施設の楽しみ方」
・2021年8月31日開催 『京都大学と考えるスタートアップが成長するラボ』トークセッション
・2021年7月29日開催 『食とバイオのオープンイノベーション拠点大解剖』トークセッション
・2021年7月14日開催 『コロナテック最前線~研究者とスタートアップの緊急対談~』
・2021年6月23日開催 『「Beyond Next Ventures」と考えるバイオベンチャーのアクセラプログラム活用法』トークセッション
・2021年6月10日開催 『シェアリングエコノミーと実験機器の新しい流れ』トークセッション
・2021年5月13日開催 『研究者集団「リバネス」と考える新しいラボの在り方』セミナー
イベントレポート等はこちら⇒https://www.krp.co.jp/labplus/events/