起業・成長サポート

第19回宇治市産業振興センター・宇治ベンチャー育成工場経営セミナーレポート

 

『閉塞感を打破するためのM&A活用術』

上記のタイトルで弁護士法人飛翔法律事務所 弁護士 五島 洋氏に講演を開催して頂いた。同事務所では、今年も既に決済まで終えたものだけで6件を手掛けており非常に経験値が高い事務所と言えるだろう。その先生が語るだけに経験に基づいたリアルなお話であった。今回の講演のポイントとそれを聞いた所見を以下のようにまとめてみた。

『M&Aのメリット』とは・・・

買い手のメリット

�時間を買う
�異業種進出リスクを緩和する
�シナジー効果、スケールメリット拡大

売り手のメリット

�ノンコア部門を資金化してコア部門に集中する
�後継者不足の際に外部承継させる
�株式公開に代わり創業者利潤を実現させるここ最近の傾向

ここ最近の傾向としては、後継者難によるM&Aや創業者のキャピタルゲイン実現のためのM&Aが増えてきているという。また、再生型のM&Aも依然として多いのだそうだ。

 

『M&Aを成功させるコツ』

セミナーでは、買い手、売り手それぞれの9つのフェーズごとに分けて重要な点をご説明頂いた。その中でM&Aを成功させるコツと思われる部分をピックアップしてみた。

最初に相談するのは、アドバイザーや弁護士でなく顧問税理士、顧問コンサルタントなど自社の経営、財務について精通している専門家が望ましい

会社や事業を売却しようとした時、いきなりアドバイザーやM&A専門の弁護士に相談しようとする経営者がいるそうだ。五島氏によるとこれは避けた方が良いという。なぜなら、これらの専門家はM&Aが成立すればフィーが入る。すなわちM&Aをする方向に導きたがる傾向があると言う事だ。会社や事業を売却するのは、重大な経営判断になる。普段から財務や経営戦略について熟知している専門家に相談するというのは、当然と言えば当然と言えるであろう。また、買い手にとっても同様のことが言えるというのだ。これは、自社に買収可能な体制が整っているか?などについて精査する必要があるからだ。業績、財務に問題のない企業でも社内体制等の問題で買収に失敗した企業は多々あるという。

アドバイザー(仲介業者)を決めるコツ

アドバイザーは、大手専業や大手銀行系に情報量が多い。しかし、当然に得手、不得手の部分がある。医療系に特化したアドバイザーもあれば、ネット系に強いアドバイザーもいる。地方の信金などは地域に密着した情報を持っている。これらを精査するには、ロングリストという、いわゆる候補企業リストを提出させて、その件数や内容を吟味したうえで決めるのがポイントだというのだ。売却の場合、買い手企業が、『なんでも買うと言っている企業でないか?』『本当に買収できる資金力があるのか?』つまり実現性の高い買い手が挙がっているかを精査するというのだ。買収の場合は、売却理由や足元の業績などについて掌握できているかなどもポイントとなる。情報提供を受けるだけで無駄なコストを払わないためには、弁護士など専門家の紹介を活用するのも一つの有効な方法だそうだ。

実務は手慣れた専門家に任せる

会計デューデリや法務デューデリには、専門性が伴う。このため、いくら顧問に弁護士や会計士がいてもM&Aの経験が乏しい場合には任せない方がよいと言うのだ。表面化していない会計上や労務面でのリスクをどのように開示するかは、M&Aの経験が乏しい専門家では対処が難しいという。買い手の場合もポケットという開示情報にはないメリットをどれだけ探し出せるかなどは経験がものを言うというのだ。M&Aの価格などに大きな影響を与える可能性があるとともに、そもそも成立の可否にも関わってくるところであり留意すべき点であると思った。

事業承継でM&Aを活用する場合の留意点

後継者難によりM&Aを行うケースも増えてきている。このようにM&Aで事業承継を行う場合は、以下のような点に留意すべきだという。

�連帯保証契約の早期の解除
�社長貸付金の回収
�株式譲渡対価による事実上の退職金
�役員退職慰労金と�は組み合わせ

上記は、M&Aの契約締結、支払いと同時に契約の締結や振込などの手続きを完了すべきである。M&A完了後に社長の連帯保証が解除されないなどの事象が起こると解決に時間が掛かる。また、退職金を株価に反映させるのか?それとも、退職慰労金として受け取るのか?この部分は双方の税務面でのメリット、デメリットがあり売却に際しては早めに解決しておくべき問題なのだという。社員の持っている技術や生産設備が生み出すキャッシュフローを考える、どうしても後継者がいない場合も、廃業よりもM&Aによる承継を考えた方がメリットは大きくなるであろう。従来M&Aが持っていた、身売りや乗っ取りのイメージは変わってきており、中小企業の競争力強化や事業承継の問題を考えると今後益々、M&Aを検討する機会が増えてくると予想される。そういった時に最低限知っておくべき知識として大変参考になるセミナーであった。

 

■講師

弁護士法人飛翔法律事務所代表  五島 洋 氏

■日時

2012年11月13日(火)
セミナー  14:00~15:30
経営相談会 15:30~
(経営相談は宇治市内企業のみとさせていただきます。)

■会場:宇治市産業振興センター 1階 多目的ホール
(宇治市大久保町西ノ端1番地25 )

■定員:30名

■費用:無料

■主催:宇治市、京都リサーチパーク�