「いくら生産者が努力しても天災によっていとも簡単に供給ダウンしてしまう野菜とはなんだろう?」。生産者の高齢化が問題となっている今、いずれ日本の野菜自給率が大幅低下することも予想される。食の安全性を考えれば、輸入に依存することに対しても不安がぬぐえない。「安全な野菜を安定して生産できる野菜工場をつくるしかない」。稲田は野菜工場の開発を目指すプロジェクトを立ち上げた。工学と農学それぞれのプロフェッショナルの協力を仰ぎ、屋内の安定した環境で野菜を生育させる設備について研究した。野菜の生育を最大限に伸ばす環境をつくれば、通常の土耕栽培では3毛作が限度の作物も、なんと24毛作まで可能になることがわかった。また、雑菌が多い土耕栽培では困難な無農薬栽培も、水耕栽培による野菜工場なら無理なく導入でき安全性も保障される。味は養液のphバランスや蛍光灯の光の強さでコントロールができることもわかった。研究の結果を受けて、今年1月5日、株式会社スプレッドを設立。生産部門を立ち上げることになった。3,000平方メートルの敷地で6種の野菜を生産する植物工場は、年内に完成できるメドが立った。ゆくゆくは全国に物流センターをつくり、そのネットワークを活用して、株式会社ディールで消費者に直接販売する計画もあり、個人宅に注文から24時間以内に配達するサービスを開始する予定だ。そこには高齢化で買い物が困難な世帯も気軽に野菜を買えるようにしたいという、稲田の願いが込められている。生産から流通、小売りまでを最短で結ぶ物流システム…稲田の挑戦はまもなくひとつの集大成の姿を見せる。
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