当時、緒方は大学院博士課程を修了し、大学で助手を務めていた。専門とする画像工学のビジョン技術を普段の生活に実用化することを模索していた一方で、大学内のサーバを管理運用する業務を通じて、コンピュータネットワーク技術にも精通するようになっていた。大学の通信インフラは整備が進み、広帯域通信網が敷かれ、すでにインターネットを利用した日々の業務は当たり前であった。この環境が一般家庭に浸透する日も間近に迫っている感覚を持っていた。
そんなおり、インターネット上の情報で目に飛び込んできたのが「SOBAプロジェクト」のサイト。同サイトはその時点で京都大学を中心とする研究グループとオムロンの研究グループからなる産学体制の研究開発プロジェクトであった。SOBA(ソーバ)とは、Session Oriented Broadband Applicationsの略。コンピュータネットワーク上でさまざまな情報を共有する空間を創り出す方式を特徴的に有する、P2P方式を応用したネットワーク・アプリケーションの総称である。SOBAプロジェクトでは、発足当初からブロードバンド環境が一般家庭にまで普及した姿を見据えて、ブロードバンド環境を有効に活用することができる次世代のソフトウェア基盤技術を早期に確立することを目指した活動が開始され、同時に開発成果を活かした事業化も視野に入れて、研究員や技術者の募集も行われていたのであった。
ビジュアル技術とネットワーク技術に関心を持っていた緒方には、SOBAプロジェクトのコンセプトが魅力的だった。「未だ技術が確立されてない領域で新たな道を切り開きたい」。2002年3月、緒方はSOBAプロジェクトに加わった。 |
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