それは3年前のこと。もともと大学の研究室仲間だったゴビの島田幸廣社長と立命館大学の島川博光教授が、久々にお酒を酌み交わしていた時に、ある話題になりました。「マンションのエレベーターって、呼び出しをしなくても自動的に待っててくれたらいいのになあ」。自分が外出することをマンションが感知し、エレベーターホールに着いた頃にはエレベーターがちゃんと待ってくれている…そんなサポートシステムがあれば確かに快適な生活が実現しそうです。すでにアメリカではカメラやセンサーを使ってこういった生活支援を行う「スマートスペース」の研究が進んでいて、日本でも積極的に研究が行われていますが、カメラでモニタリングしてサービスで行うことは、「見られている」という心理的負担が大きく、家の中をセンサーだらけにするのはコスト面で問題があります。そこで考え出されたのが、電子タグを身の周りに貼り巡らし、読み取り機を備えたポケットアシスタントを携帯して人間側で感知するという逆の方法でした。「電子タグは小さくて薄いもので充分。コストも1枚あたり30円から5円ぐらいになります。ニーズが高まれば1枚1円以下にきっと下がるはず。それなら空間により多くのタグを埋め込み、人間の細かい動きまでモニタリングできますから」と、島川教授。
このプロジェクトは「Tagged World Project」と命名され、KRPに入居するゴビとオクトパスがシステムの設計・開発やサービスの提案を、立命館大学が実証実験を、学習機能の開発はASTEMと立命館大学が共同で実施。内田洋行は家具や部屋に電子タグを埋め込んだ製品の開発に取り組んでいます。
研究の現場を訪問すると、立命館大学びわこ・くさつキャンパスの実験室に電子タグをいたる所に貼り付けた空間「Tagged World」をつくり、さまざまな実験が行われています。目指すのはパソコンやインターネットなどのIT技術がなくても受けられるサービス。ポケットアシスタントを身に付けた人の行動を日々学習してパターンを見つけ出し、その先の行動を推測して先行的にサービスを提供します。 具体的には電子タグを取り付けた靴に触れるとポケットアシスタントはその人が外出すると推測。常に外出時に持ち歩く車のキーを忘れていることや、窓の閉め忘れを音声で指摘します。あるいはオンラインの天気予報を受けて、傘を持って外出するよう促したりすることも充分可能です。想定している活用方法の第一は独居老人の生活支援。さらには防犯や防災、医療現場での応用も視野に入れています。
今のところ、課題は機器の小型化。「今は小型の読み取り機とPDAを使って開発にあたっていますが、ゆくゆくは指輪やブレスレットなどアクセサリタイプの読み取り機と携帯電話を使えるようにしたいですね」と島田社長。読み取り機や情報端末を持ち歩く煩わしさが軽減されれば、このプロジェクトは実用化に向けて大きく前進するでしょう。「Tagged World」がマンションやオフィス、ホテル、福祉施設、病院、店舗などに広く装備されるようになる日は、そう遠くないかもしれません。
※「Tagged World」の詳細については、
taggedworld.jp でご覧いただけます。
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