Healthcare Venture Conference KYOTO

Healthcare Venture Conference KYOTOPre-Conference

京都発のヘルスケア分野のイノベーションエコシステム構築に向けて

ヘルスケア・ベンチャー・カンファレンス・京都(HVC KYOTO)は、ごく初期の技術インキュベーションに特化し、京都大学をはじめとした日本の研究機関における生命科学分野の革新的な発見を世界のヘルスケア課題解決に資する製品へと成長させるプラットフォームを提供していきます。その準備会(プレカンファレンス)が、2016 年8 月1 日(月)、京都リサーチパーク(KRP)で開催されました。製薬を始めとした民間企業、金融機関、大学研究者、行政等、140名が参加しました。主催者を代表して京都産学公連携機構の藤田一事務局長が「京都だけに閉じることなく国内外に産学公の連携を強め、京都から世界へ、新たなビジネスの創出をいっそう加速させていきたい」と挨拶し、幕を開けました。
以下の通り、海外の大学発ベンチャーの成功事例、京都のスタートアップベンチャーのビジネスプラン発表、そして、京都での産学公連携によるイノベーションエコシステム・ベンチャー創出についての議論がありました。

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2016.8.1MON 13:20-17:00 京都リサーチパーク4号館2F Room1

13:20 - 13:40

主催者挨拶

京都産学公連携機構 事務局長 藤田 一

京都大学における医学領域のイノベーションエコシステム構築への挑戦京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特定准教授 小栁 智義氏

最初に登壇したのは、京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構の小栁智義特定准教授。まず、京都でエコシステムを形成する重要性を説明し、「『京都』と言う言葉はビジネスにおいても世界で通用するインパクトを持っている。エコシステムでも『京都』の魅力をアドバンテージとして使うべき」と主張しました。
ヘルスケア製品の開発には多大な資金と長期間の期間を要します。また、大学の「研究成果」は学術的な新発見であり、それを使って企業が新製品を「開発」しようとしても荒削り過ぎて製品像が描けません。「このギャップをベンチャー業界では「魔の川」と呼びますが、スタートアップ企業や大学のプロジェクトにはこの魔の川を乗り越える知識もノウハウもありません。成功のためには安価で迅速に魔の川を乗り越えるソリューションが必要」だとして、今回のゲストでもあるLabCentral や、Johnson & Johnson Innovation が展開するJLABS のようなシステムの京都での構築を提案しました。
京都大学では2017 年半ばの完成を目指し、インキュベーションラボを備えた新棟を建設中であり、前出の魔の川を埋める場として活用します。「入居企業がHVC KYOTO を通じて世界のマーケットにアプローチし、より的確な支援と大きな投資を得て成長することを期待します。京都、関西、そして全国のスタートアップ企業がHVC KYOTOを世界への窓口として利用できるようになることを期待します」と締めくくりました。

京都大学における医学領域のイノベーションエコシステム構築への挑戦

小栁 智義 氏京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特定准教授より健康で豊かな社会の実現を目指し、大学発ベンチャー創出と、企業との大型連携に従事している。スタンフォード大学博士研究員時代にベンチャー起業を通じた研究成果の事業化に接し、バイオビジネスでのキャリアを選択。帰国後は創薬、再生医療ベンチャーでの事業開発、多国籍企業での営業/ マーケティング職を歴任。大阪大学大学院修了。

13:40 - 14:00

Startup presentation腰痛持ちのためのポケットセラピスト㈱バックテック 代表取締役 福谷 直人 氏

京都大学発ベンチャー、( 株) バックテック福谷直人氏のテーマは「腰痛」。世界中で10 人に8 人が生涯で一度は苦しみ、しかも、その85%が原因不明という、腰痛に対する新しい治療法の提案です。
再発・慢性化しやすい腰痛は、痛みが長く続くため、うつ状態になる人も多いといいます。そうした患者に対し、スカイプなどによる遠隔コンサルテーションで痛みを分類し、患者それぞれに適したサービスを提供するもの。「テクノロジーを用いることで、治療のガイドラインに基づいて適切な治療法を推薦できます。このシステムを成功させるには、チームワークが重要であり、当社のチーム内には、医師や理学療法士など医学の専門家だけではなくエンジニアやビジネスの専門家もいます。世界の人々を救うために、グローバルパートナーを求めています」と発表しました。

J&J INNOVATION のWu 氏からは「腰痛に悩む私も是非お世話になりたい。シーズ発掘の担当者もここに来ているので、のちほど詳しく話を聞かせてほしい」とユーモア交じりで激励の言葉が寄せられました。

腰痛持ちのためのポケットセラピスト

福谷 直人 氏㈱バックテック 代表取締役京都大学大学院医学研究科の博士後期課程在学中に、膝の痛みや腰の痛みに関する研究を実施。博士後期課程修了後、その研究シーズを元に創業。創業までは、様々なビジネスモデルコンテストに参加し、Japan Business Model Competition 最優秀賞を受賞。リーンスタートアップの手法に基づき、サービス開発中。

Startup presentation再生医療と予防医学のための「ありそうでなかった」製品の開発CORESCOPE㈱ 代表取締役社長 大久保 康 氏

続く、CORESCOPE( 株) の大久保康氏のプレゼンでは、自身の体験に裏付けられた、再生医療の研究者のためのユニークな製品が紹介されました。
「研究者がルーティーンの仕事にかける時間を削減できれば、その分、重要な仕事に時間を割けます。友人や家族と過ごす時間も作れて、結果として研究者のQOL(Quality of Life)も高まるでしょう」。そのために、作業効率を大きく向上させる、同時吸引式のアスピレーターや温風保温式の遠沈管スタンドなどを開発しました。「高価なマシンだけが唯一の解決策ではなく、シンプルなアイデアで効率化を図るところが当社の特徴」と強調しました。
「研究者のQOL を改善することで、疾患に対する研究結果をもっと良いカタチにできると考えています。研究者のためのユニークな製品を今後も創っていきたい」と述べました。
LabCentral のFruehauf 博士からは「ルーティーン削減で浮いた時間を更に研究に注ぎ込むのが研究者の哀しい性なので、QOL は永遠に改善しないと思う(笑)が、紹介された製品は、再生医療に限らず広く使えそうなので、グローバル市場に打って出ると良いのでは」との温かいコメントがありました。

再生医療と予防医学のための「ありそうでなかった」製品の開発

大久保 康 氏CORESCOPE ㈱ 代表取締役社長1998 年より医療関連機器メーカーにて電気・電子系エンジニアとして従事。2001 年より京都工芸繊維大学にてレーザー微細加工装置の開発に従事。2003 年より株式会社サンキにて機械・制御系エンジニアとして従事。2006 年より京都大学にて人工関節用材料の潤滑・摩擦特性に関する研究に従事、博士(工学)を取得。2012 年より株式会社サンキ代表取締役に就任。2015 年CORESCOPE 株式会社を設立、代表取締役に就任。

14:00 - 14:10

休憩(10分)

14:10 - 14:40

Johnson & Johnsonにおけるオープンイノベーション戦略J&J INNOVATION, Asia Pacific Innovation Center, 所長 Dong Wu氏

まず、上海から来日された、Johnson & Johnson(J&J) INNOVATION Asia Pacific Innovation Center のDong Wu所長が登壇し、講演されました。世界最大のヘルスケア企業であるJ&J では現在、70%の製品が世界シェア1 位か2 位を占め、25%の売上は過去5 年間に導入した製品によるものとなっています。「これを可能にしたのは、イノベーションを内部だけものとせず、オープンにしていくエコシステムが重要との考えによるものです。イノベーションには、社内外のリソースやアイデア、テクノロジーを新しい方向で組み合わせることのできる人材のネットワークとユニークなアプローチが必要」と説明されました。
「イノベーションセンターのミッションは、アーリーステージの研究者やスタートアップ企業にアプローチし、彼らに関与しながら投資して、ベンチャーとJ&J の双方共にリスク軽減すること」。つまり、J&J のインキュベーションモデルとは、起業したい人が会社を設立し、運営していくための橋渡しなのです。その一つにJLABS があります。これは、実験スペースとインフラといったハードを提供するだけでなく、経営・法務面などさまざまなサポートをしています。 また、「素晴らしい研究をどのように商業化していくかが、大学や研究機関にとっての課題になっています。そこで、我々のような民間企業が新しい価値をエコシステムにもたらすことが重要です」との認識を示しました。

Johnson & Johnsonにおけるオープンイノベーション戦略

Dong Wu 氏J&J INNOVATION, Asia Pacific Innovation Center, 所長前職は、Johnson & Johnson 消費者ビジネスのR&D 担当副社長。グローバルエンジニアリング部門と新興市場のR&D 部門を率いて、Johnson & Johnson のグローバル市場での製品探索を行ってきた。新興市場でのパーソナルケア商品を開発する新興市場R&D の部門長として2007 年にJohnson & Johnson 入社。以来、高付加価値製品の開発とイノベーション文化の定着に努めている。Johnson & Johnson 入社前はユニリーバで品質保証、製造及び研究開発分野で経験を積んできた。Dong 氏は、開発グループの長として上海のユニリーバ地域イノベーションセンターの立上げに携わった後、ユニリーバ最大の生産拠点である安徽省合肥工場の製造部長兼工場長に就任。ユニリーバでは中国、アメリカ、日本での勤務経験がある。復旦大学卒業(応用化学)、中欧国際ビジネススクールでMBA 取得。

14:40 - 15:10

LabCentralについてLabCentral 代表 Johannes Fruehauf 氏

続いて、米国Boston 発のバイオベンチャーを創る新しいビジネスモデル「LabCentral プログラム」について、代表のJohannes Fruehauf 博士から紹介がありました。「昨今は、ベンチャーキャピタルの投資額が減少、大手製薬も社内R&Dを縮小しています。一方で、大学を卒業したての若者にとって、起業家として研鑽を積んで自分の企業を立ち上げることがCool だというトレンドが起こっています」。また、クラウドコンピューティングの普及やコ・ワーキングモデルなどシェアリングエコノミーが広がり、起業しやすくなっていることもこの新しいモデル成功の背景にあります。 こうした流れをチャンスと捉えた、バイオラボのシステム。物理的なスペースのニーズをすべて満たした上で、インフラを整え、多岐にわたる許可申請などもすべてLabCentral がサポートし、さらに、サイエンスからビジネスを生み出すための各種研修も行っています。
「従来のモデルでは、起業するのに何百万ドルもの資金が必要で、準備に数か月かかった。しかし、LabCentral では、数日間で立ち上げられ、ラボのレンタル料さえ払えば研究開発に着手できる環境を提供しています」。また、LabCentral 入居に際しては、厳しい審査をしていて、申請される案件の20%しか通りません。80%は入居できないため、「LabCentral入居が選ばれし者の証しになるので、パートナー企業や投資家から"認められる" のです」。

LabCentralについて

Johannes Fruehauf 氏LabCentral 代表Johannes Fruehauf 氏は、LabCentral 経営の全責任を負う。内科医で、成功を収めたバイオテックの起業家でもある。LabCentral に先駆け、MIT とHarvard 大学に程近いKendall quare にスタートアップやヴァーチャルカンパニー用の研究施設Cambridge Biolabs を設立した。ViThera Pharmaceuticals および Deltix and Cequent Pharmaceuticals の共同設立者でもあり、数えきれないほどのライフサイエンス系の企業および非営利団体の役員や顧問をしている。ドイツのFrankfurt 大学医学部卒業、 Heidelberg 大学でPhD 取得。

LabCentral についてLabCentral は、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学のあるマサチューセッツ州ケンブリッジの中心部に位置する民間NPO 運営のバイオベンチャー育成拠点である。最大25 社が入居でき、初期のバイオベンチャーに必要不可欠な研究開発・オフィススペース、経営・技術サポートなどを提供している。様々なバイオ実験に利用可能な設備を共同利用できるオープンラボを中心に、専用スペースも完備しており、入居と同時に研究開発に専念できる環境が整っている。
http://labcentral.org/

15:10 - 15:40

SPARK──アカデミアにおけるトランスレーショナル・リサーチ10年の歩みスタンフォード大学 医学部 教授 Daria Mochly-Rosen 氏

3 例目は、米国西海岸からスタンフォード大学医学部Daria Mochly-Rosen 教授によるSPARK についての紹介です。 SPARK はMochly-Rosen 教授によって2007 年に設立された、スタンフォード大学医学部の産学連携プログラムです。創薬シーズを基礎研究から臨床試験まで推し進めていくトランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)をするため、必要な教育やベテランによるメンタリングを提供しています。事例を交えた10 年間のあゆみが説明されました。 世の中を変える技術はアカデミアの基礎研究から始まります。しかし、この段階では未だ製薬企業の投資を喚起できません。重要なのは「基礎研究の情報を製薬企業や投資家に伝えること、或いは、治験などを行うこと」です。つまり、「アイデアを商業化し患者のケアに結びつけること」です。それがSPARK の目的であり、産業界との橋渡しをして、大学での発見を治療に繋げ、社会に貢献することをミッションとしています。
SPARK におけるプロジェクト成功の基準は、「1.2 年以内に治験に到達する 2.プログラムが外部の企業にライセンスアウトされる 3.新しい企業を立ち上げるためのファンディングを得る」の3 点で、その成功確率は60% です。SPARKにエントリーされたプロジェクトを成功に導くために、専門家の紹介、専用の研究施設、資金提供などを実施しています。これまでに110 件のプロジェクトがエントリーし、うち73 件が完了しています。

SPARK──アカデミアにおけるトランスレーショナル・リサーチ10 年の歩み

Daria Mochly-Rosen 氏スタンフォード大学 医学部 教授Daria Mochly-Rosen 博士はスタンフォード大学のSPARK プログラムの創設者・代表として創薬における「探索研究」と「開発」の間にある、いわゆる「死の谷」を乗り越えようとするアカデミアの研究者、機関の支援を行っている。彼女はプロテインキナーゼC 研究の成果を循環器疾患治療薬の開発へとつなげるために、スタートアップ企業を設立した。しかしその際に大学を一旦離れなければならなかった経験から、大学の研究成果を「死の谷」を乗り越えて創薬探索・開発へと結びつけるサポートを行うSPARK プログラムを2006 年に設立した。サイエンスの新しい発見を製薬ビジネスへ繋げるという、大学が抱える課題に挑戦しているSPARK の活動モデルは、アメリカ国内外を問わず導入されつつあり、アカデミア発の創薬についての書籍にもなっている。Mochly-Rosen 博士はイスラエル出身であり、Chemical Immunology の分野で博士号を取得している。現在はスタンフォード大学Department of Chemical & Systems Biology の教授を務める。

SPARK についてSPARK は、創薬シーズを基礎研究から臨床試験まで推し進めていくトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を推進するために必要な教育やメンタリングを提供する米国スタンフォード大学の産学のパートナーシッププログラムである。産業的なスタンダードを用いてより低額にProof of Concept(POC:概念実証)を行うため、Daria Mochly-Rosen 教授により、2007 年に設立された。SPARK で医薬品・診断薬開発の専門家へのアクセスや専用の研究施設、そして研究開発を進めるための資金援助を提供している。これまでエントリーした110 プログラムのうち73 プログラムが完了しており、その59% が起業、ライセンスアウト、あるいは臨床試験へ進んでいる。
http://med.stanford.edu/sparkmed.html

15:40 - 16:00

休憩(10分)※コーヒーブレーク:Room2

16:00 - 17:00

パネルディスカッション~エコシステムの先駆者から京都への提言J&J INNOVATION, スタンフォード大学, LabCentral
モデレーター:在日米国商工会議所 特別顧問 岩村スティーブ氏

協賛各社およびKRP テナントによる併設展を実施した隣の会場でのコーヒーブレークの後、パネルディスカッション がありました。在日米国商工会議所 特別顧問の岩村スティーブ氏をモデレーターに、Dong Wu 氏、Johannes Fruehauf 博士、Daria Mochly-Rosen 教授がパネリストとして登壇しました。
「ヘルスケアにおける起業家として成功するためにどんな能力が必要か」との質問に対し、Mochly-Rosen 教授は 「第一に柔軟性と謙虚さが必要です。何を分かっていて何を分かっていないかが、分かっていること。そして、強い意志と熱意。我々が提供する環境で成功するためには、強く自分を信じて、世界に良い貢献をしたいと思ってほしい」との認識を示しました。Dong Wu 氏とJohannes Fruehauf 博士は、チームワークも重要と回答しました。
業界のアドバイザーと大学サイドのマッチングについては、原則、個人のマッチングはしないという認識で3 人が一致 しました。そして、「出くわす」ことで新たなアウトプットが生まれ重要な価値を共有できるので、「出くわす」機会をいかに提供するかが重要だと話がありました。また、長期的な関係を築いた結果生まれる信頼が、成功のカギにもなるとの意見もありました。エコシステムをつくるにあたって京都への提言として、Mochly-Rosen 教授からは「SPARK をすぐに、ここで、始めてください」。Johannes Fruehauf 博士は「長期的視点を持つこと。何をつくりたいかを考えて、しっかり決断すること。短期的に結果が出ないからとフラストレーションを抱えないことが大事」であり、そのうえで「積極的に多くの仲間を取り込んで、よりオープンな起業家精神を受け入れ、文化を変えていってほしい」と呼びかけました。Dong Wu 氏は「我々の戦略とフィットした人がいれば、協力していきたいと思う。日本のアーリーステージのイノベーションは我々のメカニズムと異なるが、ぜひ京都でも連携したいし、将来的に何かコラボレーションの可能性があれば、そのパートナーとして選ばれたい」と強調しました。

盛況のなか幕を下ろしたHVC KYOTO プリカンファレンス。ヘルスケア分野でのイノベーションエコシステムの創出が進むよう、来年以降、年1 回の定期開催を目指します。

パネルディスカッション~エコシステムの先駆者から京都への提言

パネルディスカッション~エコシステムの先駆者から京都への提言

パネルディスカッション~エコシステムの先駆者から京都への提言

17:00 - 17:30

名刺交換会

12:00 - 17:30

ポスターセッション 会場:Room2

ポスターセッション ポスターセッション

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下記のページよりお申込みいただけます。
http://www.krp.co.jp/hvckyoto/inquiry/

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